レジンを流そう

written by t.akiba & studioKotatsugaHouse 2007.01.22
last update 2014.12.01


はじめに


蓬ガレージさんで詰め替えボトルにレジンを移し替える手法が公開されたのが2005年秋でした。
雑記帳January 19, 2007で再掲していただきましたが、当時その記事を大変参考にさせていただいたので、自分でも紹介しようと思い書いてみます。

あ、あと複製の一連の流れを以前トイズプレスの書籍mflogで書いたんですが、その文が現在トイズプレスのサイトで公開されていますので、一読願います。
あまり深く考えないで模型工作 第3回 ガレージキットの複製

注意


イベント前で切羽詰まってる人は確実に完成する方法を選択すべきです。やった事が無い方法をアテにするのは避けましょう。
レジンはシンナー臭を発します。換気には十分気を使いましょう。今回は窓をあけていますが、普段はエアブラシ塗装ブースの前でやっています。

準備するもの




準備


レジンは何かの衝撃やタイミングで飛び散る事があります。汚れてもいい服装やエプロン等をして下さい。布に染み込んだ場合、ぬぐっても染み込んだ部分が固く硬化する事があります。


レジンがこぼれてもいいように、はかりにラップを被せます。レジンが付着して硬化するとプラスチックから剥がれなくなります。写真のはかりは若干手遅れ気味です。
ラップではかり全体を巻くと測定誤差になりますので、上皿だけをラップで保護するようにします。指示部にレジンがかかる可能性はどうなんだ...と思った人はそこも保護して下さい。


ポリ容器。缶に入っているレジンをこの中に移し替えます。店頭に何色か色違いで販売されていると思いますので、A液B液で変えると良いと思います。
何故このポリ容器を使用するかというと、缶を扱うよりも醤油やソースの容器を扱う方が慣れているからです。醤油の扱いには一滴単位での微調整も楽に出来るでしょうから。
入れる量ですが、蓋をしておけば湿気が入らず2〜3日は通常どおり使えるはずですので、横着したい量を移し替えます。あまり多量に入れると重くて持ちにくいですが。
蓋をしておけば倒してもこぼれないという点も良いですね。


移し替えた状態。今回はあまり使いませんでした。
缶のふたを開ける時、締める時、注ぐ時、それぞれ液が飛び散る可能性があります。もちろん口に付いた液をティッシュ等で拭う時にも。飛び散った液をそのままにしておくとシンナー臭の原因になります。

レジンの日光による劣化を防ぐ為に、日の当たらない場所に保管して下さい。

テストショット



シリコンで複製をしようのページで作ったシリコン型を例として使います。なのでこのページでは型の作り方は詳しく書きません。離型剤も適当にスプレーでぶわっとかけます。離型剤をかける頻度やかけ方のコツ等も様々な説があるのでここでは書きません。何度かやりながらコツを掴んで下さい。個人的には2〜3回に一度程度、サッとです。
型に気泡の溜まりそうな箇所がある時はベビーパウダーをその箇所に筆等で付着させると表面張力が少なくなり気泡が溜まりにくくなるようです。


はかりに被せたラップの上にプラコップを置き、風袋引きボタン(TAREボタン)を押すと指示が0gになります。バッテリ機能の関係でプラコップを外して他の事をやっている最中にはかりの電源が切れる事がありますが、その時は別のカラのプラコップをはかりの上に置いて再び風袋引きして下さい。多少誤差が出ますが誤差範囲内です。


プラコップの中にB液を先に入れます。
B液を先に入れた方がカップ内部での未硬化が予防出来るそうです。また少量混合の場合はカップ内壁に未硬化分がへばりつく事で混合不足でレジンがマーブル状になるので、順番が重要になってくるそうです。

