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 君は遺跡で入手した不思議な三角板をテーブルの上に置いた。この三角板の力が発
動するのは、ある程度以上に傾斜した壁などに張られた場合に限られ、平らな場所に
置かれていればただの小さな板でしかない。
「それがなんだというのだ」
 胡散臭げな表情の船長を前に君は再び三角板を手に取り、今度は船長の目が届かぬ
テーブルの側面に貼り付けた。当然、三角形の頂点は上に向ける。それから君はしばら
く待てば面白いことが起こるとだけ告げた。それを聞いた船長はテーブル上の煙管に手
を伸ばし、豪奢な装飾の施された椅子に深々ともたれかかった。
『戦うことに決めたのですね』
 君の思考と瞬時の判断を邪魔せぬよう、しばらく沈黙していたルルが言った。
 肯定の意思を返しながら君はテーブルを挟んだ船長との間合いを計る。何度か試した
結果から考えれば、木製のテーブルなどあっという間に発火するはずだ。そして船長の
正面で起こるそれが目論見通りの効果を発揮するためには、少なくともテーブルの側面、
つまり初撃が届く位置に君が移動しておく必要がある。問題はそこまでの接近を容易に
許してはくれそうもないということだった。思案する時間もほとんどない。君は「面白いこと」
が起こる場所から離れると見せかけ、他にもまだ見せたい物があると言いながらテーブ
ルの側面へと移動した。船長の目はそれを追ったが、またすぐに正面の空間に戻された。
君は背負い袋を下ろすと手を突っ込み、何かを探すふりをしつつ炎が上がるのを待つ。
木の焦げる臭いよりも早く漂い出した嗅ぎ慣れない匂いは、木製の調度品に塗布された
艶出し剤のせいだろうか。
「なんだこの臭いは」
 鼻を鳴らしつつテーブルの反対側に注意を向けた船長を目にするや、君はルルの覆い
を解いて躍りかかった。
 「強運チェック」をおこなうこと。

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