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 明るいうちから海賊船へ侵入するなんてことはまず無理だ。そう考えた君は一度遺跡
に戻り、休息をしつつ陽が暮れるのを待つ事にした。仲間が戻らなければそれを捜しに
また海賊がやって来るかもしれないから眠ってしまうわけにはいかない。
 だが予想に反して何事もなく刻は過ぎていき、嫌な予感がして海に戻った君の視界に
海賊船は存在しなかった。
『すでにあなたには多くの仲間を倒されていますから、これ以上損害を増やすよりも撤退
を選んだのかもしれません。おそらくもうこのあたりには……』
 頭のどこかでは考えていたはずのことをルルが言葉にしてくれた。それは君の計画の
失敗をはっきりと告げるもので、奴隷にされていたかもしれない娘1人の運命を変えてや
れなかった事を意味していた。
『我が剣の主ファイロン。あなたは1つの失敗をしたかもしれませんが、本来の目的はす
でに果たしているのです。そちらの喜びを手にするために……帰りましょう、イスターヴェ
へ』
 半ば愕然としている主を想い、ルルが励ましてくれる。
 君はしばらく水平線のあたりを眺めていたが、頭を振るや櫂を握り、南に向かって船を
漕ぎ始めた。ここからならば再び遺跡を通って戻るより、海岸線沿いに南下した方が町
は近い。(335へ