242 【 時間点+1 】 君は何かいい手はないものかとルルに訊いてみた。 『そうですね……場所はあまり良くありませんが、魔法を用いることさえできれば難しく はないと思うのですが』 魔法? それはこの世界に存在すると知ってはいても、君自身が用いるという意味で は無縁のものだと思っていた力であり技術だ。 『私は、主と認めた者が魔法を用いるための素地を整え、種を植えることができます。 けれどそれは主の意思がなければ発芽せず、眠ったままなのです』 ルルによるごく簡単な説明によれば、これまでにアールイヴァリルを手にして英雄とな った者達はほぼ全てが魔法を扱えるようになったのだという。ただしそれは本人が魔法 の力を望んだ場合に限られ、魔法を忌避していた者、魔法の存在を信じ切れなかった 者については例外となる。 これはつまり君がアールイヴァリルを手にする以前から魔法という存在を認識してい る、例えば魔術師になろうとしているような人間であったなら、剣を手にしたその場で直 ちに魔法が使えていたのかもしれないということだ。君が遺跡で眠りにつく以前がどうで あれ、その記憶は無く、自分に魔法が使えるなどという意識は全くなかった。その認識 が魔法の発現に至らなかった理由なのだろう。 『これまでのあなたは魔法を必要としていなかった。けれど今はそうではない。あなた が望むなら、すでに魔力の種子はあなたの中に芽吹いているはずです』 君は魔法の力を望むだろうか。あるいは魔法など使わずに危機を乗り越えられると信 じるか。 ルルは説明を続ける。 『魔法を扱えるようになるということは、別の世界の扉を開けるに等しいのです。決して ただの便利な力とだけは考えないようにしてください。魔法の力を担う者は同時にこの 世界全体に対する義務と責任を負い、時には自らの破滅をも招くことになるのですから』 普段よりも著しく真剣味を帯びたルルの言葉を心中で繰り返しながら、君は……。 ・ やはり魔法を望む(320へ) ・ あえて魔法は使わず海賊に挑む(293へ) ・ 今はこの先に進むのを諦めるなら(256へ) |