40 【 時間点+2 】 青年のいた形跡を見つけることも無く海岸に着いてしまったが、月明かりに照らし出され た白い砂浜を見渡しても、変わったことは何一つあるようには思えなかった。もしや岩場で の見落としがあったのだろうか。 君は再び階段を上ることにした。今度は足元ばかりでなく岩場の方に注意しながら。する とその甲斐あって、階段の途中で一際大きな潅木の根元が二股に分かれ、ちょうどアーチ を形作るように岩の裂け目を覆っている場所を見つけた。 身を屈めて触手のような根の間を潜り抜けていくと、岩の裂け目はそのまましばらく伸び、 やがて洞穴の入り口と思われる場所で行き止まりになった。 穴の中を窺うと同時に、これまでの旅というよりむしろ冒険と言うべき経験による習慣で、 声には出さないままルルに意識を向けると、即座に『大型の生き物の気配がします』と返 事が返った。君は頷くと、すっかり手に馴染んだルルのひんやりとした柄を握り、ランタン を前方に構えつつ大穴の中へと入っていった。 この洞穴の中で戦いになった場合、明かりのある場所もしくは事前に準備を行う時間が 無い限り、もし盾を所持していても使えない。 それにしてもここまで来るのにだいぶ時間をかけてしまった。あの青年の真剣な顔を思い 出すと、何事もなく合流できることを願わずにはいられない。(13へ) |