ピンポーン・・・
 見たいTV番組もなくなり、眠ろうとしていた俺の耳に 階下からのチャイムが聞こえてきた。時間は、深夜二時。いわゆる、丑三つ刻という時間帯だ。
 この時間に、チャイムが鳴る理由は四つある。チャイムの故障、悪戯、お化け、来客。
 こんな時間に来客なんて、考えられない。故障にしては、連続で鳴り続けない。お化け・・・ んなわけないよな。ハハハッ・・・
 ピンポーン
 俺は、唾をゴクッと飲んだ。意を決して、カーテンの隙間から 外を覗いてみた。
 ・・・誰かが、門柱のところにいる。女性っぽいシルエットだ。
 俺は、もっとよく見るために 窓を開けた。すると、こちらに気づいたのか 向こうは顔を上げてこっちを見た。
 「あ・・・ 綾香?」
 「浩之、遅いっ!」
 「ばっ、ばかやろうっ! 夜中に大声出してんじゃねえ。。。」
 俺は、お化けじゃなかったことに ホッとした。
 「あ、そっか。。。
 それより、早く迎えに来なさいよ。恋人を、いつまでもこんなところに放っておくつもりなの?」
 「今行くから、おとなしく待ってろ。」
 こんな時間に屋敷を抜け出してくるなんて、どうしたんだ? それに、セリオがいなかったぞ・・・ なにかあったのか? 電話じゃ、話せないことなのか?
 俺は、あわてて一階に降りると 玄関ドアを開けた。綾香は、門の外でおとなしく待っていた。
 「入って来いよ。」
 「 ・・・うん。」
 キィ〜・・・ ガチャンッ
 綾香は、門を開けると ゆっくりと内に入ってきた。大きなトランクを持って。
 「綾香、その荷物はなんだ?」
 遊びに来たにしては、大袈裟過ぎる荷物。目立ち過ぎる。
 「 ・・・家出してきたの。」
 俺から目線を外して、そう言った。それから、俺はただ事じゃない雰囲気を感じた。
 「そっか。とにかく、家の中に入れよ。」
 俺は、トランクを持つと 空いた手で綾香を掴んで 引っ張った。
 「 ・・・ 」
 綾香は、無言で従った。驚いてはいるが、喜んでいるみたいだ。
 それにしても、綾香が来たことで 頭が冴えちまった。当分は、眠れそうにないな。
 トランクをリビングに置くと、綾香を台所の椅子に座らせた。
 「何か飲むか?」
 「 ・・・ううん・・・ いらない。」
 綾香の様子から、事は深刻なのはわかる。が、俺からは聞けない。聞くべきじゃない。
 綾香は、どう切りだそうか 悩んでいるみたいだ。しきりに、俺を見たり 下を向いたりを繰り返している。
 「あのね・・・ あの・・・ 私・・・ 私とかけ・・・ 駆け落ちしてほしいの。。。」
 びっくりしたが、綾香らしい口調でないのが 逆に俺を冷静にさせる。
 「で?」
 「お爺様ったら、私には浩之っていう恋人がいるの知ってるはずなのに 一回りも違う人とお見合いしろって言うのよっ! 会うだけって言ってるけど、きっと会ったら最後ね。そのまま、無理矢理結婚させるに決まってるっ!!!」
 綾香は、テーブルに拳を叩きつけて 心底怒っている。無理もないことだ。孫の将来を考えているのだろうが、それ以前に 会社や家のことが先にきている。それでは、綾香の事を考えていないに等しい。
 「それで、家出してきたってわけだ。」
 「そうよっ! ・・・て、なんとも思ってないの?」
 「綾香のことは、隅々までわかってるからな。そういうことになれば、こういうことをするってのは 目に見えている。俺に、駆け落ちする覚悟さえ持っていないようなら おまえと恋人になる資格はないさ。」
 俺は、ずっと言わずにいたことを 綾香に伝えた。いつかは、一緒になりたい。それが、合法的ならそれに越したことはない。できなければ、俺から駆け落ちを持ちかけていただろう。
 「いいの?」
 「綾香は、家よりも俺を選んだのに 俺が断れると思うか? 俺には、おまえより失うものが少ない。だから、俺には綾香さえいればいいんだよ。」
 自分で言ってても恥ずかしくなるような言葉が、平気にでてくる。綾香の想いに応えたいから、言えることだ。
 「 ・・・ありがと・・・ 。」
 綾香は、俯いて言った。嬉しかったんだと思う。そう思いたい。
 「んじゃ、俺も家を出る準備しなくちゃな。綾香がいないと判れば、すぐに追っ手がかかるだろうし。」
 時間は、無いと言ってもいい。綾香が、家出をして まず最初に疑われるのは俺しかいない。なら、一分一秒でも早く遠くへ 来栖川家の目から逃れなくてはならない。
 「私、部屋に閉じ籠もって ストライキ起こしてることになってるから 二・三日は大丈夫よ。姉さんも、セリオも、協力してくれてるから。二つ向こうの駅の始発に間に合えば、OKよ。」
 「そっか、先輩たちには感謝しなくちゃな。でも、なんで二つ向こうの駅なんだ?」
 「駅自体が、古く小さいから 監視カメラがホームしかないのよ。少しでも、足跡を残さないようにしないとね。」
 ・・・用意周到に、計画を練ってやがったな。ということは、潜伏先も決まってるってことか。 ・・・見合い話も、何日も前にあったってことか。
 こいつ、俺を試してやがったな。
 「綾香、逃走プランは出来上がってるんだろ? 話せよ。。」
 「えへへっ、判っちゃった?
 でも、浩之の本心がわかって とっても嬉しかった。」
 「ったく、 我ながら恥ずかしいセリフ吐いちまったぜ・・・ 。」
 後悔、後に発たずだ。
 「で、どこまで行くか知んねえけど あんまし手持ちの金はねえぞ。」
 「心配、ご無用。ちゃんと、数日前に下ろしてあるわ。とりあえず、こんだけあれば十分ね。」
 そう言って、綾香は封筒一杯の万札を トランクから取り出した。
 札束にはびっくりしたが、トランクの中には ほんの僅かな服と小さなカバンしか入っていないのにも驚いた。
 「そ・・・ その金は?」
 「私が、大会で優勝した時の賞金。私自身のお金だから、安心して。」
 「そうなのか。家の金を持ち出したってんなら、駆け落ちは中止だったぞ。」
 「わかってるわよ。私だって、嫌だもの。だから、このトランクの中にある物と今着ている服が 私の全てよ。」
 綾香は、家出するのは自分の都合だから 最低限の物しか持ち出すべきでないことをわかっていたようだ。
 「そっか。それにしても、トランクの中身 少な過ぎねえか?」
 「トランクと着ている服は、ここに置いていくわ。だから、持っていくのはこのカバンと服だけ。」
 一揃いの服と下着、それとスポーツバックを取り出して広げる 綾香。
 ・・・違和感がある。
 「なんか、変じゃないか? ・・・服が、小さいように見えるんだが。」
 「うん。私が、小学校の時に着ていた服よ。これに着替えるの。」
 「そりゃ、いくらなんでも無理があるだろう・・・ 。」
 綾香が、その服を着ていた頃はどんなんだか知らないけど 着れないことは誰が見ても すぐにわかることだ。
 「ところが、この薬を飲めば 無理じゃないんだなぁ〜。」
 綾香は、楽しそうにスポーツバックから 薬瓶を取り出した。
 「 ・・・それは・・・ ?」
 嫌な予感がする。
 「姉さんが作ってくれた、魔法の若返り薬。これで、7.8歳若返るわ。そしたら、この服着れるでしょ。」
 綾香は、自信満々に言うが なんちゅう危険な賭をするんだ。。。
 「若返りの薬なんて、信じてるのか? 危なくねえか?」
 俺の素直な感想だ。いくら先輩だって、本当に作ってしまうとは思えなかった。
 「それは、大丈夫。効果の程は、セバスチャンで試しているから。栄養ドリンクだって飲ませてみたら、見た目は変化なかったけど 本人は身体が軽くなったって喜んでいたわ。」
 「人体実験済みってことか。」
 「そういうこと。私も、一度だけ飲んでみたけど 小さくなった私を誤魔化すのに大変だったわ。」
 どうやって、元に戻るまで誤魔化したか気にもなるところだが 安全性は一応確認してるってことになる。が、不安は拭えないぜ。
 「私って、有名人でしょ。だから、こうでもしないと どこでばれるかわからないもの。ホント、姉さんには感謝してる。」
 綾香は、安心してるようだが 俺としちゃその効果を見ていない以上 疑うしかない。
 そんな、疑いの目が気に入らなかったのか
 「あ〜、信用してないっ! だったら、その目で見て 驚きなさいっ!!」
 と言って、薬瓶の蓋を開けると ほんの僅か口に含んだ。
 俺が、止める間もない 一瞬の出来事だった。
 「おっ、おいっっっ!!!!!!!」
 「大丈夫だって、そんなに慌てないで。 ・・・薬の効果がでるまで、少しかかるから 浩之は自分の用意をしてきて。持ってく物は、なるべく少な目にね。途中で、買いそろえるから。」
 俺の心配を余所に、綾香は平然としている。俺としちゃ、綾香から目を離したくねえんだけどな。
 「 ・・・ああ、わかった。」
 俺は、後ろ髪を引かれる思いで 自分の部屋に向かうことにした。すぐに用意して、戻ってこよう。
 「ごゆっくりねぇ〜。」
 んなわけ、いくかよっ。速攻で、戻ってきてやるっ!
 俺は、ゆっくりと二階へ向かう振りをして 一段飛ばしで階段を上がった。とにかく、すぐ必要になる物だけ考えた。
 ほんのちょっと家を空ける・・・ そんな感じもする。反対に、もう戻ってこないかもとも。
 今までの生活と別れを告げる為、すべて置いていこうとしているのかもしれない。
 改めて部屋を見渡すと、それほど執着する物など ほとんどなかったことに気づいた。ただ、綾香との想い出の品だけは持っていきたい。
 心配は、冷蔵庫の中身だが・・・ 日持ちするもんしか入ってないはず。今度、お袋が戻ってくるまで 大丈夫なはずだ。
 今度か・・・ 俺は、どんな顔をして戻ってこられるんだろうか。。。
 俺は、僅かな着替えと綾香にいづれ渡そうと思っていた物をスポーツバックに押し込むと 慌てて階段を下りた。
 「おわっ!」
 階段を踏み外したが、最後の一段だった為に 大きな音を立てただけで転けずに済んだ。ちょっとばかり、足が痺れたな。
 「くうっ。。。」
 痺れた足を、構わずに歩みを進めると 声が出た。
 「ちょっと、なにしてるのよっ! 静かにしなさいよ。」
 「す、すまん・・・ ん?」
 大きな音に、慌ててやって来た綾香。不謹慎な音に、驚いたんだろう。深夜の大きな物音は、近所にも聞こえたかな。
 そんな綾香に、俺の目は釘付けになった。着ている服が、だぶだぶになっている。幼さをみせる顔。背も低くなってないか? なにより、豊かだった胸が見る影もない。
 「どうしたの? どこか、ケガでもしたの?」
 「綾香・・・ おまえ、縮んでないか?」
 俺は、声が震えていた。
 「う・・・ ん、薬が効いてるからね。140pくらいになるよわよ。」
 「本当に大丈夫なのか? どっか、おかしいところはないのか?」
 「 ・・・とに、心配性ね。二度目なんだから、私はなんとも思ってないのよ。姉さんを信じてるし。それに、浩之と一緒にいる為に必要なのよ。わかってよ・・・ 。」
 綾香は、俺の心配を吹き払うように 俺に抱きついてきた。すでに、かなりの身長差ができている。綾香の顔は、俺の胸下くらいにかない。まるで、マルチに抱きつかれている感じだ。
 俺は、カバンを床に落とすと 綾香を抱き締めた。小さくて、壊れそうな身体になってしまった綾香を 力一杯抱き締めることはできなかったけど。
 「綾香の、そこまでする一途さが怖いんだ。すべて、一人で決めないでくれ。綾香だけのじゃなく、俺たちの未来なんだからな。」
 「うん・・・ うん・・・ 」  

***
 「お兄ちゃん、どうしたのかな?」
 電車の心地よい揺れが、徹夜の俺を 夢の世界へ誘う。猛烈な眠気と戦っている俺の横顔を、綾香が覗き込んできた。すごく楽しそうだ。
 「眠いんだよ。そう言うおまえは、どうなんだ?」
 「楽しいから、眠気なんて吹き飛んでるわ。」
 「お子様だな。」
 「今は、お子様よ。うふふっ。」
 来客もまばらな、始発電車。俺たちは、仲の良い兄妹にしか見えないんだろうか。大男の横の、小さな少女。この組み合わせは、兄妹以外だと 何だろうか?
 「なあ、どこに行こうっていうんだ? おまえの言う通りに電車に乗ったんだから、そろそろ行き先を教えてくれてもいいだろ?」
 「 ・・・うん。」
 綾香は、周りを見渡した。俺たちが乗っている車両には、俺たち以外いない。他の乗客は、他の車両だ。そのことを、改めて 綾香は確認したのだ。
 「とりあえず、大きな街にでましょ。そういう街だと、駅前にデパートがあるから 着替えとかそろえられるでしょ。」
 「危なくねえか? 来栖川関係の社員が、わんさか居そうだぜ。」
 「私のこと、どれだけ社員が興味を持って知ってるか 疑問だわ。それに、今の私はこんな姿よ。。。」
 綾香は、小さくなっただけじゃなく 髪を三つ編みにして フリルの付いたサマードレスを着ている。子供の頃の姿を知っている者以外、まず判らないということか。
 「そうだったな。
 でもよ、デパートが開くまで まだまだ時間はあるぜ。」
 「バカ。少しでも、遠くの街に行けばいいだけじゃないの。」
 「バカはないだろ。行き先が、まったくわかんねえのに 思いつくかっての。」
 「あっ、そっか。」
 眠くて、頭の回りも遅くなってんのに 細かいことまで考えられるかっての。
 ・・・緊張感ねえな、俺。
 「これから行こうとしてる所は、来栖川家の別荘の一つなの。」
 「ふぅ〜ん・・・ て、それじゃ意味ねえだろ!?」
 俺は、眠気が飛んだ。綾香が決めたことならかまわないが、駆け落ちの意味がまったくなくなるんじゃないのか?
