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 用意しておいた品物を手に君がテーブルへと近付くのを船長は無言で見つめていたが、
思い出したように口を開いた。
「……そういえば、遺跡で我らの邪魔をしたという男はどうなったのだろうな。未だに倒し
たという報告はないが」
 唐突な問いに心臓を跳ね上げながらも、君は新たな報告はない風を装った。多少の動
揺はむしろ本当の部下が萎縮しているかのように映ることを祈りつつ。
「ならばせめてその男の目的はどうだ? お前が知らずとも推測を聞かせるがいい」
 判断に迷い、しばらく考えてから君はイスターヴェで雇った漁師達の護衛が遺跡に入り
込んだ海賊を目撃し、勇ましくも襲撃するつもりになっただけなのではないかと、事実とは
変わらないが安易に聞こえる返答をした。
「ふむ……なるほどな。俺はあの遺跡自体に何か目的があるのではないかと考えていた
が、案外真実はそんなところなのかもしれん」
 船長はそう呟くと豪奢な椅子を動かし、背後の壁にある飾り窓の方に顔を向けた。
「ところで、お前の持っているその得物はなんだ? この船での武装は決まっていたので
はないのか?」
 最も不安だったところをつかれた君は口篭もってしまう。そして同時に先手をとって攻撃
をしかけるべきではないかという考えが心にうかび、布で覆ったルルを握る手に力をこも
らせる。だがその時、船長が淡々とした口調で告げた。
「この船に侵入した者がいることはすでに聞いている。お前のことだな」
 君は船長が言い終えるより早くルルを抜き放とうとしたが、その前に船長の右手が消え、
激しい破裂音が君の鼓膜を打ち震わせるのと同時に、君の額には黒々とした穴が穿たれ
ていた。途切れることのなかった船の軋みと波の音が消え、感覚の全てが失われていくの
を知った君にはもはやルルの悲鳴すらも認識できなかった。(14へ