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【 時間点+1 】
 スヴァルニーダと見つめ合った瞬間、その瞳がわずかに輝きを増したと感じたがそれは
気のせいだったのだろうか。かすかな違和感こそ残ってはいるものの、スヴァルニーダの
様子におかしいところはない。しばらくすると彼女は再び目を伏せ、長く息を吐いた。
『何か……されましたか?』
 ルルが訊いてきたが、君の身体にも何ら変調は見られなかった。それに魔法的な力の
影響を受けているのであれば、精神的な繋がりのあるルルに全く感じられないというとい
うことはまず考えられない。
 君の当惑するような表情を見てスヴァルニーダが言う。
「ごめんなさい。呪術に興味があるようだから、どんなものかわかってもらおうと……とに
かくあなたの言っていたことは嘘ではないようね」
 そう淡々と告げる娘から感情は読み取れないが、やはり君に対して術を用いたようだ。
結果的に君が本気であることを伝えられたようだが、それで彼女の気持ちを動かすことは
できたのかどうか。いずれにせよここに囚われたままにしておいて海賊達に利用させるわ
けにはいかないし、ここまできておいて見捨てていく事などできないとも思う。彼女がその
気になるのならば幾度術をかけられようと構わないと心を決めた君は、そのまま目を逸ら
さず目を合わせ続けた。そうしていると彼女は君の目の前まで歩き、檻を囲む鉄棒の間か
ら静かに右手を差し出した。
「わかりました。ここより私が平穏に暮らせる場所があるというのなら、あなたに着いていっ
ても構わない」 
 君は一瞬ここが海賊船の最下層であることを忘れかけた。ロウソクの明かりに全身が
初めて照らされる位置に進み出たスヴァルニーダの髪は、汚れているのが嘘のように白
く輝いて白磁器の肌に絡み、ただでさえ際立つ紅い瞳と唇が印象的な容貌も相まって、
人の心とは無縁な冷たき女神との契約であるかのように錯覚させた。
 しかしそんな君の意識を取り戻させたのは人間の娘であるスヴェルニーダの言葉だった。
「……でもまずはここから無事に連れ出してもらえますか?」
 この出会いが吉となるか凶となるかは君にもまだわからない。だが今はひとまずこの稀
なる出会いの成功によって「強運」に2点を加えること。これは上限値を越えても構わない。
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