■パンドラの夢


 ☆はじめに
   
   前作は興味があったのですが、絵柄が合わなさそうだったのとSLGだったってので買わなかった
   ぱじゃまソフトの第二弾です。

   本作はループする夏休み最後の部活合宿の一週間というテーマだったので興味がわいて購入しました。

   まず最初にこのテーマについて書いてみましょう。
   
   今を去ることかなり前「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」と言う映画がありました。
   タイトルからも察せられるように当時大人気だった「うる星やつら」の劇場版第二作です。

   この映画は主人公達が学園祭の準備に追われる毎日がループし、常に学園祭前日になると言うものです。
   作中主人公達は気が付けば以前にもこうしたことをしていたような気がする・・・と言う既視感を覚え
   そのことに気が付いた時、学園祭の前日という世界は崩壊し、世界は作られた廃墟へと姿を変え
   仲間だけでおもしろおかしく暮らす世界へと変貌します。

   映画のネタバレはこのくらいにしておきますが、ゲームの内容説明を読んでこの映画を思い出しました。
   

 ☆内容など

   主人公は先輩一人、同級生一人、後輩一人の四人しかいない美術部の二年生。
   かつては栄華を誇った美術部も先代までのすちゃらか活動がたたり予算は減らされる一方。
   新入部員も一人しか入らなかった美術部は、恒例の夏合宿を学園内の合宿所で行わなければならない始末。
   でも、それでも、先輩がいて、幼なじみがいて、脳天気な後輩がいて、絵は下手っぴだけど楽しくてたまらない、
   夏休み最後の合宿の一週間。こんな生活がずっと続けばいいのにね、
   と誰もが思ったその一週間がずっと続くことになるとは・・・

  詳しくはメーカーサイトを見てください。

   登場人物はヒロインとしては以下の四人。
   一人目は美術部の唯一の先輩にして部長、無口だが可愛い物好きの永源寺実紀。
   二人目は幼なじみにして絵以外の才能は皆無だが絵だけは凄い源陽詩美。やや天然。
   三人目は意味不明の言動を繰り返し、当たりを混乱に陥れる底抜け脳天気後輩の橘蘭。
   四人目は合宿前日に工事中の地下室で発見した医療用アンドロイド スゥ。

   他サブヒロインとして陽詩美の妹 春華が登場します。

  登場人物はこちら

 ☆グラフィック

   冒頭で少し書いている絵柄については流石に自分の好みとかけ離れていますが
   描き込まれた人物グラフィック、美しい背景といずれもハイクオリティでゲーム世界を盛り上げます。
   
   品質的な問題はないと思うので、後は絵柄の好みの問題でしょうね。

   CGは多くもなく少なくもないと言ったところですが、いかんせんヒロインが四人しかいないので
   CGの量は推して知るべし。


 ☆システム

   内容的には比較的オーソドックスなADVです。
   適宜表示される行動選択を選んで・・・と言うものです。
   
   変わっているのは通常画面で、立ち絵とともに表示される科白は吹き出し型になっており、
   主人公も絵こそ出ませんが吹き出しで、構成自体は漫画仕立てになっています。

   吹き出しの中に縦書きで科白が出るというのはちょっと面白かったです。

   本作は「∞(ループ)アドベンチャー 」と銘打っているので一周しても終わりません。
   詳しく書くとネタバレになるので書きませんが、微妙に姿を変えながら続く合宿期間を
   主人公とともに何度も繰り返すことによって話が進んでいきます。

 ☆総

   本作は言ってしまえばほぼ完全な一本道のシナリオで、クリア順すらも固定されています。
   ですので、バッドエンド直結の一つを除けば選択肢はせいぜいシーンが変わる程度で、
   恐らくは好感度メーターのようなフラグすらもありません。

   ですので、ゲーム性はほぼ皆無だと思いますが、その分用意されたストーリーを追うことに
   集中できますので、善し悪しかも知れません。
   意図的にそうした作りにはなっているともいますが。

   話を語ることがほとんど全てネタバレに直結するので多くは書けないのですが、
   全体を包み込む不思議な雰囲気は妙に心地よく、主人公もへたれでもなく酷い人でもなく、
   昨今の主人公にしては比較的容易に感情移入ができるいい人です。

   ストーリー自体が綺麗ではありますが、やや救いのない話ですのでそれを受け入れるかどうか?
   でかなり評価は変わってくると思います。

   後、冒頭でも書きましたが「うる星やつら2ビューティフルドリーマー」を知っているかどうか?
   でも抱く感想は違うと思われます。

   正直に言えばそれほど似ているわけではなく、設定を似せたってだけなのですが、
   その後を語る趣味があればなかなかに面白い一作だと言えると思います。


 ☆お気に入り

   スウしか選べないですねぇ・・・
   ストーリー、キャラともに永源寺実紀なんですけど。


 ☆ハッピーエン度

  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

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    以下にはネタバレとなるコメントが書いてあります。
    読みたい人は指定範囲を選択して反転させて読んでくださいませ。

