215 【 時間点+3 】 先ほどまであの熊がいた厨房の奥、食料倉庫となっていたらしい場所に踏み込み、食 い散らかされた過去の食材の間を縫うように歩いていくと、壁の一角に床から天井まで 達する大きさの四角い穴が空いていた。それを塞いでいたはずの扉は中央が大きく凹み、 太く鋭い刃物による傷が幾つも刻まれて床に転がっている。 獣臭さ以外の、食材による臭気が思ったより遥かに薄いのは、そこにあった食材が君 の知らない特殊な加工を施されていたためだろうか。 『何か特別な研究でもしていたのでしょうか……魔術の類とは異なる保存方法のように 思えますね』 ルルにわからないのであれば君にわかるわけはない。 あるいはそれは、失われた君の記憶に含まれている知識なのかもしれなかったが、今 の状況ではこれ以上残骸を調べても意味のある物が見つかるとは思えない。 君は部屋を出て広間まで引き返すことにした。(180へ) |