150 君は朝露で輝く蜘蛛の巣を脳裏に思い描いた。それはイスターヴェに滞在するまでの 旅の間に幾度となく目にしてきた光景ではあったが、どうやら魔法の属精と関わりのない ものを強引に発現させるためには相応以上の力が必要らしかった。しかし今回に限って は余分過ぎる程の時間を費やしたうえで、導き手たるルルの干渉度を強めることによっ てどうにか発現域にまで達する魔力の集中が可能になった。 ルルの助言に導かれ、次第にイメージが広く深く明確になっていく。それが夢か現実か の境界で曖昧な感覚に至った時、ルルの囁く声が力を増した。 『さぁ目を開いて』 寝起きから目覚めたように君が目を開いた時、その視界には極限まで拡大された蜘 蛛の巣が映り、瞬きの間に遠ざかったかのような幻覚に君は足元をふらつかせた。 『見てください。これが今あなたの使った魔法の力です』 目がはっきりとしてくれば、そこには君を中心に張り巡らされた、細くともロープ以上の 強度を持つほど凄まじい速度で流れる水の網があった。その網が目に見える位置にい る海賊全ての身体に絡みついていた。 『幸いこの遺跡の地下には豊富な水脈があったようです。あとはあなた自身の素質の成 果かもしれません』 どことなくルルの言葉は満足そうに聞こえた。 君が使用した魔法は、本来ならば水精魔法に充分習熟した者が扱うべきものだ。だが 今回に関しては特例的な要素が重なったために使用が可能になったと言える。いずれ は苦もなく扱える時がくるのかもしれないが、今のところはまだ修得できる力ではない。 ともあれ、この魔法の使用によりサイコロ1個分のMPが消費される。その結果MPが 0になった場合、気絶した君は当然ながら海賊達に発見され、そのまま海に放り込まれ てしまう。そうなればルルも再び眠りにつき、力の一切を封じたまま海賊に所有されるこ とになるのかもしれない。 ・ 気絶してしまったら(14へ) ・ 気絶せずに済んだなら(274へ) |