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  いつもなら恒例のキャラ別ネタバレ感想ですが、ここではネタバレしないと書けない話を書きます。

  まずゲーム性の有無やキャラの少なさと言った不満は取りあえず置いて置いて、
  全体的なストーリーの好みの話です。

  「パンドラの夢」はクリア順すらも固定で、プレイすると言うよりはマウスクリックで進める
  ノベルかマンガのような作りになっています。

  蘭→美紀→陽詩美と進めて、最後はスウのストーリーに乗ります。
  蘭のループではある程度あった選択肢も後に行くほど少なくなり、
  ゲームの先を左右する選択肢は陽詩美のループにある学校から出るか出ないかくらいです。

  ですからプレイヤーには先を左右する力は与えられていません。

  通常は好みやなにかで決めていくヒロインのクリア順もシナリオの整合性のために固定になっています。
  これ自体は演出と言えるのでまぁ別に良いんですけど。

  ただ、この方式だとかつて「リフレインブルー」というゲームで感じた不満を再度認識することになります。

  それは「主人公が誰と結ばれるのか?」と言うことです。

   「リフレインブルー」もプレイ順は固定でこそありませんでしたが、個々のヒロインをクリアしていく毎に
   主人公の過去が明らかになっていき、主人公自身が忘れていた(忘れようと思って忘れていた)出来事を
   再確認して、最後自分の記憶とかつて別れた人との思い出を昇華させるという作りになっています。

   ですから、プレイしていく上で出会うヒロイン達は実はストーリーの脇を飾るだけの存在になってしまい
   最後の最後のストーリーは実に美しく、悲しく、素敵なものではありましたが釈然としない
   救われない気持ちが残るものではありました。

   「パンドラの夢」も同じ形式になっており、最後の最後のスウに全てをごっそり持っていかれてしまいます。
   ストーリー的にはこれが美しいのでしょうが、では夏休みを共に過ごし、結ばれた彼女たちの存在は?
   9/1を迎えて全てが進み始めた時間の中で、彼女たちの心はどうなってしまうのか?

   そう言うストーリーなんだからしょうがない、
   と言えばそうなのですが、プレイヤーの心の整理まではやって欲しかったかな、と。

   ですから、最後にもう一度最初からプレイして、でその夏合宿の一週間は
   普通の恋愛ゲームのように選択肢はヒロインを決定するものにする、と言うのが良いなぁ。
   そうすればエンディングは四通り生まれるわけですから。
   まぁスウは無しにした方が良いかもしれませんね。

   実はプレイした人は少ないと思いますが、かつての名作「YU-NO」がまさにこんな作りでした。

   最初のプレイでは三人のヒロインのルートがあり、各ヒロインのルートの最後まで来ると
   最初に戻されて今度は別のヒロインのルートに乗るようにプレイすることになります。
   そうして三人のヒロインのルートを全てクリアすると第二部への扉が開き、
   第二部では舞台を全く別の場所に移して話が展開します。

   ほぼ一本道の第二部をクリアすると全てのストーリーの全貌が判ると共に、
   主人公は再度全ての物語の発端に戻されます。

   ここでもう一度最初の三人のヒロインをクリアすると最初では選べなかった
   ヒロイン毎のエンディングへと進むことが出来るようになります。
   こうしてストーリー的にもプレイヤーの心情的にもきちんとした落ちがつくのです。

   「リフレインブルー」をクリアしたときに一番感じたのがこうした配慮への欲求でした。
   あれもまた最終ヒロインを決定する道が残っていたら、ある程度救いがある話になったのにと思います。

   まぁ「リフレインブルー」もまた全てがメインヒロインへ捧げる物語と言うことなので、
   あれはアレでいいのでしょうけど。

   とまれ、ストーリー的には綺麗にまとまっているし、こうした不満もある程度は好みの問題なので
   これはこれでいいのでしょうね。

   ただ、そうすると9/1、各ヒロインは全員主人公と身も心も通じ合ったと思って
   登校してくるのでしょうから(蘭は入院ですけど、主人公と約した未来を夢見て頑張るわけで)、
   なかなかに凄まじい修羅場が展開されそうですな。
   しかも主人公の全てはスウへと捧げられているという始末。

   この辺をクリアする道があるのか、それともそこまでは考えてないよ、さようなら、なのかでも
   シナリオへの評価は変わってきますけどね。

       
   ■■■■■■■■■■  ネタバレここまで  ■■■■■■■■■■■