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【 時間点+1 】
  君はスヴァルニーダを連れ出すため、これまで誰にも明かしたことのなかったルルとの
関係を話すことに決めた。それは古代の寺院遺跡で記憶を失って目覚めるという尋常で
ない素性に関しても明かさなければならないということだ。しかし「呪術」の使い手であるこ
とを隠して生きる彼女の共感を得るためにはこれしかなかった。
 君はあえてその精緻な装飾を見せつけるようにゆっくりとルルを抜き、スヴァルニーダ
の気を引くことができたところで話し始めた。見知らぬ遺跡で目覚め、ルルを手に入れて
からイスターヴェにやって来るまでの旅の経緯を。
 意外にもスヴァルニーダは興味深げに話を聞いているようだった。君が話を終える前
にはもう君から数歩のところまでやってきて、少女のように好奇心をあらわにした表情で
ルルの柄と鞘に施された細工を見つめている。そして君が遺跡探索に挑んだところで語
り終えると、待ちきれなかったというような勢いで口を開いた。
「貴方はこの剣と話ができるというのね?それが本当なら、貴方を介して少し話をさせて
もらえないかしら?彼女にもそう伝えてもらっても?」
 ルルの反応を伺うと、この時代で目覚めて以来、間接的とはいえ君以外の人間との対
話は初めてなだけに「どうぞ」というだけの返答にも楽しんでいる雰囲気があった。君は
ルルの言葉をそのままスヴァルニーダに伝える。
「ありがとう。でも誤解しないでね。信じがたい内容ではあるけれど、決して彼の話を信じ
ていないわけではないの。アールイヴァリルさんに話を聞かせてほしいというのは昔のこ
と。伝説の昔、私達が受け継いだ力を持っていた人達がどういう生き方をしていたのか。
それを知りたいんです」
 ルルの返事は君の口から伝える。
「覚えている限りのことを話してあげたいけど、この場で話すには長すぎます」
 スヴァルニーダは一瞬呆然としたように見えたが、やがて微笑をうかべた。
「そう……そうでしょうね。時間は必要でしょうね」
 独り言のように言いながら、彼女は初めて君の目の前にまで歩いてくると、檻を囲む鉄
棒の間から君を見上げた。
 君は一瞬ここが海賊船の最下層であることを忘れかけた。ロウソクの明かりに全身が
初めて照らされる位置に進み出たスヴァルニーダの髪は、汚れているのが嘘のように白
く輝いて白磁器の肌に絡み、ただでさえ際立つ紅い瞳と唇が印象的な容貌も相まって、
人の心とは無縁な冷たき女神との契約であるかのように錯覚させた。しかしそんな君の
意識を取り戻させたのは、人の娘であるスヴェルニーダの言葉だった。
「貴方と貴方の剣を信じます。一緒にここから出て行きましょう。そして落ち着いたら、改
めて話を聞かせてください。私の先祖の人達の話を」
 この出会いが吉となるか凶となるかは君にもまだわからない。だが今はひとまずこの稀
なる出会いの成功によって「強運」に2点を加えること。これは上限値を越えても構わない。
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