225 【 時間点+1 】 君は曲がり角の手前で壁際に身を屈め、ルルの柄に手を添えつつ次第に大きくなる話 し声に意識を集中させた。声から判断すれば歩いてくるのは男が3人。それもどうやらア デルが心配していた通り、海賊の手下らしい。 酒に酔って気が大きくなったのか、命じられている仕事を別の仲間に任せ一休みと称 して遺跡探索をしているつもりの2人と、渋々付き合いながらも仲間を仕事に戻そうと下 手な説得を続けるもう1人という組み合わせで間違いないだろう。 『海で戦った海賊ならば、きっとあなたの顔は覚えているでしょうね』 先日の生き残りであればルルの言うとおり忘れはしまい。例えあの場にはいなかったと しても、美しい剣、つまり彼らにとっての宝の話は伝わっていると思うべきだった。酔った 海賊程度ならば倒すことはそれほど難しくないが、他にどれだけの仲間が入り込んでいる のか。この場で切り伏せてしまっていいものかどうか君が躊躇っている間に、足音はすぐ そこまで近づいてきた。 いずれにしてもこれ以上の探索において海賊達の存在は邪魔にしかならない。彼らを 生かしておくかどうかはともかく、今は不意をついて黙らせておくのが得策だ。(196へ) |