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【 時間点+1 】
 アリアルテの話というのは、君が普通の人間が踏み込まない危険な場所に赴いた際に
持ち帰った希少材料(毒も含む)の鑑定及び買取りを優先的におこなわせてもらえないか
との相談だった。
 「ほんとは丸ごと譲って欲しいって言いたいとこなんだけど、物が物だけに相場なんてな
いほど値段が上がり切っちゃってる物もあってね。まぁそういう物はそもそも買える相手が
限られちゃうし……。だから私はウチ程度の店でも扱いやすいような物だけでいいわ。仮
に魔獣コカトリスの心臓なんかあってもこの町じゃ誰も買わないし、必要ないものね」
 コカトリスの心臓というのは、きわめて珍しいコカトリスという魔物の嘴に突かれることに
よって発症する、生命活動の一時停止状態を治療するために必要な材料だという。
 「その代わり、魚の撒き餌に混ぜて漁獲を増やす薬とか、耐水効果を付ける薬は日常
的によく売れるの。それでもやっぱり、時には珍しい毒や病気に罹った人が頼ってくると
思えば、全くなんの準備もしておかないわけにはいかないし。だからちょうどお客さんみた
いな人と契約を結んでおきたいと思ってたところなのよね」
 それが真っ当な薬師としての偽らざる気持ちだと納得はできるし、相談に応じることも簡
単だが、アデルからの依頼内容とかち合ってしまわないだろうか。
 返事を迷っているとルルが助言をしてくれた。
 『薬だけでなく、例えばあなたのまだ知らない魔術にあっても考えられないほど多くの素
材が使われます。古代遺跡で目的の種子だけが見つかるなどという事はありえないと思
いますが』
 よく考えれば、これは依頼というほどの事でもない。この町を拠点にしている限り、最も
近くの薬師はこの店になるのだから、薬剤に関する知識のない君が親しくなっておいても
損は無いはずだ。
 
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