 「焦らない。ちょっとわけありの所でね。管理している母娘に、あげたような所なのよ。」
 「その人たち、知ってんのか?」
 「よく知ってるわ。だって、私の乳母と乳姉妹だもの。」
 「 ・・・乳母ねぇ・・・ 。」
 庶民の俺にとっちゃ、まったく縁のない世界だ。今の時代じゃ、あるかどうかさえわからないことだがな。
 「桐子お母さんは、お母さんの従姉妹なの。御主人が、結婚してすぐに事故死しちゃって 肉親もいなかったから 私の家に身を寄せていたのよ。それから、従姉妹の綾音が生まれたわ。私と綾音は、すごく似ていた。双子といってもいいくらいにね。だから、お父さんと桐子さんが関係あったんじゃないかって疑われて DNA鑑定までやったみたい。結果は、白。たぶん、隔世遺伝じゃないかって。」
 「そら、大変だったな。で、隔世遺伝ってなんだ?」
 「数代を隔てて現れる遺伝のことだって。だから、私と綾音の何代か前のご先祖様と似てるってことだと思う。
 そんなんだから、綾音・・・ 私か姉さんに何かあった時の身代わりみたいな立場に追いやられて・・・ それで、住んでる別荘から離れられなくなった。」
 綾香は、綾音という女性を想ってか 涙ぐんできた。
 「そんなこ・・・ と・・・ 」
 俺は、何を言っていいのか 言葉がみつからなかった。もう、眠気など全くなくなってしまっていた。
 「いいのよ。このことは、来栖川本家の人間か わずかな側近しか知らないことだから。
 今日行こうとしてるのも、あの人たちなら匿ってもらえるのと それなりの広さを持った屋敷だから寝るところには困らないと思ったのもあるけど、私は・・・ 綾音の束縛を解いてあげたいと思ったの。」
 「そっか。。。」
 俺は、綾香を抱き締めた。俺の腕の中にすっぽりと収まる綾香は、すごく儚く感じる。俺が、守ってやらなければという想いが 強くなる。
 「俺には、何が出来るんだ?」
 「さあ?」
 「さあ?って・・・ 。」
 「浩之なら、なんとかできると思ってるから。」
 「 ・・・ 」
 信頼されてんのかな。。。
 「信頼してんのよ。浩之は、周りが思っているよりも ずっとすごい人なんだから。私が、保証してんだから 自信持ちなさいよ!」
 俺は、ドキッとした。まるで、俺の頭の中を読まれてるみたいで 怖さを感じる。
 「当たってたみたいね。」
 「えっ?」
 「浩之が、私のことを何でもわかるように 私にも浩之の考えてることがわかるってことよ。私たちは、それだけ近い存在ってことね。相性もバッチリだし。」
 「おいおい、今の姿を考えろよ 綾香。隣の車両まで聞こえないにしても、迂闊だぞ。俺が、ロリコンだと思われちまう。」
 「えへへっ。」
 やっぱし、考えてなかったな。俺たち以外、誰もいない車両であることが 緊張のたがを緩めていたのだ。
 「俺たち、駆け落ちしてんだよな。」
 「うん。。。」
 「もっと慎重に、言葉を考えていこうぜ。誰が聞いてるとこも、わからないからな。」
 「そうだね。でも、本当の二人きりの時はいいでしょ。
 私たちは、遊びに行く兄妹を装ってるんだってことも忘れてるでしょ。もっと楽しそうにしてくれないと、変に思われるわよ。あっ・・・ でも、さっき私・・・ しんみりして泣いちゃった。」
 綾香は、俺を諫めるも 自らの誤りも正した。俺は、なんとも思っちゃいないが 自分の誤りをすぐに認め正すのが 綾香が好かれる一つの要因でもあるんだよなぁ。
 「今は、いいんだ。」
 「 ・・・うん・・・ 。」
 マルチより小さくなった綾香は、俺にしがみついて 自分の居場所を確認してきた。変な感じだが、悪くはない。なんか、ゾクゾクするような ウズウズするような感覚が こみ上げてくる。
 俺は・・・ 綾香に興奮してるのか?
 「 ・・・浩之、大きくなってる。」
 「フッ・・・ 疲れマラだ!」
 俺は、咄嗟に誤魔化した。
 「なにそれ?」
 「男はな、疲れてる時 無意識に立っちまうことがあるんだ。別に、興奮してるわけじゃないぜ。」
 「なんだ・・・ つまんない。」
 綾香は、ボソッと言った。
 「この姿じゃ、浩之を喜ばすこと・・・ できないんだ。」
 「綾香が、綾香なら 俺は興奮できるはずだ。ただ、俺には 幼女趣味はないってことだけはわかってくれ。」
 「! ・・・うん ・・・うん。」
 綾香は、ナーバスになってるのか? 
 それとも、小さくなった自分に自信を持ちたくて 俺に抱かれたいと思ったのか?
 俺は、そんな綾香を抱けるのか?
 「私が求めたら、応えてくれる?」
 ・・・ホント、俺の考えてることわかっちまうんだな。
 「当たり前だろ。」
 「ありがと・・・ 。」
 どんな姿になったって、綾香は綾香なんだ。俺は、ずっと綾香をみていくと 心に決めたじゃないか。綾香が求めれば、応える。迷う答えではない。それでも、俺が迷ったら導いてくれよ 綾香。
 「綾香、愛してるぜ。」
 「 ・・・くぅ〜・・・ スゥ〜・・・ 」
 「 ・・・ ・・・寝てるのか?」
 かっこ悪いな、俺。
 クスッと、笑いがこみ上げる。
 「もうすぐ乗り換えの駅だってのに、しかたない奴だ。」

***
 「もうすぐだから、がんばって!」
 「この荷物がなけりゃな。。。」
 木々の作り出す緑のトンネルの坂道を、俺たちは歩いていた。
 家を出た時より、遙かに増えた荷物。それも、二人分持っての山道の登りは、さすがにきついぜ。しかも、荷物が入っている紙袋の取っ手が 今にも千切れそうだ。
 「懐かしいな・・・ 。」
 綾香が見せた表情は、なんとも言えない嬉しそうな悲しそうなものだった。これから会う人のことを考えるだけで、何度もそんな表情を見せられる方としちゃ 気になってしかたないぜ。
 「なあ、そんなに綾音って娘が気になるになら なんでおまえが連れ出してやらなかったんだ?」
 「あの娘・・・ 内気だから。」
 「それでも、表に出してやるのが 綾香の役目だったんじゃないのか?」
 「綾音が望んだことを、尊重したかったのもあるけど 私の心の休憩する場所がほしかった。綾音と向かい合ってるとね・・・ 私たち、どっちがどっちか判らなくなるような錯覚に陥るの。合わせ鏡みたいなもんかな・・・ 。本当は、私が綾音なんじゃないかって思ったりもする。
 でも、私は綾香だった。だから、綾音には綾音でいてほしいから 無理強いはできなかった。
 ・・・ ・・・私って、わがままかな?」
 相手を、自分と見間違えるほどに 似ているのか。それは、怖いことだと思うぞ。綾香と綾音は、そのことに気づいたから 接触するのを減らしていったのだろう。自分を守る為に。
 だが、綾音という女性は 綾香の影という役割を背負わされて生きてきた。そのことに、綾香は決着をつけ 束縛から解き放とうと考えているのだと思う。
 「自分という存在を守ろうとしたんなら、仕方ないことさ。彼女も、それはわかっていたんじゃないかな。」
 「そう思いたいけど・・・ 不安なの。。。」
 「それを、解決しにいくんだろ? 俺も手伝うから、なんとかなるだろ。」
 「そうかしら。。。」
 綾香は、簡単な問題じゃないのに 俺が手を貸したくらいじゃどうってことないと みているようだ。
 「ま、俺が必要だったら いつでも言ってくれってことさ。」
 「そう・・・ ね。」
 綾香は、歩みを緩め 俺に合わせてきた。綾香なりの気配りか・・・ 。
 「疲れちゃった。浩之、おんぶしてくれる?」
 「ばっ、ばかやろうっ! この状況を見てから言えっ!!」
 やっぱり、綾香だ。しんみりした雰囲気は、似合わないってことだ。
 「言ってみただけよ。 ・・・ありがとね、浩之。」
 「ああ。
 ・・・これから行くとこって、母娘二人だけだったよな?」
 「そうだけど、どうして?」
 「だってよぉ、二人っきりなんて 不用心過ぎねえか?」
 「昔は、住み込みの家庭教師とボディガード、メイドがいたけど 今はセリオタイプのメイドロボが5体いるみたい。警備システムも最新式になってるわ。だから、心配いらないはずよ。」
 「よく知ってんな。」
 「そりゃ、着いたらしなくちゃいけないことあるしね。セリオが、メインコンピューターを押さえておけるのって 今日一杯だろうから。その間に、別荘のホストコンピューターを押さえるのよ。
 来栖川の施設には、それぞれホストコンピューターがあって 常にメインと情報交換してるの。どんな人が訪問してきたとかね。」
 「 ・・・俺たちのことも、ばれるってことだな。」
 「だから、セリオがメインを押さえて 速攻で削除することになってるの。
 でも、それがそれがばれないとは限らない。こちらの手際が、今後のことを左右するってことね。」
 ホント、綾香はいろいろ考えて行動してるな。俺なんか、行き当たりばったりだ。
 慎重になるべきなのに、俺の考えは浅いな。
 「浩之、私のいた世界が異常なんだから。浩之には、対応できなくて当たり前なのよ。私には・・・ こんなことしなくていい生活が 夢なのよ。」
 「俺も、綾香とは普通の暮らしがしたいぜ。きっと、叶えような。。。」
 「うんっ!」
 綾香の夢と希望・・・ 俺は、それを叶える手伝いをする為に 側にいると思いたい。
 綾香の願いは、俺にとっては普段していることが多いんで 手伝うのは楽だ。
 だが、よくよく考えてみると その気になりさえすれば これからいくらでもできることばかりじゃないか。。。
 「綾香が、元気になったのはいいんだが・・・ ハア・・・ 目的地はまだ先なのか?」
 「もう、敷地には入ってるわよ。」
 「えっ!? いつ入ったんだ??」
 「ん〜と・・・ さっきの分かれ道からかな?」
 「それって、三十分以上も前じゃねえかっ!」
 「警戒システムには、とっくに引っ掛かってるわね。でも、別荘まで近づかなければ なんともないはずよ。セリオたちは、こっちの動向をチェックはしてるけど。」
 なんちゅう広大な敷地だ。山一つ・・・ それ以上か?
 「ほらっ、見えてきたわ。」
 「ようやくか・・・ あんまし、でかくないな。」
 俺は、ペンションと見間違える程 あまり大きくない建物に不思議な思いを感じた。もっと凝った造りをしているとか、無意味にでかいとかを想像してたんで どう取っていいのか迷うぜ。
 「来栖川本家の隠れ家的存在だからね。目立つような造りには、しなかったみたい。それでも、造った当時は この辺にはない洋館だったんだって。避暑地として、周りがリゾート開発で やっと追いついてきただけじゃないかな。」
 古びた感じになって、森に溶け込むようになっている建物に 隠れ家という言葉はピッタリだと思った。反対に言えば、なんとなく怖くて 近寄りがたい雰囲気を持っていると言っていいだろう。
 「私と姉さんが、最後に来てからは・・・ 誰も利用してないはず。私のこと・・・ 歓迎してくれるかな。。。」
 「連絡は、取っていたんだから 大丈夫だろ。綾香が、不安になってどうするんだ? 俺なんか、赤の他人の初対面なんだぜ。」
 「でも、私 こんなんだし。」
 「綾香を、生まれた時から見ていた人なんだから 受け入れてくれるさ。」
 「そ・・・ そうだよね。うんっ、元気でたっ!」
 精神が、不安定になってやがんな・・・ 。浮き沈みが、激しいぜ。こんな綾香を見るのは、初めてだ。俺が守ってやらねばと、改めて思わざるを得ない。
 「 ・・・なによ・・・ 私、なんか変なこと言った?」
 綾香を、ジッと見つめている俺に 微笑んで言ってきた。綾香は、俺が綾香のことを想って考えていたことに 気づいていたんだろう。
 「いいや。」
 「とに・・・ 言いたいことは、ちゃんと言ってよね。私は、浩之だけのものなんだから・・・ ちゃんと守ってよ。」
 「わかってるって!」

***
 俺たちは、建物を確認してからも三十分程歩いた。一度沢を下って、登らなければならなかったからだ。なんで、また こんな不便な道を作ったんだか。沢を渡る橋を架けるくらい、来栖川ならなんなくできるだろうに。
 「なんで、こんな不便な道なんだよ?」
 通ってきた道が、使われている形跡があることから 普段の生活道なのだろうと思われる。それは、もう一つの道を避けているということだ。
 「別荘の裏に車でいく道があるけど、来た道より ずっと遠回りだったわよ。そっちの方が、よかった?」
 「さあな。。。
 で、どこから入るんだ? 呼び鈴のスイッチなんて、どこにもないぜ!」
 「敷地に入ってから見張られてるんだから、向こうとしちゃ無用のものだからね。
 でも、こんなものはあるわ。」
 綾香は、門柱にある不自然な金属プレートを 横にずらした。そこにあったのは、右手の形をした凹みと 覗き込む為かゴーグル状の形をした出っ張りだった。
 「なんだ?」
 「ちょっと、待っててね。」
 綾香は、右手を置き ゴーグル状のところに顔を押し当てた。
 カチャ・・・ ギィィィィィ〜〜〜・・・・・・
 鉄門・・・ 正門が、自動的に開きだした。
 「お待たせっ。さあ、入れるわよ。」
 「 ・・・何したんだ?」
 「鍵を開けたのよ。私自身というか、登録してある人の指紋と虹彩パターンがKeyになってるのよ。」
 「虹彩パターン?」
 「簡単に言えば、目の紋様。ほら、黒目の周りのところって 紋様があるでしょ。あれって、一人一人指紋のように違うのよ。両方チェックしないと、開かないようになってるの。」
 「なるほどな。」
 「そういうこと。 ・・・早く入らないと、閉まっちゃうわよ。」
 俺が感心してる間に、綾香は 門の内側へと入っていった。開いた門が、もう閉じ始めている。
 「なにぃっ!」
 俺は、あわてて荷物を持つと 飛び込んだ。
 「ハア〜、閉じんの早過ぎだっ!」
 「浩之が、のんびりしてただけよ。それと、絶対に門や壁をよじ登って越えたりしちゃ駄目よ。自動銃座の高圧ガスガンが、狙ってるからね。」
 「はぁ? どこに、そんなもんあるんだよ?」
 俺は、グルッと周りを探した。が、それらしいものは見つからない。
 「隠してるに決まってるじゃない。堂々と設置しておくわけないでしょ。」
 「 ・・・そりゃ、そうだな。」
 別荘と言いつつも、実は秘密基地か要塞なんじゃないかと思えてくるぜ。これなら、不法侵入者に対して 十分なわけだ。 ・・・普通の奴ならな。。。
 キィ〜〜〜〜・・・・・・
 俺たちが、入ってきたのを確認したからか 屋敷の玄関扉が開いた。重厚そうな扉が、左右に開かれていく。
 俺と綾香は、開かれた扉の奥を見つめた。
 「いらっしゃいませ、綾香様。」
 「セリオか。。。」
 主が、直接迎えに最初に出てくるわけないわな。
 「綾香ちゃん、いらっしゃい。お久しぶりね。」
 セリオの後ろには、おばさんと言うには若々しい女性が 立っていた。さらに、その後方にも人影がある。
 「桐子お母さん・・・ 私が判るの?」
 俺たちは、驚いていた。セリオなら、与えられた情報から 綾香を綾香とみることはできるだろう。
 しかし、目の前の女性は 疑う様子もなく綾香を見ている。
 「驚いてはいるけどね。 ・・・でも、間違えてはいないわよ。」
 セリオから、綾香が来たと伝えられて迎えに出てきたのに 居たのが小さな少女なら驚くのは当たり前なのだが、それを すぐに綾香だと判るのは流石と言うべきか・・・ 。俺だったら、昔の綾香を知っていたとしても 疑うぜ。
 「はいっ、綾香ですっ! ご無沙汰してましたっ!」
 綾香は、自分を判ってくれた嬉しさもあって 大きな声で挨拶をして深くお辞儀した。
 俺は、ただその様子を 荷物を持って見ていた。
 「そちらの方は、どなたかしら?」
 「あっ、初めまして 藤田浩之っていいます。その・・・ 綾香の・・・ 綾香さんの恋人・・・ です。」
 綾香の母親と言っていい人に、挨拶して自己紹介するのって こっ恥ずかしいぜ。思わず、改まった話し方しちまったぜ。
 「まあっ! 綾香ちゃんの恋人だなんて・・・ もしかして、ロリコン?」
 なぬっ!? いきなりそうくるかっ!!
