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【 時間点+1 】
 注意深く階段の左右に迫る岩場に気を配りつつ階段を下っていくと、一際大きな潅木の
根元が二股に分かれた場所があり、その根がちょうどアーチを形作って岩の裂け目を覆
うようになっていた。
 身を屈めて太い根の間を潜っていくと、岩の裂け目はそのまましばらく伸び、やがて洞穴
の入り口らしき大きな穴のある場所で行き止まりになった。穴の中を窺うと同時に、これま
での旅というよりむしろ冒険の経験による習慣で、声には出さずルルに「どうだ?」とだけ
訊くと、即座に『生き物の気配がします。かなり奥の方に』と返ってきた。
 君は小さく頷くと、すっかり手に馴染んだルルのひんやりとした柄を握り、ランタンを前方
に構えつつ大穴の中へと足を踏み入れた。
 まさかこんなところでまた洞窟探検をする羽目になろうとは、と思いながら。(13へ