545 「そう……やはりそうして生きていくしかないのかしら」 独り言のように言いながら、彼女は初めて君の目の前にまで歩いてくると、檻を囲む鉄 棒の間から君を見上げた。 君は一瞬ここが海賊船の最下層であることを忘れかけた。ロウソクの明かりに全身が 初めて照らされる位置に進み出たスヴァルニーダの髪は、汚れているのが嘘のように白 く輝いて白磁器の肌に絡み、ただでさえ際立つ紅い瞳と唇が印象的な容貌も相まって、 人の心とは無縁な冷たき女神との邂逅であるかのように錯覚させた。 しかしそんな君の意識を取り戻させたのは、人の娘であるスヴェルニーダの言葉だった。 「もしかしたら、もう一度旅を始めることが私の運命なのかもしれない。だから今はあなた とともに行きましょう」 檻から差し出された手を君は握った。 この出会いが吉となるか凶となるかは君にもまだわからない。だが今はひとまずこの稀 なる出会いの成功によって「強運」に2点を加えること。これは上限値を越えても構わない。 (509へ) |