 「ちっ、違いますっ! それに、綾香のこれは一時的な物で・・・ 俺は、本来の綾香のムチムチなのが好きで・・・ 。」
 「お母さんの前で、何言ってんのよ 浩之っ!」
 ゲシッ!
 「うぐ・・・ 」
 綾香のブーメランフックが、俺のボディーに食い込んだ。いくら威力が弱くなってるとはいえ、なんの対処もなく 油断していたところに食らったんだから ひとたまりもなかった。
 「あらあら・・・ 。
 セリオさん、彼を介抱してあげてね。」
 「はい、奥様。」
 冷静に対処してるのは、流石綾香の身内ってことか。
 俺は、かろうじて気を失わずに済んではいるが しばらくは動けそうになかった。
 それにしても、身体が縮んでもこの威力とは・・・ 憶えてやがれ・・・ 。
 「あ・・・ 綾香ちゃん。。。」
 「綾音ちゃん・・・ ごめんね。会いに来れなくって。。。」
 「ううん・・・ 気にしないで。こうして会えたのですから、嬉しいです。
 でも、その姿はどうしたの?」
 屋敷の女主の後ろから現れたのは、本当に綾香そっくりの女性だった。その落ち着いた話し方がなければ、俺でさえ区別できないだろう。
 それにしても、綾香のこの姿を見ても あまりびっくりした様子のない母娘に 俺は不思議さをおぼえる。いくら昔の綾香を知ってるからといって、今 その時の姿で現れたのだから、綾香本人だとは思えないのが 普通だろう。なのに、そんなことなど関係なく話している。それが、不思議なのだ。
 「その・・・ ちょっと・・・ ね・・・ 。」
 綾香は、目を泳がせて 答えを濁らせた。
 「綾香・・・ ハッキリ言えよ・・・ 。言わなきゃ、意味ねえぞ。」
 腹に痛みが走るのを堪え、綾香を説く。
 「浩之・・・ うん、そうだね。
 綾音ちゃん、この姿は 姉さんの薬でなったの。」
 「芹香お姉さんの薬? それって、セバスチャンさんに飲ませていたっていう 薬のことなのかな?」
 「 ・・・私、話してた?」
 「うん。メールに、ちょこっと書いてあったけど・・・ 違うの?」
 おいおい・・・
 「そうなんだけど・・・ この姿になったのには、理由があるのよ・・・ 。」
 そう言って、綾香は俺を見た。
 「はいはい、立ち話もなんですから 後は中でゆっくりとね。
 藤田くんだったかしら? 立てる?
 綾香ちゃん、少しは手加減してあげないと駄目でしょ。」
 注意は、それだけですか。。。さすが、綾香の乳母だけのことはある。
 「よっと・・・ 」
 俺は、なんとか立ち上がった。ダメージが抜けたわけじゃないが、歩くことはできそうだ。
 「やってくれたな、綾香。後で、お仕置きしてやるっ。」
 「へ〜んっ! 私を捕まえることが出来たらねっ。」
 綾香は、ピョンッと飛び退いて 玄関の方へ駆けだした。
 「お荷物をお持ちします。」
 「あ・・・ ああ。」
 俺を介抱していたのとは別のセリオが、やって来て 荷物を運んでくれると言った。
 「綾香の奴、どうなってんだよ。考えることが、わからなくなったぜ。」
 やれやれだ。疲れていたのか、身体が重いのに 追い駆けっこなんてしねぇぞ。そのうち、あいつの方から寄ってくるんだから その時とっ捕まえてやるさ。
 「本当に仲が良いのですね。」
 「あっ、すみません。。。」
 「いいのよ。昔の綾香ちゃんを見ているようで、楽しいわ。」
 「昔からお転婆だったんだ。」
 「そうよ。いろいろ話してあげますから、あなたも中へどうぞ。」
 「はい、お邪魔します。」
 俺は、二体のセリオと共に 屋敷の中へと向かった。まだ、腹の中にズキッとするものを感じる。

***
 「私、ホストコンピューターを押さえに行ってくるね。
 桐子お母さん、セリオを私に貸してくださりませんか?」
 「いいけど、壊さないでね。」
 「はぁ〜い。セリオ、いらっしゃい。」
 綾香は、扉の横に待機していたセリオを選ぶと 出ていった。
 「あっ・・・ お母さん・・・ 。」
 「いってらっしゃい。」
 母親の隣に座っていた綾音は、綾香を追いかけるように出ていった。
 応接間で、俺の隣に綾香。向かいに、母娘が座っていた。綾音は、俺が気になるようだった。俺が、綾音に顔を向けると 目を背けるのが可愛かった。
 「ごめんなさいね。娘は、ちょっと男の人が苦手なの。」
 「気にしてないです。」
 「できれば、あの娘とも仲良くしてあげてくださいね。」
 「そうですね。綾香との関係も聞いてるから・・・ 俺なりにやりますよ。」
 俺に、なにができるかは 手探り状態だ。はっきりと言えるわけもない。嘘つくわけにもいかねぇしなぁ。
 「お願いしますね。」
 俺が、正直に言ったのがよかったのか 嬉しそうにしている。
 「はい・・・ 。」
 俺は、応接間に通されても まだ今回訪れた理由を綾香共々言っていなかった。改めて挨拶して、紅茶を飲んで 一息ついただけに過ぎなかった。
 綾香は、ホストコンピューターを押さえる意味を説明してないのに それを疑いもせず了承する女主人。信用してるんだろうけど・・・ 俺が、言うしかねえな。
 「実は、俺と綾香・・・ 駆け落ちしてきたんです。来栖川の会長から、綾香に見合いの話しがあり・・・ ありまして。」
 「ふふっ、無理に敬語使わなくてもいいわよ。」
 「すみません。。。
 未成年の俺たちには、逃げることしかできなかった。当てのない逃走でもよかったけど、綾香が行かなければならないところがあるって言うから ここにやって来ました。」
 「そうだったの。頼ってくれたのは嬉しいけど、いつまで囲えるかはわかりませんよ。」
 「本当は、誰にも迷惑はかけたくなかった。けど、綾香は 綾音さんのことが気がかりだった。だから、ここに行くんだと。」
 「そう・・・ あなたは、それでよかったの?」
 「親には、迷惑かけると思う。
 でも、綾香が他の男のものになってしまうのを 黙ってはいられなかった。俺には、綾香しかいないと思っているから。」
 「若いわね。
 でも、それでいい時もあるのよね。
 ・・・わかりました。私、できるだけ協力しましょう。」
 心強い言葉だけど、迷惑かけるのは 心苦しい。だからといって、ここを離れるわけにもいかない。綾音という、綾香とそっくりの女性を 放っておくには忍びない。
 「ありがとうございます。」
 「綾香ちゃんが選んだ人ですから、期待していますよ。」
 この人は、俺になにを期待したのか? それに応えるのが、俺の責任なのか?
 「それって、断れませんよね。」
 「ふふふっ・・・ さあね。あなたが、綾香ちゃんのことよくわかってるのでしたら わかることですね。」
 謎だ。この人は、自分の娘が苦手意識を直すのに どうなってもいいというのか?
 もしかして、綾香ではなく 綾音と一緒になってほしいというのか? それは、来栖川を守る為とも受け止められる。
 「 ・・・綾香より、来栖川が大事ですか?」
 「綾香ちゃんは、私の大切な娘。娘の幸せを、願わない親はいないと思いたいわ。
 だけど・・・ そんな綾香ちゃんを幸せにしてくれる方なら 綾音ちゃんを幸せにしてくれるのではと 思いました。親バカですね。
 ただ、男の方の愛を知らないというのが 可哀相で・・・ 。」
 この人にとって、来栖川は関係ないみたいだ。娘の幸せだけを考えている。なら、自分の幸せは どうなんだ?
 「失言でした。すみません。」
 「わかってもらえれば、それでいいの。
 娘には、自分の道を進んでほしいのに・・・ 叔父様の言葉に従うのが悪いとは言わないけど・・・ 少しくらい好きなことしたいと わがまま言ってくれないかしら。。。」
 この人は、綾香が羨ましかったのだ。綾香と綾音を比べてしまったことに悩みつつも、同じようになってほしいという母心が 言葉に出てしまったのだろう。
 そのことに、俺は何も口を挟むことは出来なかった。できないのだ。
 「 ・・・ごめんなさいね。愚痴ってしまって。」
 「いいえ。
 でも、無理強いすれば トラウマになるんじゃ?」
 俺は、すでに乗せられたのか? 綾音の苦手意識を直す手伝いをすることになりつつある。
 「あの娘、あなたには興味あるみたいですよ。」
 「え?」
 「女の直感というものだと、思ってくださればいいわ。」
 直感って・・・
 「まあ、近くにいるだけでも 良い刺激になると思いますから 気にかけてあげてくださいね。」
 「はあ。。。」
 そう言われると、俺の方が意識しちまいそうだ。それで、綾音を傷つけてしまわないか 不安だ。だから、気の抜けた返事しかできなかった。
 ガチャッ
 「終わったよっ! もう、これで大丈夫。」
 部屋に飛び込んできた綾香に、部屋に満ちていた空気は 掻き消されていった。
 俺としては、助かった感じだ。が、後ろめたさも感じた。綾香に対して、隠し事を持ってしまったから。
 「ん? どうしたの、浩之?」
 「いいや・・・ 以外と早かったんだなって。」
 「そお? そんなに経ってないわよ。ねえ、セリオ?」
 「はい。先程、リビングを出てから 一時間と十分程経っています。」
 セリオの感じが、違う。他のセリオとは、あきらかに違うのだ。そう、来栖川邸に置いてきたセリオに 似ているのだ。
 それにしても、そんなに時間が経ってたなんて 知らなかったぜ。
 「綾香ちゃん・・・ はしたないわよ。」
 「あっ、すみません 桐子お母さん。」
 この人には、いやに従順だな。昔、なにかあったのか?
 「綾香ちゃん、セリオさんになにかしたの?」
 「特別な感情チップと私のセリオのバックアップデータをインストしました。今、ここにいるこのセリオは 屋敷で姉さんの側にいるセリオの分身ということになります。」
 綾香のやつ、そんな物まで持ってきていたのか。
 「浩之さん、なにか変なところでもありますか?」
 俺が、セリオをジッと見ていたことに気づいたみたいで セリオは声をかけてきた。不思議な気持ちを感じてはいたが やっぱりセリオはロボットなんだと思わされてしまう。
 「いや、なんでもない。」
 本体とデータを共有している以上、このセリオはセリオなんだ。それを、わかってやらなくてどうするんだっ。
 「浩之、割り切れてないの?」
 「まあな。
 綾香こそ、どうなんだ? 俺には、友達を自分のいいように作ってるようにしか 見えないんだがな。」
 「私だって、本当は嫌よ。
 でも、セリオが・・・ 私の傍に どんな形ででもいいから居たいって言うの。」
 「いじらしいな。」
 セリオにとって、どんな形ででも綾香に仕えていたいという想いが なによりも優先されるのだろう。それって、恋と同じじゃないか? 主従関係というよりは、恋愛に近い感情の関係を セリオは作ったのかもしれない。それが、恋だとわからないだけなのだろう。
 「そう・・・ ね。」
 セリオの気持ちを、少しは気づいてるのかと思える返事だ。
 「いいわね。このセリオさんだったら、綾香ちゃんが帰った後も そのままにしてほしいわ。
 綾音ちゃんも、そう思わない?」
 「そう思いますけど・・・ 大丈夫なのでしょうか?」
 「どうして?」
 「このセリオさんは、綾香ちゃんを慕っているのですから いくら本体の分身とはいえ、私たちの為に残ってもらうことは できないです。綾香ちゃんが良いと言っても、私は断るしかないです。」
 綾音は、セリオをロボットとみていないのか?
