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「誰かいるのか?」
君が声をかけてみると、驚いたような反応があった。
「ファイロン、さん……?」
この声には聞き覚えがある。君に仕事の依頼をしたあの時の青年の声だった。
君はその声に応え、再び穴の奥に進んだ。そうして行き止まりの小さな空洞まで辿り
着いてみると、ランタンの明かりが照らし出した青年の姿は初めて会った時より薄汚れ
て、疲れ切っているように見えた。
君が無事再会できたことを喜び、水を分けてやりながら事情を訊くと、青年は改めて
アデルと名乗り、それから静かに話し始めた。(
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