123 【 時間点+1 】 君は室内にいる何者かと戦う準備を整え、そして扉を開いた。前の広間ほどではない が充分に広い部屋の大部分は、崩れた天井から雪崩れ込んだ大量の土塊に占められ ていたが、設備の残骸から見るにこの部屋は厨房として使われていたようだった。 先ほどから聞こえている暴力的な音、そこに混じる人のものではない荒々しい呼吸音 は、厨房の奥にある倉庫の中から響いてきていた。この部屋に何か意味のあるものが 残されているとしても、とっくに元の形を失っている食材くらいに違いない。このまま部屋 を出れば無理に戦う必要は無いはず。そう考えて君が一歩下がった時、ずっと聞こえて いた音が途絶えた。 気付かれたのだろうか?君がルルの柄に手を添えながら腰を落とした直後、激しい激 突音とともに倉庫の扉だったひしゃげた厚い金属板が吹き飛び、土塊の山にぶつかって 転がった。やがて姿を現したものは、全身が黒い剛毛に覆われた大きな熊のような獣だ った。だがその様子は普通の熊には見えない。何故なら両肩が大きな瘤のような筋肉 で隆起しており、そこから繋がる両前足が君の記憶にある倍ほどの大きさに膨れ上がっ ていたせいだ。さらに前足の爪は短剣サイズに伸びているため、普通の熊のように歩く 事はできず、大型の猿と同様に上半身を起こした格好でゆっくりこちらに向かってきた。 その尋常ではない威容と、涎を垂らし牙を剥いて君に放たれる殺気の強さだけでも、 非常に危険な獣であることが感じ取れる。 警戒している熊はまだこちらの間合いに入っていない。運がよければ攻撃を受ける前 に部屋から出ることはできるかもしれないが、それで君という獲物を諦めてくれるだろう か。 ・ このまま戦うなら(178へ) ・ 逃げ出すなら(245へ) |