今回は余裕を見て合計15g程度にしたいので、はかりの指示を見ながら7〜8gになるように注ぎます。
合計で20g以上になる場合などはA液とB液の比が多少違っても問題はありませんが、合計5gだけ欲しいという場合にはシビアになってきます。0.1g単位で表示出来るはかりが欲しくなりますが、その5gだけの為に10g混ぜて5gを別のものに使うという手もあります。
実際に型に必要なレジンは何グラムなのかの量の求め方ですが、型の中に水を入れ満タンになったら水を紙コップに移し、レジンが水と大体同じ重さだと仮定してその水の重さを量るという手があります。個人的には適当に用意して多かったら少なく、少なかったら多く試しながら量を決めています。


プラコップにA液を混ぜ、目標量まで混ぜます。
レジンは熱で硬化が進みます。
冬場はA液B液を混ぜてから硬化が始まるまで時間的余裕がありますが、夏場でクーラーが無い場合や冬場で暖房を入れている場合や混ぜる量が多い場合は十数秒で硬化が始まりますので、その場合は別のプラコップにA液を入れ、その後に一気にB液のプラコップに注ぐ手があります。しかし部屋の室温を下げた方が楽です。
レジンはA液とB液を混ぜると発熱します。その自己発熱で更に硬化が早まります。合計40gを越えると混ぜている途中でかなり熱くなりプラコップが柔らかくなるのがわかると思います。やけどに注意して下さい。

混ぜる(QuickTimeムービー502KB)
気泡が混ざらないように混ぜます。
この混ぜ方はスプーン無しでインスタントコーヒーをいれるのページを参考に普段から練習して下さい。化学屋の人はフラスコの扱い等と同じ要領です。遠心力でプラコップ内のレジンをグルグル回します。往復運動だとレジンに空気が混じり泡立ってしまいますので、気泡を混ぜないように気をつけて下さい。
棒やヘラを使うとそれが汚れますし、付着したレジンが棒に付きだんだんと棒が太くなると思うので棒は使いません。それに棒でかき混ぜると気泡が混入しますし。


そのレジンを型に注いだ状態。内部の気泡を抜く為に、湯口を上に向けたままま床面に型をガンガン叩き付けてゆさぶって気泡を抜きます。二面型とかだと強く叩き付けると型の隙間からレジンが漏れますが。
入りきらなかった分があふれてますが今さら気にしない。失敗にしろ成功にしろ完全に硬化するまで触れません。
余ったレジンはプラコップの中に入れたままだとコップの形に固まりますので、万年皿あたりに注いで展示ベースでも作りましょう。または適当なシリコンにV時溝を掘ってレジンを流してレジン棒を作ったり。この余ったレジン処理用に片面のシリコン型でも作って何か模型を複製してもいいですが。

さて、ここで硬化後に型から外した状態を見せれれば良かったんですが、この湯口の形ではレジンが上手く入っていかず、入り口であふれる割に内部を満たさないという欠陥が出てきました。
本番を抜く前に、湯口やランナー、ゲートの手直しが必要になります。


湯口とランナーを新設し、以前のランナーにはテストショットで出たランナーの位置のレジンをはめています。これで次にレジンを型に注いだ時には古いランナーの方に行かなくなりますが、はめこんだレジンとシリコンの間に新たに注いだレジンが染み込み硬化し、だんだんレジンが太くなる事があります。そうなるとシリコンを合わせた場合に隙間が出来、バリの原因になります。上手い事やってください。
他に何度やっても気泡がたまる場所がある場合は空気の逃げ道を新設します。デザインナイフ等で鋭利な溝を作れば硬化後のゲート処理はさほど苦は無いと思います。

本番


テストショットでレジン量が多いと感じたならば今度は少なく、少なければ今度は多くします。

注型(QuickTimeムービー822KB)
シリコン型の湯口に注ぎます。映像では型を手で持って注いでますが、普段は置いて注いでます。
湯口が常にレジンで満たされているのに注目して下さい。一度ランナーの方までレジンが減ってしまうと湯口にレジンを注ぎ足した際に気泡も一緒にゲートを通ってパーツに行ってしまいます。