 ここに隠れるように暮らしているから、友人のようにみていてもおかしくないな。心許せる相手としたいのなら、綾香を慕うセリオは 羨ましくはあっても傍に置いて置けない。自分をみてくれる相手が、いいんだ。
 「綾香・・・ 。」
 「うんっ、わかってる。私だって、綾音ちゃんの気持ちは判るつもり。だから、私たちがここを去る時には データは元に戻すことになるわ。
 だけど、載せた感情チップは そのままにしておきたいの。そうすれば、桐子お母さんと綾音ちゃんにも 私のセリオと同じセリオができると思うの。」
 「 ・・・それで、いいかな?」
 俺は、考え込んで反応のない母娘に 聞いてみた。いるかいらないかではなく、必要か必要でないかを 俺としては聞きたい。
 「 ・・・返事は、あなたたちが帰る時まで 待ってくださいね。即答するには、迷うことが多過ぎます。」
 妥当な答えだ。俺でも、即答はできないが、いつになるか判らない返答の日を迎えたくはない。そんな、毎日苦しむことはできないからだ。
 「わかりました。でも、返事は早い方が楽になりますよ。」
 「そうね。。。娘と、よく話しておきます。
 ありがとう、浩之くん。私が、思ったような優しい方でよかったわ。」
 「だって、私が選んだ人だものっ!」
 綾香は、俺が気に入られたことが嬉しかったようだった。

***
 「 ・・・やっと横になれる。。。」
 俺は、与えられた部屋のベットに 身体を放り出した。
 長い一日だった。いままでの人生で、たぶん 一番長い一日だったんじゃないだろうか。
 ま、そんなことよりも 今は寝たい。やっと寝れるんだ。
 (後で行くから、待っててね。)
 「さっき、綾香が別れ際に言った言葉は 気になる。だが、俺は眠たいんだ。来るんだったら、鍵は開けておくから 勝手に入ってくればいいさ。」
 限界だった俺は、そのまま夢の世界へ堕ちていく・・・・・・・・・・・・
 ・
 ・
 ・

 「 ・・・・・・・・・・・・痛たたたたたっっっ!!!!!!」
 「やっと、起きた。。。」
 ゆっくりと、痛みが引いていく。
 「なにしやがんだ、綾香っ!!!」
 綾香は、俺を起こす為に 玉を握ってやがった。しかも、一気に握るんじゃなくて ジワジワと握りしめ どこで目を覚ますか楽しんでいた節がある。
 「私が、一生懸命してたっていうのに 全っ然起きないんだもの。ここだけは、起きてくれてんのにさっ!」
 「いてっ!!」
 そそり立つ俺の息子を、綾香はピンッと 指先で弾きやがったのだ。
 「乱暴に扱うなっ!」
 俺は、慌てて股間を手で覆って 次の攻撃に備えた。
 ・・・モノが濡れている。もしかして、しゃぶってたのか。。。
 「後で行くって言ったのに、寝てるんだもの。」
 「疲れてたんだから、しょうがないだろ。おまえだって、無理してこんな時間に来やがって 子供はおとなしく寝てるもんだぜ。」
 時間はわからないが、しんと静まりかえってるのからすると それなりの時間だろう。
 なのに、俺としちゃ無理矢理起こされて 気分がいいはずはない。語尾が、荒くなるのもしかたないってもんだ。
 「駆け落ちしたのに、一緒に寝られないなんて 変じゃない?
 一応、綾音ちゃんの顔を立てて 一緒に寝ることにしたんだけど、やっぱり浩之と寝たいから 抜けてきちゃった。」
 最初から、抜けてくる気だったくせに。
 「 ・・・で、なんで俺のモノをしゃぶる必要があったんだ? 布団に潜り込むだけでいいだろ?」
 「そうだけど・・・ 浩之の匂い嗅いだら・・・ 私・・・ 我慢できなくて・・・ んくっ!」
 綾香は、急に自分の身体を抱くように腕を廻すと ベットに突っ伏した。
 突然の変化に、俺は何が起こったのか 理解することが出来なかった。
 「んんっ・・・ んああっ、んあっ!」
 綾香は、身悶えして 喘ぎ声をあげだした。いつの間にか、手を股間へと持っていっている。
 「いっ、いきなりどうしたんだ 綾香!?」
 「わ、わからな・・・ い・・・ んっ、ダメッ・・・ 躰が熱いの・・・ ああっ・・・ あうぅぅぅ・・・ 。」
 演技には、思えない。とすると、薬の影響か? だとしても、なんで今頃でるんだ?
 「お願い・・・ お願いよ 浩之ぃ・・・ ふあぁっ・・・ くうっ、んぅぅ・・・ んはぁっ!」
 「大丈夫か、綾香!?」
 小さな綾香が、悶えていることが心配だった。元の綾香なら、躊躇などしない。
 「んんふぅ・・・ ダメ・・・ 指が・・・ 指が止まんない・・・ はぅぅ・・・ こんなんじゃ・・・ 物足りな・・・ い・・・ ふあぁぁっ・・・ んんっ・・・ 。」
 完全に出来上がってるのを、収めるのは無理だな。なら、俺がすることは 自然と決まってくる。
 「わかった。。。」
 俺は、小さな綾香を持ち上げると 俺と躰を入れ替えて ベットへと沈める。
 「んんっ・・・ はあっ・・・ んんふっ・・・ 」
 唇を重ねると、綾香は 待っていたかのように舌を入れて 絡めてきた。
 「んぅっ・・・ んむぅぅっ・・・ んはぁぁぁっっっ!!!!!!!!」
 綾香は、躰をビクッビクッとさせて 跳ねる。
 「舌も小さくなったみたいだが、舌使いは変わらないな。。。」
 そう言うと、少しイッた綾香のパジャマを脱がしにかかった。一気に剥がすこともできず、一つ一つボタンを外していくのが なんとなく難しい。まるで、犯罪を犯している感じが 俺の指先の動きを鈍らせているのかもしれん。
 「浩・・・之・・・ 早く・・・ 早く抱き締めて・・・ 」
 綾香の両手が、俺を求めて宙を彷徨う。
 「わかってる。」
 やっと六つのボタンを外し、上着の前をはだけると 少しだけ膨らんだ胸に、張りつめるように勃起したピンク色の乳首が 現れた。熱を帯びた躰が、汗を滲ませ パジャマをしっとりとさせている。生地が、汗で張り付き 袖から腕を抜こうにも 抜きづらい。
 「綾香、悪ぃけど自分で脱いでくれ。」
 綾香は、苦戦して頼んできた俺に しょうがないといった感じで もそもそと上着を脱ぎ始めた。
 破くわけには、いかねぇんだから 悲しそうにするなよな。
 張り付いていた上着を剥がすように脱いだ綾香は、腰を浮かべてきた。俺に、早く下も脱がせといっているんだ。
 早く脱がせてほしいくせに、両脚を摺り合わせて もじもじしている。股の部分が、濡れて 大きく染みになっているのがわかる。
 俺は、ズボンの腰のゴムに 両手を掛けた。
 綾香は、俺を助けようと 両脚の動きを止めて我慢している。
 グイッ
 俺は、ズボンと一緒にパンティも下げていった。その方が、手っ取り早いからな。
 「あぁっっっっ!!!!!!」
 俺が、手を引くと 綾香は恥ずかしそうな声を上げた。
 膝まで、一気に下げたんで 綾香の下腹部が 俺の目にパッと飛び込んできた。
 生えていない・・・・・・
 産毛程度しか生えていない、恥丘。
 赤く色づいた、秘部。
 発情して、割れ目から飛び出している 肉豆。
 パンティーと秘部を繋げるように糸を引いた、愛液。
 幼い女の部分の匂いが、俺の心を鷲づかみにする。
 「浩之ぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・ 」
 手の止まっている俺に、綾香は切なそうな声を上げる。
 腰をストッと落とし、手で秘部を隠す 綾香。俺の視線に耐えられなかったのか?
 足を上げたんで、俺はスルスルッとズボンとパンティーを 足から引き抜いていった。
 素っ裸になった綾香。
 「くうっ・・・ まだ・・・ まだなの?」
 躰を丸めて、秘部にある手を クチュクチュと音を立てて動かしている。
 「ねえっ・・・ んくぅっ・・・ んああっ・・・ 早く・・・ 私をぉぉっ・・・ あうぅぅっっっ・・・・ 」
 凶悪なまでの誘いだ。その手の趣味が、最初からあったんなら ぶち切れもんだろうな。
 だが、なんといっても 相手は綾香だ。悪いが、小さくなってるうちは 主導権は渡さないぜ。
 「どうしてほしいんだ?」
 「私の・・・ んううっ・・・ ここに、浩之のを・・・ あうんっ・・・ ほしいのよぉっっっ!!!」
 綾香は、両脚を大きく開くと 蜜で濡れた秘部を両手で開いた。包皮から飛び出ている肉豆が 真っ赤になってヒクヒクしている。
 「小さいな・・・ 。俺のモノが、入るのか?」
 俺のモノも、期待で痛いほど腫れあがり ビクビクしている。このきれいな割れ目に、俺のモノを突っ込むという残虐な行為に 興奮している。
 綾香という、俺に惚れてる少女だから 可能な行為だ。
 「わかんないよぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 」
 ツッ・・・ プッ
 「んひゃうっっっ!!!」
 俺は、人差しの第一関節までを 綾香の膣口に沈めた。きつい・・・ 処女膜も、戻ってるみたいだ。
 ズズッ・・・・・・・・・・・・
 「いっ・・・ 痛いっ・・・ んくっ・・・ でも、気持ちいぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 。」
 指を、奥へ進めて痛がるも 恍惚とした表情をする 綾香。
 綾香の膣が、指をさらに奥へと吸い込もうと 蠢くのを感じる。 「大丈・・・ 夫だっ・・・ だから・・・ んん〜っ・・・ 浩之の好きにし・・・ て・・・ 」
 俺の指を、ほとんど飲み込んだ綾香。
 膣が、すげぇ熱い。
 クイッ
 「ひゃああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
 中の指を曲げると、指先で膣壁を擦った。その刺激で、綾香は躰を弾ませて ブリッジさせる。
 「いい反応するな。」
 「うあっ・・・ 感じる・・・ 感じちゃうぅぅっっ・・・ 」
 綾香は、プチュップチュッと愛液を漏らしながら 躰をガクガクと震えさせる。
 それにしても、敏感過ぎねえか?
 「ふああっ・・・ んうっ・・・ あああっ・・・ 」
 大量の愛液で、ビチョビチョのグチョグチョになっている。
 「ああんっ・・・ 浩之・・・ イかせて・・・ 」
 俺の指に弄ばれて、絶頂を迎えようとしている。いや、絶頂の波は 何度もきているのかもしれない。
 「ああ・・・ 。」
 俺は、挿入している指を激しく動かし クリトリスをこねくり回した。
 「あうっ!・・・ ああっ・・・ んああっ!・・・ ふあああっ・・・ 」
 綾香は、指の動きに連動するかのように 喘ぎ声をあげる。小さな身体を精一杯に大きく開いて、躯全体で感じているようだ。
 それにしても、こんな大声だして 外に聞こえないか 本当に心配だ。ここの母娘の部屋とは、かなり離れているとはいえ・・・
 「ダメッ・・・ 浩之・・・ きちゃうっ、きちゃううっ、ふあああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」
 綾香は、派手にイッた。
 ヌチャッ・・・
 綾香の膣から抜いた指は、ふやけていた。俺は、指に付いた愛液を弄びつつ ビクビクッと痙攣する綾香を見据えた。
 ゴクッ
 俺は、口の中に溜まった唾を飲み込んだ。
 「勝手なことばかりで・・・ 」
 口からは、そうは言ったが 別に恨んでるわけでも呆れてるわけでもない。俺が、これからすることに対する ただの言い訳かもしれない。
 俺は、中途半端に下がっていたズボンとトランクスを完全に脱ぐと のびている綾香に迫った。
 グイッ!
 「 ・・・えっ!?」
 綾香の両足首を掴むと 足を開けるように持ち上げた。綾香は、急なことに どうしていいのか判らないようで 驚いている。
 俺の目の前に、開かれた秘部とアヌスを晒す綾香の目は 不安そうに俺を見ている。
 激しくイッたばかりの綾香は、動けないんだ。。。
 「今度は、俺も楽しませてもらうぜ。」
 俺は、凶器のような そそり立つモノを綾香に向けた。
 軽い躰の綾香を、持っている両足で引き寄せる。
 「いや・・・・・・ 」
 「綾香から誘ったんだぜ!
 それに、俺は怒ってるんだ。だから、止められねえぜ。」
 綾香を淫乱にさせていたものが切れたせいか、誘ってきた時とは 様子が違う。
 だからと言って、俺のモノを鎮める手立ては 満足させること以外にはあり得なくなっている。
 「そっ・・・ そんな・・・ なぜ?」
 「なぜだ? 今日は、綾香に振り回されっぱなしだったんだぜ。それ以外に、理由なんてないな。」
 俺は、冷めた口調で言った。
 本来の姿の綾香なら、そのことに恐怖は感じたりはしない。だが、今の姿だから どんなことになるかわからないのが 怖さを覚えるのだろう。
 「 ・・・・・・ 」
 綾香は、何も反論してこなかった。元々、俺たち二人の問題でこうなってしまったんだが 綾香は 俺に対して罪悪感を持っていたのかもしれない。だから、何も言えないのかもな。
 「んじゃ、いくぜ。」
 俺は、モノを綾香のヴァギナに当てた。
 「 ・・・ 」
 綾香は、諦めたのか そっぽを向いて 強張っていた躰の力を解いた。
 プチャッ・・・ グッ・・・
 押しつけると、綾香のそこは広がって 俺のモノを受け入れようとする。が、先だけで 小さなそこは侵入を拒む。
 「 ・・・ いっ・・・ 」
 再生した処女膜が、壁となって 小さな膣への侵入を拒み 綾香に痛みを感じさせる。
 俺は、綾香の両足を持っていた手を離し 綾香の腰に添えた。
 グイッ・・・ ググッ!
 綾香の腰に添えた手に力を込め、モノで串刺しにするかのように 手前に引きつける。
 「いっ・・・ 痛いっ!」
 綾香の秘所が、モノの形に広がり へこむ。そして、引き裂かれようとする処女膜が 悲鳴を上げている。
 グググッ!
