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誰も通ることが無くなって久しい街道の名残を追い、中天高く昇っていた太陽
が山向こうに消えようかという頃まで歩いて、君はようやく人里に辿り着いた。
 だがもう空腹でいつ倒れてもおかしくない状態でもあり、夕餉の支度で食欲を
そそる匂いが満ちる村に入って間も無く、意識が薄れていくのを感じる。
 地面に膝をつき、倒れ伏した君に気づいた村人が駆け寄る足音、子供の声、
犬の鳴き声という人の営みの音に安堵感を覚えながら。
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