２７　

【　時間点＋１　】
　そういえば青年の残した書き置きには階段の脇道に外れるようなことが書いてあった。
となれば、この階段の両側にある岩場のどこかに人が通れるような道か裂け目でもあるに
違いない。君は段差を踏み外さないよう足元ばかりを照らしていたランタンを階段の左右に
も向けつつ歩を進めていった。
　すると一際大きな潅木の根元が二股に分かれた場所があり、その根がちょうどアーチを
形作って岩の裂け目を覆うようになっていた。身を屈めて太い根の間を潜っていくと、岩の
裂け目はそのまましばらく伸び、やがて洞穴と見紛うような大きな穴のある場所で行き止
まりになった。
　穴の中を窺うと同時に、これまでの旅というよりむしろ冒険と言うべき経験による習慣で、
声には出さずルルに意識を向けると、即座に『大型の生き物の気配がします』と返ってきた。
　君は頷くと、すっかり手に馴染んだルルのひんやりとした柄を握り、ランタンを前方に構え
つつ大穴の中へと入っていった。
　まさかこんなところで洞窟探検をする事になろうとは思わなかったと呟きながら。（１３へ）