 さらに綾香の躰を引きつけると、限界を超えて伸びきった処女膜は プチプチッと裂けていった。
 「うっ・・・ ああっ! 痛いっ・・・ 痛いぃぃぃぃっっっっ!!!!!!」
 想像以上だったのか、激しい痛みに 悲鳴をあげる綾香。
 だが、こうなった以上 引く気はない。
 グイッ!
 痛みで、躰をうねらせて俺から逃れようとする綾香を押さえつけて 躰ごとモノを押し込むと、ズプッと 亀頭くらいだったのが モノの半分ほどまで入っていった。
 「うあああぁぁぁぁぁぁ・・・ 痛いっ・・・ 痛いぃぃぃぃっっっっ!!!!!!!!!!!」
 綾香の悲痛な叫びが、部屋の中に響いた。
 「綾香、そんなに叫んでもいいのか? 綾音ちゃんとか、やって来るぜ。」
 この状況からなら、俺が一方的に非難されても しかたないだろうな。
 「ううっ・・・ 本当の・・・ 初めての時は・・・ こんなに痛くなかったのに・・・ ヒック・・・ 」
 たしかに、あの時はここまで痛がることはなかった。今の綾香では、俺のモノは大き過ぎたってことか。致し方ないことだ。
 ググゥ〜〜
 「んああっっっ!!! 痛いから・・・ 動かない・・・ で・・・ っ!」
 ゆっくりと押し込むと、少し進んだところで それ以上は入らなかった。
 「綾香、いっぱいか?」
 「 ・・・ うん・・・ うんっ・・・ くうっ・・・ ううっ・・・ 」
 俺が、行き止まりを感じ 止まったところで 痛みにジッと耐えている。
 「ふぅ〜・・・ 。」
 俺は、やっとここで気を緩めることができたと感じた。
 「 ・・・綾香、愛してるぜ。」
 俺は、涙で濡れている頬に右手を持っていき 優しくなでた。
 「う・・・ ん・・・ 私もよ・・・ 浩之・・・ 。」
 俺たちは、見つめ合い 僅かな静寂が流れた。
 「 ・・・んっ?」
 俺は、部屋の空気が動くのを感じた。それで、俺は頭を後ろに回してみると 扉が僅かに開いていた。いつの間に開いたのだろう。。。? あれでは、外に丸聞こえだったんじゃないのか?
 そう思った時、また新たな空気の流れとともに 扉の隙間から長い髪が中へと一瞬入ってきた。
 「どうしたの、浩之?」
 綾香は、気づいてないみたいだ。普段なら鋭いんだが、今はそれどころじゃない ということだ。
 「 ・・・いいや、なんでもない。」
 誰かが、俺たちを覗いているのを 綾香には教えるべきじゃないと思った。教えることで、不安を煽ることを避けたいのもある。 だが、それよりも 綾香が驚いて急激に動くことによる被害が 心配だ。ただでさえ、綾香の狭い膣内に入ってるんだから 俺にも綾香にもなにかあってからでは遅いんだ。
 それにしても、あの長い髪の毛は 誰なんだ?
 桐子さんは、セミロングだからあれ程たなびくことはないだろう。 ・・・セリオなら・・・ 心配してやって来てもおかしくないが・・・ 覗き見るようなことはしないはずだ。とすると、残るは綾音か。。。綾音なら、一緒に寝ていたはずの綾香がいないのを心配して 探しに来てもおかしくない。だからといって、俺の部屋に来るだろうか? ・・・簡単なことか。近くを通った時、外に漏れた綾香の声を聞きつけて やって来たんだろう。
 「 ・・・ねえ・・・ 動かない・・・ の?」
 「動いてほしいのか?」
 「少しは・・・ 痛みは和らいだけど・・・ ズキズキする。
 でも・・・ 浩之は・・・ 満足できないでしょ?」
 「 ・・・まあ・・・ な。」
 「変に・・・ 優しいんだね。。。
 でも・・・ ここまでしたんだから・・・ 最後まで・・・ してよ。。。」
 綾音?が覗いていることで、落ち着いた俺の心を 綾香が燃え上がらせる。
 綾音?が、見たいなら見せてやるさ。それで、綾音?が男女の愛の形を判ってくれるなら 桐子さんの想いも伝わるってもんだ。
 「そう言うおまえは、躯の疼きは治まったのかよ?」
 「 ・・・うん。判んないけど、胸のドキドキは 治まらないわ。」
 綾香は、両手を心臓の辺りに置いて 大事なモノに手を冴えるような仕草をした。
 クイッ
 俺は、少しだけ腰を引いて モノを膣内から引いた。
 「痛っ!」
 「それみろっ! 恥ずかしいこと言うくせに、我慢しやがって。。。」
 俺は、綾香の仕草が可愛らしくて 意地悪してしまっていた。
 「意地悪・・・ 。」
 「んなこと、判っていたことだろが。そらっ、動くからなっ!」
 ググッ!
 「んああっ!」
 綾香は、両手をグッと握って 走る痛みに耐えている。
 グググッ
 「うああっ・・・ くうぅ・・・ ハアハア・・・ 」
 綾香の悲鳴を、綾音?はどういう思いで聞いているのだろうか?
 綾香のことを想うなら、中へ入って来てもおかしくないと思う。
 だが、入ってこないということは 俺たちが何をしているのかは 少なからず理解しているのかもしれない。
 グププッ
 引いていた腰を、押しに転ずる。
 「くううっ・・・ うううっ・・・ 」
 ゆっくりした動きが、綾香を苦しめる。
 「綾香、速く動くぜ。」
 「う・・・ ん・・・ 。」
 グッ・・・ プ・・・ グッ・・・ プ・・・
 グップ・・・ グップ・・・
 グップ・・・ グップ・・・
 俺は、少しずつ速度を上げ 綾香を攻めたてる。
 「痛っ・・・ うあっ・・・ くううっ・・・ あうぅぅ・・・ 」
 俺の下で、小さな秘所を掻き回され 悲鳴を上げ続ける綾香。
 「痛っ・・・ いのに・・・ ジンジンする・・・ のに・・・ 苦しい・・・ のに・・・ 」
 綾香の表情が、変わってきた。
 俺のモノをきつく銜えられて、俺の快感は 高まっていく。腰から後頭部へと、背筋をゾクゾクしたものが走る。
 「はぅぅっ・・・ はああ・・・ やっああぁっ・・・ 」
 痛みだけではなく、綾香は快感も感じ始めている。こんなにも小さなあそこを、俺のモノが激しく掻き回して 傷つけてるっていうのに。。。
 グッチュ・・・ グッチュ・・・
 グッチュ・・・ グッチュ・・・
 綾香が、吹き出すように滲ませる愛液が絶えず絡みつき 滑りをよくしている。
 「ふああっ・・・ 気持ちいい・・・ 気持ちいいの・・・ 」
 綾香は、自ら腰をわずかに動かし始めた。
 「きゃううっ・・・ んくっ・・・ んああ・・・ 浩之・・・ 」
 「綾香・・・ 綾香・・・ 」
 「んっ・・・・・・ ふああっ!」
 俺は、綾香に口づけをすると 激しく吸い 離した。
 「浩之っ・・・ 私・・・ 私もおっ!」
 イクというのか? さっきまで痛がってたっていうのに・・・ 人の躰は、不思議なもんだ。
 「俺もだ、綾香っ!」
 高まる感覚に、俺も限界にきていた。きつい膣で擦られてるにしては、保った方かもしれないな。
 「きちゃううっ・・・ ふあっあっあっあああああぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!」
 「くっ・・・ 」
 ドクンッ・・・ ドクッ・・・ ドクッ・・・
 「ああっ・・・ ああっ・・・ 」
 俺は、子宮に押しつけるように突き込めると 熱くたぎったものを流し込んだ。
 久しぶりに生でしたこともあるが、射精がいつもより長く感じる。
 「熱い・・・ 子宮が火傷しちゃ・・・ う・・・・・・ 」
 綾香は、イク瞬間 腕と足で俺にしがみついて 躯全体で感じていた。
 俺も、自然に抱き締めていた。
 ・・・ ドクッ・・・
 何度も脈動を繰り返し放出していた俺のモノは、綾香の子宮を子種で満たすと 鎮まっていった。
 「ふう・・・・・・  綾香?」
 一息吐いて綾香を見ると、絡みついていた綾香の腕と足の束縛が解けていき 気を失っていたのに気づいた。
 「さて、どうするかな?」
 ズズッ・・・ こぽっ・・・
 俺は、モノを引き抜いて 綾香の処遇を考えた。膣から精液を垂れ流している綾香を、俺はどう扱ったらいいんだよ・・・ 。
 「とに・・・ 幸せそうにしやがって。。。」
 ・・・ ・・・・・・ パタパタッ・・・
 俺が、綾香の上から退くと 後ろから去っていく足音が聞こえた。綾音?が、あわてて帰っていったんだろう。あんな足音たてて、何を焦ってるんだかな。
 「綾香・・・ 俺たちのしてたこと見られてたんだぜ・・・ どうする?」
 気を失ってる綾香に、呟いた。俺に、焦りはない。それが、綾香へと呟きの声色に現れていた。
 「なあ・・ 綾香・・・・・・・・・・・・ 」
 行為が、終わったからか 急激に眠気が襲ってきた。
 力が抜ける・・・ 。
 抵抗する気力も失せていった。
 ダメだ・・・ 堕ち・・・ る・・・
 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・
 ・

 ***
 「気持ちいいね、浩之。」
 「そうだな・・・ 。」
 ブランチの後、俺たちは散歩に出ていた。
 昨日は疲れただろうって、桐子さんが気を利かせて起こしに来させなかったんで 十時頃まで寝ていた。もっと寝てれたかもしれんのに、綾香が起こしに来やがったから 寝てられなかった。
 それにしても、タフだよな。どこに、そんなエネルギーがあるんだか。。。
 「綾香・・・ 。」
 「ん?」
 「その・・・ 大丈夫・・・ なのか?」
 俺は、綾香に近づいて聞いてみた。綾音もいるが、俺を気にしてか 俺と一定の距離を取っている。
 「本当は、立っているのも辛い。。。」
 「無理して、平静を装うことないぜ。」
 顔を顰めて言う綾香に、俺は呆れた。そんな無理をする必要なんてないのに、普段と同じ振る舞いをするなんて どうかしてるぜ。
 「戻るぞっ!」
 「きゃっ!!」
 俺は、綾香を抱え上げた。
 「なにすんのよ・・・ 。」
 腕の中で、わずかな抵抗しかしない。綾音の目を気にしてるなら、抵抗して関節技を決めてくる。
 それって、照れたり恥ずかしがったりしてるのを 誤魔化しているだけなんだよな。
 それが、今はないってことは 余裕が無いってことを証明している。
 「せめて、今日くらいは大人しくしてろ。」
 「でも・・・ 綾音ちゃんが見てる。」
 「なんか、不都合でもあるのか?」
 俺と綾香が、恋人同士であることはわかっていることだ。なのに、気にすることか?
 「こんなことでも、綾音ちゃんには刺激が強いかも。それに、浩之がロリコンだと思われる。」
 そういうことか。。。
 綾香は、昨夜 綾音?が覗いていたこと知らないんだよな。綾香の乱れた姿からしたら、どうってことない行為なんだけどな。それに、こんなことくらいで動揺していたら いざって時に綾香の代理なんて務まらないぜ。
 「大丈夫だ。綾音ちゃんが、そんな娘じゃないってことぐらいわかるさ。それに、綾音ちゃんのことを一番判ってるのは綾香なんだから 心配する必要なんてないはずじゃないか。」
 「 ・・・そうだね。」
 綾香の返事は、歯切れが悪かった。
 だが、これでわかったこともある。綾香は、綾音を純な少女とみていること。綾香が、俺に何かを隠してるってことだ。
 「心配すんなって。俺は、綾香が綾香だから好きなんだって 前にもそう言っただろ? 綾音ちゃんだって、桐子さんだって、芹香先輩だって そう思ってるはずだ。」
 「 ・・・ありがと、浩之。」
 「んじゃ、戻るぞ。」
 「う・・・ ん・・・ 」
 綾香は、お姫様だっこしている俺の腕の中で 眠っていった。こんな小さな身体で無理していたんだから 疲れたんだろう。
 俺は、ゆっくりと向きを変えた。
 離れて立ち止まっていた綾音は、綾香を見て 驚いていた。
 「綾香、調子が悪かったみたいなんだ。」
 「そうなんですか。。。」
 「屋敷に戻るけど、いいかな?」
 「はい。」
 俺は、綾香を気遣って ゆっくりと歩み始めた。
 綾音も、付いてくる。綾香を心配してか、先程より幾分かは近いが それでも離れている。
 俺を見ているのか、綾香を心配しているのか 背中に綾音の視線を感じる。
 「なあ、綾音ちゃん。俺のこと、怖いか?」
 「そっ・・・ そんなことないです。。。」
 「本当か? 今なら、綾香抱いて両腕塞がってっから 近づいてきてもなんもできないぜ。」
 「そんな人だったんですか?」
 「さあな。。。
 ・・・やっと、俺と話してくれたな。」
 「あ・・・ 。」
 綾音は、真っ赤になって俯いてしまった。
 (かっ、かわいいっ!)
 綾香と同じ顔で、そんな仕草されると なにか萌えるものがある。
 俺は、どう話を続けたらいいか迷ってしまい 黙って歩みを進めるしかなかった。
 綾音も、また黙ってしまい 後を付いてくる。
 参ったなぁ。綾香がいる以上、下手な行動取れないし・・・ 
 そう考えてると、いつの間にか横に綾音が並んでいた。
 「ごめんなさい・・・ 藤田さん。」
 先に声を掛けたのは、綾音だった。
 俺のすぐ横にいる。今までにない接近だ。
 「なんで、謝るんだ?」
 「だって・・・ 」
 「俺は、何も気にしちゃいないぜ。だから、謝る必要なんて どこにもないんだけどな。」
 綾香とうり二つで、そんな可愛らしくされると 心臓が大きく波打って、腕の中の綾香に伝わってしまいそうで 怖いぜ。
 「クスッ・・・ 綾香ちゃんが言っていた通りの人なのですね。」
 「綾香が?」
 「はい。よく、藤田さんのことを話してくれました。」
 綾音は、立ち塞がっていたものがなくなったかのように 話し始めた。俺としても、話すきっかけを掴めなかったんで ありがたいと思う。
 だが、綾音は 昨夜俺の部屋を覗いていたはずだ。なのに、こんなにも早く俺に近づいてきたのは なぜだ? 俺の勘違いだとでもいうのか?
