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何か物音が聞こえたような気がする……。
 ランタンの灯りを絞りつつ警戒を強め、ひと際大きなガラクタの山を回り込もうと
した時、突然ガラクタの向こうから奇声があがった。
 物陰に隠れて覗いてみると、そこには1体の奇妙な生き物がいて、ガラクタを
積み上げる事に熱中しているようだった。
 人間の子供くらいの痩せぎすな身体に長い手足、大きなよく動く瞳。
 そして彼(彼女?)は、様々な布の切れ端を利用した派手な衣服を身に着け
ていた。
 その服装も含め、この生き物なりの美的感覚による芸術なのかもしれない。
 足元のガラクタを拾っては、途中まで積み上げたものに積んだり離したりを繰り
返し、頭を捻っては捨て、別のガラクタを物色している様子は滑稽でもあるが、
ここで笑うわけにはいかない。
 幸いにもまだ気づかれていないようだが、どうするか。


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