527 

【 時間点+1 】
 檻の鍵は先ほど逃がした男が持っていたのかもしれない。君はどうにかして錠前を外
せないかと鍵穴を覗いたり針金を差し込んでみたりもしたが、盗賊としての技術が不足
していることを自覚しただけだった。こうなればもう剣の(というよりルルの)力を借りるし
かない。ただでさえ貴重な時間を無駄に費やすはめになってしまったことに内心舌打ち
をしながらも、気を取り直すと小さく詫びを言いながら抜いたルルを振りかぶった。
 戦いのために存在するということに誇りを持っているルルは、それ以外のことに用いら
れることを嫌う傾向がある。さすがに通常の剣など超越した武器であればこそ、鋼に叩
きつけたとしても刃こぼれひとつせず逆に切断すらことすら可能だったが、その能力と
はまた別の心理的あるいは感情的な問題から、アールイヴァリルという剣は自らの振る
われる時と場合を選んだ。
 ともあれ激しい金属音とともに古びた錠前は砕け、弾け飛んだ。君は檻の外に出たス
ヴァルニーダの手を取ると、失った時間を取り戻すように甲板へと急いだ。(501へ