306 君はこの状況を切り抜けるために魔法を使えないものかと考えていた。それを察したの かルルが声をかけてくる。 『これまでの経験でお分かりだと思いますが、このあたりは海が近く地下水が豊富だとい うだけでなく、この遺跡の影響も少なくないと思うのですが、意図せず魔法の効果が増す 可能性のある不安定なところです。予想外の負担をあなたが負う可能性もありますし、こ れ以上海に近づくのなら、制御の容易いものだけを使うようにしてください』 これから君が行おうとしているのは、海賊の撃退というよりむしろ人間の救出だ。少なく とも地上へと娘を1人連れ帰ることを考えると、ここであまり無茶はできない。 『念のため、あなたが使える魔法を確認しておきましょうか』 そう言ってルルは、君がこれまでに使用したものを含め、幾つかの魔法のイメージを伝 えた。「601」にある《魔法の書》を参照する事。そこにある「初級」と「初級上位」の水精 魔法が現時点での君にとってどうにか制御可能な魔法だ。 『初歩の魔法でも、今のあなたが気を抜けばすぐに意識を失いかねません。くれぐれも使 い所を誤らないように』 君はルルの忠告を心に留めながら海賊を追った。(331へ) |