2 君はアデルに報酬次第だと告げた。 この世界で旅を続けてきたおかげでわかったことがある。 それは未知の古代遺跡を探索することにどれほどの危険があるかということだ。 だからこそ報酬には、探索者の労力への代価であると同時に、身代わりを頼む依頼者に とっては他人を死地に送り込んだ免罪符としての役割もあるのかもしれない。 君が帰らなかった時のことを考えれば、この純朴な若者には相応の報酬を求めておくべ きではないのか。 すると青年は、最初から準備していたように躊躇無く応えた。 「この遺跡の、古代植物の種子とその育成に関わらない全てのものを」 それは結婚を控えた普通の若者の払いうる最大の報酬だと言えるかもしれない。 新たに発見された古代遺跡は、国に申請するだけでもイスターヴェのような町で数十日 は暮らしていける褒賞金が出るという話だ。(107へ) |