コップ型の場合、型からレジンが漏れると硬化後に紙コップの内側にレジンが張り付いて外せなくなる事があります。その時は紙コップ内部のロウが劣化したのだと思って紙コップをやぶいて型を取り出します。


型から外した状態。旧ランナーにはめたレジンと新たに注いだレジンが同化してます。そして旧ランナーにはめたレジンがシリコンに対して少し浮いていた為にシリコンの間に隙間が出来、バリが出来ています。通常コップ型ではバリはほとんど出来ません。
テストショットの混ぜるの映像のようにレジンを混ぜれば注型以前に由来する気泡はなくなりますので、硬化中に発生する気泡が無く型の出来が良ければ奇麗なパーツが抜けます。


コップ型でどうしてもレジンが漏れるのが嫌な場合はシリコン型の合わせ目にテープを貼ると漏れません。


完成〜。


余ったレジンが完全に固まって、皿を逆さにして床面に叩き付けて外した状態。


台の使用例。

カラーレジンについて



レジンに着色して色付きパーツを複製したい場合、粘度の低いA液に塗料を混ぜます。たいていA液は無色の事が多いので色を調節しやすいかと思います。
色の数だけポリ容器を用意して色をつけたA液を作り置きしておけば同じ色の製品を量産しやすいです。


Mr.カラーのレドームを混ぜた状態。Mr.カラー全てか非クリアカラーのみか判りませんが、レドームでは塗料が粒状になり、硬化中にレジン中に気泡が大量発生しました。


レドームが粒状になった状態。硬化後もレジン表面に色むらが見られます。
この後硬化したら湯口からレジンがビールの泡のごとく吹き出してきたので、レドームに含まれるラッカー分がレジンの硬化熱で気化したのだと考えられます。A液にレドームを混ぜたあとでしばらく置いておくと予防出来るようですが、そこまでは試してません。実際にどうなるのか写真を見せると判りやすいのですが、意外とグロ写真なので自粛します。

別の機会にタミヤエナメルのクリアイエローを使った時は気になる不具合はありませんでした。
他にはコピックの詰め替えインクを使用する方法等が知られています。

カラーレジン全般に言える事ですが、レジンの強度がもろくなり、折れやすくなります。

失敗事例


楽しい失敗事例のコーナーです。
と言っても上に失敗を含めていろいろ説明してきましたが。


使い終わった容器にそのままレジンを入れたままにしておくと写真のように固まります。この中にまたA液B液を入れて使用すると固形物がシリコン型中の細かい部分に詰まる可能性があるので、除去するか新しい容器を使用する事をお勧めします。安いものですし。

最高で合計50g以上混ぜた事がありますが、そこまでくると混ぜている途中で自己発熱温度が高くなりすぎてすぐに硬化が始まってしまいました。80g必要だった時には40gづつ2回にわけて注型しました。今考えるとコップ2つ用意して両手でやれば良かったかもと思いますが。

レジンを型に注いでから硬化終了までに、いくつかの理由により気泡が混入したり発泡する事があります。

おわりに


多くの方に支えられてワンフェスのディーラー参加までしてしまいましたが、興味があるがやり方がわからないという方の参考になれば嬉しい所です。

最後になりますが、蓬ガレージのKARAさんの記事がベースになっています。大変感謝しています。
余ったレジンでレジン棒を作るアイデアはヱビス堂の芸人さんに教えていただきました。
レジンの気泡に関するノウハウ等を卓球模型のyr?さんに教えていただきました。
ほかにも様々な方にノウハウを教えていただきました。
ありがとうございました。


おわり。




更新履歴:
2014.12.01 サーバURL変更によるリンク修正と、トイズプレスのサイトへのリンク追加。
2007.01.24 加筆。レジンがプラカップを侵す事、ベビーパウダーで表面張力を減らせる事、A液よりもB液を先に入れた方がいい事、気泡と発泡をわけて書く事、レジンは日光の当たらない場所に保管する事を追記。情報ありがとうございました。>私信を下さった方。
2007.01.23 加筆、順番入れ替え、等。
2007.01.22 公開