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 君は意を決して背に負ったルルの被いを解き、その精緻で優美な装飾を見せつけるが
如く腰溜めに構えた。その意識は全て船長の挙動を捉えるために集中させる。
「……どういうことだ?」
 船長の問いに君は無言で返した。もはや余計なことを話す必要などないほど君の意志
は固まっているし、海賊を討つのに理由など要らなかった。
「答えられぬというならばこの船の者ではないな。ならばお前が我らの邪魔をしていた男
ということか。何故わざわざ忍び込んだ?」
 君が娘を救いに来たという事実を告げると、船長は口の端を笑みで歪ませた。
「あの娘が海賊に囚われているのだと思ったか。ならばお前の行動は無駄に終わるかも
しれんな。なんといってもあれは人に忌み嫌われ続けた一族の娘。だが少なくともここに
いれば、素性など気にする者はいないのだからな」
 船長の言葉は真実味を帯びていたが、君自身が娘の口から事情を聞かない限り、まし
てや海賊の言い分を信用するわけにはいかない。君は返事を承知のうえで娘の解放を
船長に頼んだ。
「あの娘はこれから我らのために役立ってもらうつもりだ。例え金塊を積まれようと手放
すわけにはいかんな」
 つまりは力尽くで奪うしかないということだろう。だが船長の持つ武器だと思われる物が
いつの間にかピタリと君の額に向けられていて精神力を奪われていくのに加え、船長自
体も長く分厚い外套と革製らしい短衣を見に着けていることから、相応の防御力がある
に違いなく、外套に半分隠れてはいるが腰に佩いた長剣の柄も見えていた。その威圧感
だけでも遺跡で倒した2人の手慣れを上回っていることから、ルルに教えられるまでもな
くまともに立ち向かってはならない相手だと君は理解した。それでも戦うのならば一体どう
立ち向かうべきだろう。

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