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 約束どおり船尾甲板の荷物の影で老人は君を待っていてくれた。そして君とスヴァルニ
ーダの姿を目にすると「上手いこといったようじゃな」と笑みを見せながら手早く小船の
固定を解き、海に浮かべた。その間いつ海賊に発見されるのではないかと警戒し続けて
いたが、結局は海賊船を離れるまで目撃すらせずに済んだ。それは明らかに相当な人数
の海賊が君によって減らされたせいだろうし、あるいはこれ以上の消耗を避けるためにあ
えて見逃してくれた可能性もあるかもしれない。そんな事を考えていると、老人が櫂を差し
出しながら言った。
「申し訳ないがわしよりもあんたが漕いだ方が早い。それから向かうのは町の西にある海
岸じゃ。あんたはどっからやって来たのか知らんが、そこが一番近くで船を着けるのも楽
じゃろうからな」
 君は頷いて力強く船を漕ぎ出した。
『本当はもっと警戒すべきだと思いますが……』
 ルルにしてみれば、追っ手がかかるのを避けるために魔法を使っておくべきだと考えて
いるのだろう。だがスヴァルニーダはともかくこの老人が魔法に対してどう思っているのか
がわからなかった。時に拒否反応を示したり、魔法の使用者に憎しみを向けるような者も
いないとは限らないのがこの世界における魔法という力だ。
 君はこの船が無事に海岸へ辿り着けるよう祈りながら船を漕ぎ続けた。(395へ