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 岩壁に穿たれた穴の大きさは、子供の腕が入るくらいのものだ。君がランタンをかざして
穴の中を照らしてみると、内壁が金属片を塗してあるかのように光を反射してキラキラと輝
いていた。見覚えがないかという疑問をルルにも投げかけてみたが、彼女は関心が無いか
知識の無いものに関しては全く意識すらしていないようなところがある。確かに君からして
みればルルは女性として扱わざるをえない存在ではあるが、あくまでも剣であって人間で
はない以上、貴金属に惹かれないというのも納得できる。とはいえ何か価値のある金属と
いう可能性はないだろうか。
 君はルルの無反応を受け取りつつ指で触れてみようとし、一瞬の後に慌てて手を引いた。
 煌めく反射光に紛れて現れたのは、2本のハサミと鋭い毒針を持ったサソリだった。赤く
透明感のある紅玉石のような甲殻によって、ただでさえ大型のサソリが巨大な装飾品のよ
うにも見える。この穴はまさにサソリが作った巣穴であり獲物を取るための罠。宝石の如き
煌めきに気をとられている一瞬の間があれば、このサソリは見事に獲物を仕留めることに
成功するだろう。
 サソリは両腕のハサミを振り上げ、毒針を逃れた君を激しく威嚇している。
 
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  ・ 無視して洞穴の奥へ進むなら(104へ
  ・ 水音のする方へ進むなら(17へ