555 切りかかる君の剣を避けるべく、船長はとっさに身を屈めた。だがそれでも避け切るこ とはできないはずの一撃だった。船長の座る椅子がここまで大きく華美な装飾を施され てさえいなければ。ルルの剣先は椅子の背もたれを大きく裂き、船長の頭部に食い込む 直前で勢いを失った。 「……馬鹿なやつめ。やはりお前が我らの邪魔をした男だな」 言い終わると同時に船長の腰で何かが火花を放ち、くぐもった破裂音と激しい衝撃とが 君の身体を震わせた。何があったかわからず君が下を向くと、胸の中心に焼け焦げた穴 が開き、そこから鮮血が滴り落ちていた。呆然とした様子の君が膝から崩れ落ちるのを満 足げに眺めた船長は、最後に耳元で囁いた。 「お前の剣は俺がもらってやる。ありがたく思えよ」 君は記憶を取り戻すこともなく、ここで波乱に満ちた旅を終えた。 【THE END】 |