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君は、大蛇に気づかれる前になんとか正面扉へと辿り着いた。
 ゆっくりと扉を押し開け、陽の光に溢れた外界に一歩を踏み出す。
 その明るさに目を細めつつも、久々に感じた温もりと風の爽快さに、満身創痍の
身体でさえ精気が戻ってくるのを感じる。
 振り返って見上げれば、この建造物はやはり寺院の遺跡だったようだ。
 そして大部分が山の中に埋まっており、君が最初に目覚めた岩室のあたりは
この位置からだと視界に入らない。


 君は、遺跡の正面に広がる森の中に、石畳の道の名残を見つけ、それを辿って
行くことにした。 今となってはもう遺跡の中に戻る気にもならない。
 それよりも、日が昇っているうちに人家か人里を見つけなければ、空腹で行き
倒れるか、野生の獣にでも襲われて餌になってしまうかもしれない。
 今はそのことを心配するべきだろう(130へ