 「俺のことは、浩之って 呼び捨てにしてくれないか。その方が、俺的にはしっくりくる。」
 「それでは、私のことも綾香ちゃんと同じように 綾音って呼び捨てにしてください。」
 「ああ、わかった 綾音。」
 「はい、浩之。」
 「くっ・・・ はははっ!」
 「クス、クス。。。」
 本当は、あかるい娘だったんだな。綾香から見れば、霞んで見えるけど 芹香先輩ほど大人しくもない。普通の女の子なんだ。 ・・・あかりみたいなもんかな。
 「綾香ちゃんは・・・ ぶっきらぼうで、素っ気ないけど・・・ すごく優しい男性だと話してくれました。惚気話ばかり、聞かされていたのかもしれませんけど。」
 「羨んだりしないのか?」
 「!?意外です。浩之・・・ なら、綾香ちゃんの境遇をわかってあげていたと思っていました。
 浩之は、綾香ちゃんと駆け落ちして ここへやって来なければならなかったことを 恨んでいるのですか?」
 「それこそ、意外だ。恨むわけないだろ。俺は、綾香を守ると誓ってるんだからな。」
 「私も、そうですよ。綾香ちゃんのことは、私のこと。それが、私の役目。」
 「それって、つまらなくないか? 自分の本当の意志は、どうなんだ?」
 「それは、綾香ちゃんにも言われました。
 でも、私は自分が背負っている宿命に従ってるだけです。それが、私の意志です。」
 自分の意志は、持っている。けど、それは来栖川姉妹の影武者という 薄氷の上の存在でしかないと思う。それが無くなった時、綾音はどうするのだろう・・・ 。 
 「私は、籠の中鳥なのです。外を飛ぶことに憧れますけど、飛ぶ為の羽を持っていないのです。仮に、外にでることができたとしても 生きていく方法を知らないのです。」
 綾音は、淡々と話した。
 綾香が思っているより、ずっと自分のことをわかっている。自分の受け入れてしまった宿命に、あがらうことをあきらめていることも自覚していた。
 「寂しいな。。。」
 「慣れました。」
 そんなわけはないだろう。ただ、自分に言い聞かせてことで 堪えているに過ぎないと思う。
 
 それからの俺たちは、お互い口を閉じて 黙々と屋敷に向かった。
 綾音は、飛ぶ為の羽を どう考えてるのだろう。羽を得ても、来栖川という籠に阻まれている。だから、持つことさえ無駄だと思ってるんだろうな。
 だが、綾香が その籠を開け放ちに来た。それを、綾音が どう捉え どう行動するかは 綾音自身が決めることだ。俺たちが、促すことはできない。
 「ううん・・・ 浩之・・・ 」
 腕の中の綾香が、呟いて擦り寄った。こうしていると、まるで猫みたいだ。
 「綾香・・・ 。」
 綾香の行動は、まるで 悩んでいる俺を励ましてくれたように感じた。
 綾香は、起きているわけではない。きっと、俺の悩みが伝わってしまったんだろうな。それに反応したのかもしれない。
 そう思って綾香をみつめていると、視線を感じた。綾音が、俺をジッとみていた。
 「私・・・ 」
 綾音は、意を決したように話し始めた。
 「本当は、内気で・・・ 男の人が苦手・・・ なのです。」
 「知ってたよ。。。」
 「綾香ちゃんの代わりを務めるのだから、それではいけないと判ってはいるのですけど・・・ 」
 「俺と、こうやって話しているのも 演技ってことなのか?」
 綾音が、来栖川姉妹の代わりをするということは 演技をしているに過ぎない。俺と話すにしても、本来の自分では話すことができないんだろう。と、俺はそう思った。
 「違いますっ!」
 俺の考えは、あっさりと覆されてしまった。
 「浩之・・・ のことは、ずっと綾香ちゃんに聞いていました。綾香ちゃんは、浩之のことを いつも詳しく教えてくれました。ですから、浩之は私のことを知らなくても 私は浩之のことを知っています。」
 「そっか。。。」
 「綾香ちゃんのおかげで、こうして浩之には 話しかけることができたと思うのです。これが、綾香ちゃんと話している時の私で・・・ 」
 そこで、また綾音は黙ってしまった。
 それで、俺はやっと気づいた。綾音が、俺と話し続けることは 勇気のいることだったんだと。いくら、綾音が 俺のことを詳しく知っているといっても それで男が苦手という意識が消えたわけではない。
 なら、綾音が勇気を出してまで 俺と話したのはなぜだ?
 そこまで考えて、桐子さんの言った言葉を思い出した。
 ”あの娘、あなたに興味があるみたい。”
 それは、俺に好意があると取っていいかもしれない。
 ならば、俺と綾香の行為を見ていた綾音の心境は どうだったんだ?
 それで、綾音が綾香のようになりたくて 俺に声を掛けてきたと考えてもおかしくない。
 「綾音が、無理をするような接し方でなければ 好きにすればいいさ。綾音は、綾香じゃないんだからな。」
 「あっ・・・ は・・・ い・・・ 。」
 綾音が、俺の言ったことを判ってくれるといいと思う。それによって、綾音がどういう行動を起こそうと ちゃんと受け止めて対処してやらなければな。」

***
 俺たちが、駆け落ちして二十日が経った。
 綾香が、来栖川の屋敷を抜け出していたのを気づかれたのは 駆け落ちしてから五日後だった。よく、いつかも隠し通せたもんだぜ。芹香先輩とセリオだけの協力じゃないことは、あきらかだ。
 綾香は、両親の協力があったはずだと言っていた。だが、両親には どう説明したのか知りたいぜ。
 勿論のことだが、この屋敷にも来栖川本家から連絡はあった。来訪者は、データでチェックされてるんで 桐子さんに俺たちが来たら速やかに連絡するように言っただけだった。データを改ざんされてるとも知らずに・・・ データを過信するのは、間違いだってことがわかったぜ。
 それでも、俺たちはなるべく出歩かないように 心がけた。情報部を使って探りに来る可能性もあるからと、綾香の助言もあったからだ。
 その綾香は、薬を飲むたびにその夜は発情し 俺と情事を重ねていた。何度抱いても、最初は痛がった。俺は、綾香を 自分に主導権があるのをいいことに弄んだ。綾香は、小さい躰を使って 一生懸命尽くして応えてくれた。
 ただ、心配なことがある。長く薬を飲み続けると、身体が今のまま固定されてしまうかもしれないということだ。もう、限界にきているんじゃないかと思っている。綾香は、”大丈夫、そんなことない”って言うけど・・・ 。
 綾音にしても、そう簡単に変わるものじゃないが 俺に対しては普通に話せるようになってきた。それでも、綾香と話している時のようなことはない。異性相手では、そうはいかないんだろうな。

 「今日も、何事もなく終わった。やる事が少なくて困るんだが、逃げてる身としちゃ 大人しくしていなきゃならねえのは辛いな。。。」
 俺は、ベットの上で物思いに耽った。
 昨晩は、綾香と肌を重ねていたこともあって ゆっくりと考える時間もなかったんだ。しょっちゅう考えてちゃ身が保たないんで、普段は他の法に頭を向けている。が、一人静かにしていると いらぬ心配が思い浮かぶ。
 「駆け落ちしてる実感なんて、どっか行っちまったよなぁ。」
 緊迫感の無さが、油断を生むのはわかるが 人恋しくなってきた。街へ出たいという誘惑が、滲み出てくる。
 コンッ コンッ
 不意にドアをノックする音に、ビクッと反応しちまった。
 「浩之、寝てしまいましたか?」
 雑音のないところじゃないとわからないような声で、綾音が聞いてきた。
 綾音が来るなんて、どうしたんだ?
 「よっ・・・ と。。。」
 俺は、反動を付けてベットから起きあがると ドアに向かった。
 「何かあったのか、綾音?」
 「 ・・・ 」
 返事がないな・・・ 帰ったか?
 ガチャッ
 扉を開けると、そこには綾音が待っていた。俯いて、ジッと待っている姿は 芹香先輩と間違えそうなくらいだ。
 「綾音?」
 「 ・・・少し、お話しませんか?」
 「ああ・・・ いいぜ。」
 俺は、綾音を部屋の中へ招き通した。
 綾音は、今まで俺と二人っきりになることを なるべく避けていたような節があった。なのに、一人で俺の部屋を尋ねてきた。どういうことだ?
 「お邪魔いたします。」
 「好きなところにかけてくれ。」
 「はい。。。」
 返事をすると、綾音は迷うことなくベットに向かい 腰掛けた。
 「綾香と何かあったのか?」
 「いいえ・・・ 。」
 綾音は、首を横に振って答えた。その様子から、何か悩みでもあるのではないかとみえた。俺から聞くわけにもいくまい。
 俺は、綾音が話してくれるのを待つことにした。
 綾音が、やって来たことからすると それなりの覚悟もあったはずだが、それでも決心がつかないというのか。
 「ここで・・・ 」
 やっと口を開いた綾音を見ると、ベットの上に手を置き そこを見ていた。
 「綾香ちゃんを・・・ 。」
 やっぱり、綾音は見ていた。あの感じじゃ、綾香が話すはずもないからな。
 「ああ、抱いた。
 だが、綾音はどうして知ってるんだ? 綾香から聞いたのか?」
 「 ・・・・・・いいえ。」
 綾音は、ボソッと答えた。
 「私は・・・ 見てしまいま・・・ した。 ・・・ごめんなさい。」
 消え入りそうな声で言った綾音は、どこか悲しげだった。
 「やっぱり、覗いていたのか。」
 「はい・・・ 綾香ちゃんを捜しに来て・・・ 。」
 「気にしてないぜ。俺たちも、不用心だったんだ。だから、気に病まないでくれ。」
 「私は、羨ましいと思いました。」
 綾音は、やっと支えていた物が取れたように 話し始めた。
 「私は、あれ程羨ましいと思ったことはありませんでした。綾香ちゃんは、私に無い物をたくさん保っていますけど 羨ましく思ったことはないです。綾香ちゃんが、あなたのことを話して教えてくれても 私自身のことのようで嬉しかったのです。ですから、羨ましいと思ったことはなかったのです。」
 綾音は、心の内を話し始めた。それは、俺に何かを求めている表れでもある。綾音が、何を求めているのかわかれば 俺に何が出来るかもはっきりする。
 「私は・・・ あなたが綾香ちゃんの大切な人であることを 改めて思い知らされました。
 綾香ちゃんと同じようにあなたと接すれば、私にも 綾香ちゃんの気持ちがわかると思っていました。
 でも、それは間違いだったようです。私の内にあるものが大きくなって・・・ 苦しくって・・・ 耐えるのが辛くって・・・ 」
 綾音は、涙を流し始めた。綾音は、心に芽生えた感情が何であるか気づいてしまったんだ。それを押さえるのが限界で、俺の元へとやってきたのだろう。
 「それで、綾音は俺にどうしてほしいんだ?」
 俺は、立って話を聞いていたが 綾音の横に座ると尋ねた。答えは、わかっている。なのに、聞くのはずるいな。
 「 ・・・ ・・・ 」
 「綾音、後悔しないんだな?」
 「 ・・・はい。」
 綾音は、綾香と同じようになりたいと望んだのだ。それに応えるべきか、否かは すでに決まっていることだった。
 「浩之だから・・・ こんな気持ちになりました。他の男の方でしたら、話すこともできませんでした。こんな感情を持つことさえなかったと思います。」
 「わかった。もう、それ以上言わなくていい。」
 そう言うと、俺は綾音の唇を奪った。
 「んっ・・・ 。」
 驚いて、大きく開いた瞳。
 チュッ
 唇を重ねるだけのキスを解くと、綾音は 惹かれるように俺の唇を見続けた。
 「綾音、キスの時は 目を閉じるもんだぜ。」
 「キス・・・ これが・・・ キス・・・ 。」
 綾音は、目を逸らさずに唇に指を触れて キスしてことを確かめるように瞳を閉じた。その仕草が初々しくて、嬉しかった。綾香の時は、あいつから不意にキスされて 戸惑っただけだったんだよな。それからすると、正反対のキスになる。
 「綾音、俺のこと好きか?」
 「 ・・・はい。」
 「俺のこと、愛してるのか?」
 「はい・・・ 愛してます。」
 「本当か?」
 「私は、浩之を愛してます。迷惑・・・ ですか?」
 綾音は、不安な気持ちを表した。
 「そんなことは、思っていない。俺は、今 綾音だけをみている。」
 「あ・・・ ありがとう・・・ 浩之。でも・・・ 綾香ちゃんに・・・ 。」
 「綾香のことを考えるな。俺の問題だ。綾音は、俺だけを見てればいいんだ。」
 「あっ・・・ 。」
 今にも、いろんな想いに潰れてしまいそうな綾音を 俺は抱き締めて繋ぎ止める。
 「綾音・・・ 。」
 「浩之・・・ 。」
 俺たちは、再び唇を重ねた。
 「ん・・・ んん・・・ 。」
 唇の間から舌を差し出すと、驚いた綾音も オズオズと舌を出してきた。舌先が触れ合うことから始まり、次第にその面積を増やしていく。
 「は・・・ あ・・・ んっ・・・ 」
 舌が、触れ合うことにも 気持ちよさを感じてきているのか 甘い吐息が漏れる。
 ピチャピチャと、水っぽい音が大きくなる。
 綾音の興奮も高まり、ゆっくりと俺に腕を回してきて 抱き締めてきた。
 「!?」
 俺たちは、抱き締め合ったたまま ベットに倒れた。
 「あっ・・・ 。」
 そして、キスを解くと 寂しそうな声を漏らした。
 「心配するな。まだ、これからだ。」
 「 ・・・はい。」
 綾音は、嬉しそうな顔をして 微笑んだ。
 「んっ・・・ 。」
 三度、キスをする。そして、俺は綾音の豊かな胸に手を持っていった。
 綾音は、一瞬ビクッとするも 強く口を吸うことで 俺に身を任せたことを示してきた。
 「んっ・・・ んんっ・・・ うん・・・ 。」
 パジャマの上から揉む胸は、とても柔らかく・・・ ブラジャーをしてなかった。
 もみ・・・ もみ・・・
 胸を揉むたび、それに呼応するかのように 口を吸う綾音。
 クニュッ
 「んんっ!!」
 勃起した乳首を、布地の上から摘むと 綾音は躰から力が抜けていくようにビクンッとした後 ヘタッとなった。
 俺は、腕を立てて躰を起こすと 綾音を見下ろした。
 仰向けになっている綾音は、少しだけ呼吸を乱している。
 「綾音の全てを見せてくれ。」
 ・・・コクンッ
 綾音は、少しだけ頷いて 答えてくれた。
 拒否しないことは、わかっている。だが、初めての女性。それも、処女には 聞くのが心遣いだと思う。
 俺が、胸のボタンに手を掛けると ビクンッと反応する。
 「怖いか?」
 「 ・・・はい。
 でも、自分で・・・ 脱ぐ勇気がありません。」
 綾音は、恥ずかしそうに 顔を横に向けてしまった。
 「いいんだよ。これからすることは、飾ることのない世界なんだから。綾音が、感じるまま好きなことをしていいんだ。」
 「好き・・・ なこと?」
 「そうだ。言うなれば・・・ ”本能の赴くままに”ってことかな。」
 「本能ですか・・・ なんか、いやらしいです・・・ 。」
 「それを、これからするんだぜ。」
 「あっ・・・ そうですね。フフフッ。」
 俺との話で、初めて笑ってくれた。それだけでも、よかったと思う。
 そして、俺が再びボタンに手を掛けようとすると
 「待ってください。。。」
 と、綾音が言ってきた。
 「ん?」
 「私・・・ 自分で脱ぎます。それとも、脱がせたいのですか?」 「どうしたんだ、急に?」
 「”本能の赴くままに”ですよ。 ・・・私は、浩之に私の全てを見てもらいたいと思いました。ですから、自分で脱ぎます。」
 綾音は、にっこりと微笑んで はっきりと言った。自分のしたいことをしたいという、綾香と変わりのない強い意志の表れだった。
 俺が止めると、綾音は上半身を起こして ボタンを上から順に外し始めた。
 「えっと・・・ 見ないでもらえますか?」
 ジッと見ていた俺に、綾音は真っ赤になって言った。裸を見られるより、脱ぐ姿を見られる方が恥ずかしいというのは 一緒なんだなと思った。
 「綾音の全てを見せてくれるんだろ? 俺は、綾音の全てを見ておきたいんだ。」
 「強引・・・ ですね。いいですよ。たぶん、二度とこのような事はしないと思いますから 一生脳裏に焼き付けて置いてくださいね。」
 ボタンを全て外した綾音は、肩から滑らすように 上着をベットの上へと流し落とした。
 さらけ出された赤みを帯びた白い肌。豊かな胸。その美しさに、釘付けになっていた。
 「あの・・・ 浩之・・・ ?」
 
 何も言わずに、ジッと見ている俺に 綾音はどうリアクションしたらいいのか戸惑っている。
 「きれ・・・ 」
 「きれ?」
 「綺麗だ。。。」
 俺が、やっと口を開いて言った言葉に 綾音はさらに肌を赤くして 反応した。
 綾香とは、また違った美しさに 俺の心は奪われていった。
 「う・・・ そ・・・ 。」
 綾音は、信じられないといった顔をしている。
 「嘘を言って、どうなる。俺は、心の底から綺麗だと思った。」
 「だって・・・ だって、私の躰なんて・・・ 綾香ちゃんに比べれば 貧相だし・・・ 。」
 ? 昔や今の綾香の裸は見ていても、成長した姿は知らないはずだ。なのに、どう比べているというんだ。。。TVや雑誌の綾香と比べてるというのか?
 「綾香は、綾香。綾音は、綾音だ。俺は、綾音が綺麗だと思ったから 綺麗だと言っただけだ。
 俺の目の前に居るのは、綾香か? 違うだろ?」
 「 ・・・はい。 ・・・私は、綾音です。浩之の目の前にいるのは、綾音です。」
 「ああ、そうだ。」
 「あっ・・・ 。」
 俺は、綾音に抱きつくと ゆっくりと押し倒した。
 綾音は、俺をジッと見ていた。
 「まだ、怖いか?」
 「いいえ・・・ 。さっきよりも、ずっとあなたを感じます。ですから、怖くなどないです。
 ・・・んっ。」
 綾音は、俺の首に両腕を廻すと キスしてきた。
 「 ・・・チュッ・・・ 私から・・・ キスしてしまいました。。。」
 俺は、はにかんだ綾音を見つめた。すると、綾音も見つめ返してきた。
 「 ・・・あっ・・・ んんっ・・・ 。」
 俺は、露わになった胸に手を持っていき 直接揉んだ。ゆっくりと、その柔らかさを確認するように 優しく揉んだ。親指で、固くなった乳首を転がすように弄ると 首をすくめる綾音。
 「んっ・・・ 気持ちいい・・・ はあぁ・・・ 。」
 今度は、顎を上げ 甘い吐息を吐く。その伸びた首に、キスをする。
 もみ・・・ もみ・・・ クニックニッ・・・
 もみ・・・ もみ・・・ クニックニッ・・・
 「んくっ・・・ ふあぁ・・・ んあっ・・・ 。」
 綾指と人差し指で、乳首を摘み転がすと ビクビクッとする綾音。
 「こんな・・・ 感覚・・・ 知らなかった・・・ です。」
 「まだ、こんなもんじゃないぜ。」
 綾音は、自慰さえ知らなかったのだろうか?
 綾香の話からすると、まったく免疫がないのは判っている。
 なら、俺と綾香のSEXを覗いた時 躰はどう反応していたのだろうか。。。
 俺は、胸から手を離し 綾音の肌を滑るように腰のラインをなぞり 太股へと手を持っていった。
 腰をくねらす、綾音。
 手をゆっくりと脚の付け根、股間へと移動させる。
 綾音は、目を瞑り 俺の手の動きを探っているようだ。俺の首に廻されている腕に力が入ってるのが、緊張している証拠だ。股間に手が完全に行くと 腕にぎゅっと力が入る。
 ズボンの上から触るそこは、蒸れた感じもする。
 少しずつ中指に力を入れ、曲げていく。
 「やっ・・・・・・ 。」
 中指を曲げたり、伸ばしたりして、綾音のクリトリスがあると思われる部分を ズボンの上から愛撫する。
 綾音は、腰を引いて逃げようとするが 手を押しつけて逃がさない。
 「やっああぁっ・・・ んんっ・・・ ふぁっ・・・ 」
 指に、先程よりも湿り気を感じてくるようになると 綾音の声にも変化かが表れた。
 クイックイッと指を動かすたびに、反応が返ってくる。
 気持ちよさを感じているのだろうか、逃げていた腰が 強い刺激をを求めて 前に出てくる。
 「んぅぅっ・・・ んっ・・・ ああっ・・・ んくぅっ・・・ 」
 もう、指先にはっきりと判るくらいに 愛液が染みてくている。
 「んぁぁっ・・・ ・・・ 」
 俺は、これ以上ズボンが濡れてもよくないと思い 指の動きを止め 手を離した。
 綾音は、”なぜ止めたの?”という刹那そうな顔をしながら 両脚を摺り合わせた。
 「綾音・・・ 」
 俺は、腰のズボンのゴムに手をかけると ゆっくりと下ろしににかかった。
 綾音は、俺が何をしようとしているのか判り 協力するように腰を浮かべた。
 すぐに、指先に下着の布地が触れた。俺は、迷うことなく布地と肌の間に指先を差し込み ズボンと一緒に下げ始めた。下げながらも、手を右へ左へと動かし 腰骨や臀部をクリアーしていく。
 腕一杯まで下ろすと、足を器用に摺り合わせて 脱いでいった。
 一糸纏わぬ姿になった、綾音。
 俺は、再び綾音の股間・・・ 秘所へと手を持っていく。
 サワッと触れたアンダーヘアーの感触。感じからすると、申し訳程度のとても薄い茂みのようだ。
 「やあっ・・・ はああっ・・・ 」
 ズボンの上からしていたと同じように、中指を秘裂にはわせる。直接触っている為、的確に包皮の上からクリトリスを捉える。
 「なにっ?・・・ そこ・・・ 触られると・・・ ゾクゾクするぅっ・・・ 。」
 自分で触ったことのないのは判るとして、まったくそんな部分があることを知らないとは・・・ 性に対する知識がないのか・・・ それとも、・・・
 「ああっ・・・ ひゃうっ・・・ ふあぁっ・・・ ふあっあっ・・・ 」
 秘所は、愛液を次々と滲ませ 俺の指に絡み付いてくる。それが、潤滑液となり クリトリスを擦るのを助ける。
 閉じていた脚は、自然と開いていく。
 勃起したクリトリスは、包皮から顔を出し 指が直接触れる。
 「あああっ・・・ 駄目です・・・ おかしくなっちゃう・・・ ひゃああっ・・・ んああっ!」
 綾音は、襲い来る快感に翻弄されそうになって 大きく喘ぎ声をあげる。
 ここまで反応されると、心配になってくるぜ。
 「ハア・・・ んんっ・・・ あああぁぁっ・・・ 浩之・・・ 怖いです・・・ きゃううっ・・・ 。」
 綾音は、初めて知る快感に戸惑っている。
 「感じるんだ。俺が、傍にいるんだから 怖いことなんてないだろ?」
 「くふぅっ・・・ 私・・・ 怖くぅぅっ・・・ な・・・ い・・・ ふああっ・・・ ああっ・・・ 」
 もう、イクというのか?
 「ダ・・・ メ・・・ 頭・・・ 真っ白になっちゃう・・・ ふあっ、あああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!!」
 綾音は、ビクビクビクッとした後 躰をピンッと硬直させ 初めての絶頂を迎えた。
 性に疎くて、敏感すぎる躯。そんな綾音が、体験した絶頂に 精神はついていけたのだろうか。。。
 「綾音・・・ 。」
 絶頂を迎え、気絶してしまったのか 綾音はくったりとしていた。
 目が覚めた時、綾音はどんな反応をするんだろう・・・ 。
 「なあ、綾音・・・ これでよかったのか?・・・ 。」
 「まだ・・・ ですよね?」
 「気絶しなかったのか?」
 「ハア・・・ 頭の中で火花が散るみたいになって・・・ 真っ白になって・・・ 。」
 「で、どうだった?」
 「とても・・・ 気持ちよかったです。。。」
 綾音は、恥ずかしそうに答えた。
 「綾音・・・ もう、止めないか?」
 「ど・・・ どうしてですか? まだ、私・・・ 浩之を受け入れてないです。」
 俺が言った途端に、悲しい顔をする綾音。
 「綾音を受け入れてやるって言ったけど、最後までしちまったら しないよりももっと悲しませることになると思うんだ。」
 「そんなこと・・・ わかりません。。。」
 「俺は、綾音が悩み苦しんで暮らしていくのを 見たくないんだ。。。」
 「どうして・・・ どうして、そのようなことを言うのですか?
 私は、後悔したくないです。。。」
 綾音は、現在をみている。が、俺よりは未来をみいている。
 「俺は、将来どんなことをしてでも 綾香と添い遂げるつもりだ。そうなれば、綾音が俺をどんなに想っても 結ばれることはない。」
 俺は、綾音も好きだ。だが、それ故にこれ以上綾音を傷つけることはしたくなかった。
 「 ・・・わかって・・・ ます。それでも、私はかまわないと思いました。」
 綾音は、深く考えての行動だったのだ。押さえきれない感情をぶつけてきただけじゃなかったんだ。
 「私は、・・・ 綾香ちゃんのように私をみてほしいとは言いません。だけど、私を忘れてほしくはありません。」
 「綾音・・・ 。」
 「あなたの想い出だけで生きていけるくらい、浩之のことを刻みつけておきたいのです。あての無い寂しさよりは、いいと思います。」
 「それで、苦しまないと思っているのか?」
 苦しまないわけがない。わかっているのに、綾音を更に苦しませる事はできない。
 「浩之に・・・ 浩之と何もできなくて・・・ 悲しみ暮れるよりは いいと思います。」
 「 ・・・ 」
 綾音の言うことは、もっともだ。引けないところまで来ているのに、俺は綾音の想いから逃げようとしていただけだった。
 「ですから・・・ 私は・・・ 止めません・・・ 帰れません。」
 「 ・・・バカだよ・・・ 綾音は。。。」
 「はい・・・ バカです。」
 綾音は、涙を浮かべていた。俺が、拒んだ事に対してか 想い亜が伝わったからなのか わからない。
 俺は、汚れていない指で その涙を拭った。
 綾香は、籠の入り口を開けに来た。なら、俺は羽を与えよう。心の支えという羽を使い、綾音は飛び立てばいいんだ。飛び立つ勇気を、綾音は持ち始めている。あとは、誰かが背中を押してやればいい。
 「綾音・・・ 。」
 俺は、ギュッと綾音を抱き締めた。
 「浩之・・・ 私に・・・ 力をください。。。」
 綾音は、俺の胸に顔を埋めて 呟いた。
 綾音の言葉が、香りが、体温が、萎えていた俺を震え立たせる。臨戦態勢になっていく。
 俺は、寝ころびながら 寝間着のズボンにしてた半ズボンを 片手で下ろしにかかった。
 それに気づいた綾音は、
 「向こう向いてますから、その間に・・・ 。」
 と、言ってくれた。
 「悪ぃな。」
 俺は、綾音から離れると ベットに腰掛けた体勢になり Tシャツとズボン・トランクスを脱いだ。
 綾音は、俺と反対方向を向いて ジッとしている。
 俺のモノは、完全に勃起し 準備OKだ。
 「綾音。。。」
 肩に手を掛けると、ビクッとして首をすぼめた。そして、頭をゆっくりとこちらに廻してきた。目が、上から下 下から動き俺の姿を確認する。
 「浩・・・ 之。。。」
 裸になった俺を見て、恥ずかしがる綾音。
 「綾音、最後にもう一度だけ聞く。本当にいいんだな?」
 「はい。」
 綾音の返事を聞き、綾音を仰向けにし、俺は覆い被さるような体勢を作った。
 俺と綾音は、見つめ合い お互いの瞳の奥の気持ちを確かめ合った。曇りのない真っ直ぐな瞳に、綾音の求めるものの強さを知った。
 俺は、上体を起こし 閉じている綾音の両脚の間に 手を差し込んだ。脚を開くように腕に力を入れると、従うように広がっていく。綾音の脚と入れ替わるように、俺の脚を入れる。
 綾音は、両手を胸の前で固く握っている。
 綾音の脚の間に入った俺は、ゆっくりと躰を前に倒し 俺のモノが綾音の秘所に触れたところで止めた。
 「綾音、いくぜ。」
 コクッ
 握っている両手が、ギュッと強く握られるのがわかる。
 綾音は、脚を広げているだけで 膝を立てていないから このままじゃ挿入は窮屈だ。
 俺は、また上体を起こし 両手を綾音の脚の下に添えて 膝を軽く立たせた。
 閉じていた秘所が、ヌチュッといた感じで 開く。
 真っ赤に熟した果実を、今まさに食べようとしているのかの如く 体勢を整え 狙いを定める。
 モノを膣口に当てると、綾音は目をギュッと瞑る。
 俺は、腰を少しずつ前へ進めると 膣口は押されて窪み・・・ 愛液で滑るようにモノの形に添って 広がった。
 「ヒッ!」
 息を飲む声を上げる、綾音。
 「イッ・・・ イタッ・・・ くうっ・・・ !」
 すぐに、処女膜が抵抗を始め 綾音に痛さをもたらす。
 綾音は、握っていた両手を解き 左右に腕を広げ シーツを掴んだ。俺が、圧力を強めると シーツを強く握り締め 耐える綾音。
 ググ・・・ グググ・・・ ブツンッ!
 ズニュウッ!
 「いったあああぁぁぁぁぁぁいっっっ!!!!!」
 とうとう、圧力に耐えられなくなった処女膜は 弾け散り モノの侵入を許した。と同時に、綾音は破瓜の叫び声をあげる。
 そんなことにも構わず、傷口を擦りあげながら 奥を目指し進む。
 「痛い・・・ 痛い・・・ 浩之・・・ ヒック・・・ あぐぅっ・・・ !」
 ペニスの先が、子宮口に到達したことで 動きを止めた。だからといって、痛みが止まるわけではないが 綾音にとっては 息をつける瞬間だ。
 「綾音・・・ 奥まで入ったぜ。」
 「とっても、痛い・・・ です 浩之。。。こんなに痛いなんて・・・ 」
 破瓜の痛みは、綾音にとって 今までに感じたことのないものであったのか 、その痛がりようは 綾香の比ではない。
 「まだだ。」
 「ひやぁっ!!」
 俺は、両手を綾音の両脇の横に持っていき ゆっくりと腰を引いて綾音の中からモノを引き抜く動きをすると また綾音は大きな声をあげた。
 それと合わせるように、シーツを掴んでいた両手を俺の躰に廻し 俺を動けなくしようとする。
 「お・・・ 願い・・・動か・・・ ないで・・・ んんぁっ!」
 「綾音、俺に全てを委ねろ!」
 俺の言葉に、顰めていた顔をわずかに緩め 俺の顔を見てきた。
 「綾音は、少女から大人の女性になったんだ。嬉しくないのか?」
 抜ける寸前まできたところで動きを止め、返事を待った。
 「 ・・・嬉しいです。」
 痛みを紛らわす為、息は荒いが はっきりと答えた。
 綾音が、嬉しくないはずはない。望んでいたものを、手に入れつつあるのだから。
 「綾音は、俺との幸せを手に入れたんだ。忘れるなよ。」
 「浩之と私の幸せ・・・ 。」
 綾音の顔が、綻んだように見えた。綾音にとって、実感できる幸せを得たことは 何よりも嬉しいことなのだったのだろう。
 グッ!
 俺は、再び腰を押した。
 「んっ・・・ ああっ・・・ くううっ・・・ 浩之・・・ 好きっ! 好きよっ!!」
 「俺もだ、綾音。」
 痛みの捉え方を変えただけで、綾音の感じが変わった。
 ヌヌヌヌ・・・ グググッグッ・・・
 ヌヌヌヌ・・・ グググッグッ・・・
 「んううっ・・・ んああ・・・ んんふぅ〜・・・ 」
 クッチュクッチュ・・・ ヂュップヂュップ・・・
 クッチュクッチュ・・・ ヂュップヂュップ・・・
 綾音の肌・・・ 身体中に玉の汗を滲ませている。
 愛液が、どんどん また滲み出て 摩擦を軽減させていた。それは、綾音の自己防衛なのか 感情の高まりなのかは わからない。だが、おかげで 動きがスムーズになって俺の快感も高まるし、 なにより 痛さが弛まるだろう。
 「んくぅぅっ・・・ 浩之・・・ 痛いけど、ゾクゾクする・・・ 変です・・・ 。」
 ヂュップ ヂュップ
 ヂュップ ヂュップ
 もう、堪えるだけの痛みだけではなくなってきた感じだ。たまに、俺のモノをキュッキュッと搾るような動きもある。
 「綾音・・・ 綾音・・・ 」
 「ふあぁっ・・・ 痛いのに・・・ 気持ちいいなんて・・・ 変・・・ あああっ〜・・・ 」
 痛みよりも、快感を得始めているのが不安なのか 綾音はギュッと抱き締めてきた。俺の耳のすぐ傍で、喘ぎ声を出し始めている。
 「んあっ・・・ あぁっ・・・ あっ・・・ あぅぅぅ・・・ 」
 ズップ ズップ ズップ
 ズップ ズップ ズップ
 「はああっ・・・ 綾音の中、すげえ気持ちいいぜっ!」
 「浩之のが擦れると、ゾクゾクするぅぅぅっっっっ!!!!」
 もう、綾音は 心地よさの中にいる。初めて知る母親以外での愛の中に、身を横たえているのだ。
 異性と肌を重ねる精神安らぎを、感じてもいる。まだ、俺と綾香のような 何度も肌を重ねあった者同士の一体感は 少しもない。
 「あっあっ・・・ あああっ・・・ んんんっ・・・ 」
 心地よい摩擦感が、俺と綾音を高く浮き上がらせていく。
 俺たちは、本当の恋人のようになっていた。
 奥深く挿入しても苦しまず、反対に 綾音は深く受け入れて 俺のモノをもっと感じようとしている。
 リズミカルな動きが、ドンドンドンドン 俺たちを遙かな高みへと 登らせていく。
 「浩之・・・ ふあぁぁ・・・ また・・・ おかしくなっちゃうぅぅっっ・・・ 」
 「俺も、イキそうだ!」
 「お願いです・・・ 私にも・・・ 綾香ちゃんと同じように・・・ あああぁぁぁ!!!」
 綾音は、膣内に射精される意味を判って言ってるのかと 俺は疑った。ただ、全てにおいて 綾香と同じように扱ってほしいと願っているだけだと思う。純粋な想いの綾音に対し、俺は・・・
 「イクぞ・・・ んっくうっ!!!!!」
 ドプッ!!!
 俺は、腰を密着させ モノを一番奥まで突き立て 子宮の中へと子種を注ぎ込んだ。
 「ふあっあっあああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 熱い迸りを初めて体内に受け、綾音も達してしまった。両脚を俺に絡め、全身で俺に抱きついていた。
 ビュクッビュクッと、溜まっていた精液を 全て注ぎ込む感じもする。
 「はあ・・・ あ、熱い・・・ 熱いです 浩之・・・ 。」
 綾音のあそこは、俺のモノを搾り 吸い込むように何度も何度も収縮を繰り返していた。
 そして、俺の脈動が終わると 綾音は俺を拘束していた手足を緩めていった。
 ズズ・・・ コポッ・・・
 俺が、モノを膣内から抜くと つられるように子宮を満たしている精液が 膣口へと逆流し 溢れ出した。
 「やっ・・・ あぁ・・・ 」
 膣内から溢れ出す液体に、恥ずかしがる綾音。
 「はあ・・・ はあ・・・ 」
 俺は、綾音の横へと突っ伏した。いろいろと頭の中を、ごちゃごちゃと考えが乱れ飛んだが どうでもよかった。今は、綾音のことだけを見ていたかった。
 カチャ・・・ ギィィィ〜〜〜
 「終わったのね。。。」
 扉が開き、誰かが入ってきた。そして、迷うことなく俺たちの方へとやって来る。
 俺は、綾香だと判ったが、綾音は 驚きですぐには判らなかったみたいだ。
 「あ〜あ、こんなに膣内に出しちゃって・・・ ハア・・・ 。」
 綾音の秘所から流れる精液を見て、綾香は溜息を吐いた。
 「綾香、いつから居たんだ?」
 うつ伏せになったまま、俺は言った。
 綾音は、やっと脚を閉じて 綾香の目線から逃れようとした。
 「いつだっていいじゃない。。。
 綾音ちゃん、よかったね。」
 「怒らないのかよ。。。」
 「いつか、こうなる事は判ってたしね。私も、望んでいたことだから 怒れないわ。」
 綾香の真意は判らないが、これで良かったということか。
 「まあ・・・ こんなに中出しするとは思わなかったけど・・・ ね!」
 やっぱり怒ってるぜ。。。
 「綾音ちゃん、赤ちゃんできたらどうするの? それでも、私は浩之を渡したりしないよ。」
 「赤・・・ ちゃん?」
 俺は、この場を逃げ出したくなった。
 「心配しないでください。もし、赤ちゃんが出来ても 浩之に責任を求めたりしません。私は、思い出をもらいました。それが、形となっても 私は・・・ 」
 「そっか・・・ 浩之にもらったんだ。」
 綾香は、悟ったように呟いた。
 それは、何を与えようとして綾音を抱いたかということに 気づいたように取れた。
 「ごめんなさい、綾香ちゃん・・・ 。」
 「いいのよ、私としても、浩之と仲良くしてもらわないと困るしね。
 それで、綾音は これからどうしたい?」
 それは、俺も聞きたいことだ。俺が与えようとしたものを受け取ってくれたのか 教えてほしいぜ。
 「私は・・・ 今までのここでの生活を・・・ 変えることはできません。」
 「どうして?」
 「綾香ちゃんや芹香お姉さんの緊急時の代理役としての仕事が、私にはあります。だから、変えられないと思って・・・ いました。
 だけど、浩之から 何かを一杯もらった感じがして・・・ 変えてしまったら、耐えられなくなると思います。」
 綾音は、俺が与えたものを 受け取っていた。だが、それで羽ばたき 飛び立つのを戸惑っている。
 「変える必要もないし、耐える必要もないわ。」
 「どういうこと・・・ 綾香ちゃん?」
 「私の影武者役だからといって、ここだけにいることはないのよ。私と一緒に暮らしてもいいし、私たちが ここにしょっちゅう来ればいいだけのこと。そうすれば、私の変わりとして いろんな所へと出かけることもできるわ。私と綾音が、入れ替わってしまえばいいだけのこと。入れ替わってることが、ばれない為にも 強力なパートナーが必要だけどね。」
 それが、俺のことを言ってるのは 判っている。
 俺は、起きあがると綾香の方を向いた。
 「そうだな。綾香と綾音を守ってやる奴がいれば、できないことじゃないな。」
 「いいのですか?」
 「私や浩之が、綾音を誘っているのよ。綾音の気持ち次第なの。。。」
 差し伸べた手を掴むか・・・ 開かれた扉から飛び立つか・・・ 決断の時だ。
 「私は、・・・ 少しでも多く 浩之と一緒に居たい・・・ 綾香ちゃんと居たい。いろんな所へ行って、一緒に遊んだり 楽しんだりしたい・・・ 。」
 綾音は、押さえていた想いを解き放った。
 「OK。決まりだな。」
 「うん。これからもよろしくね。
 ということで、お邪魔するわよ。」
 綾香は、ババッとパジャマと下着を脱ぐと ベットに上がってきた。
 「おいっ、今日はもう抱かないぜ。」
 「わかってるわよ。今日は、三人で寝ましょ・・・ ダメ?」
 拒否できるわけがない。綾香と綾音の二人が、ジッと俺を見ているのだ
 「わかった。わかった。」
 「ありがと、浩之。
 ・・・はい、綾音ちゃん。拭かないとダメよ。」
 綾香は、ティッシュを取って 綾音に渡した。綾音は、すごく恥ずかしそうに受け取った。テッシュをあそこに当て、拭いているが 二枚くらいじゃ足りないようだ。
 「 ・・・汚れ、落としてきます。。。」
 そう言って、綾音はベットから降りると 部屋に備え付けられているシャワールームへと向かった。膣内から漏れてくるのを押さえているのか、ちょっとぎこちない歩き方をしている。
 「待ってるから、ゆっくりしてもいいぜ。」
 「はい・・・ 。」
 パタパタ・・・ キィッ・・・ パタン
 綾音が入ると、すぐにシャワーの水の音がし出した。
 「浩之には、負担かけちゃうね。でも、美人二人を好きにできるんだからいいよね。」
 綾音は、そう言って俺に寄りかかってきた。
 「ここに来ようと思った時から、こうなることを予想していたんじゃないのか?」
 「綾音が、浩之に好意を持ってるのは なんとなく気づいてたし・・・ 同性私じゃできないことを、浩之ならやってくれると思ったし。」
 俺と駆け落ちして逃げることも、利用したということか。
 「綾香は、あれで良かったと思ってるってことか。 ・・・だが、それで俺が綾音を選んだら どうするつもりだったんだ?」
 「綾音と立場が変わっただけよ。私と綾音は、一心同体みたいなもの。浩之が、綾音を選んだとしても 私は浩之を忘れられない。あきらめられない。浩之への想いだけで、生きていくかもね。」
 なんか、双子に惚れられた感じだ。
 「死ぬまで、二人とは離れられないってことか。。。」
 「そういうこと!」
 二人が、協力し合うなら 俺に異論はないが、周りの問題がある。特に、桐子さんにどう言えばいいんだ。。。
 一人娘の綾音が、俺の愛人のような立場では よく思わないのはもちろんだが、誰よりも幸せになってほしいと 願っているに違いない。それを壊す俺を、許すわけはないだろう。
 「いろいろ問題はあるけど、桐子お母さんのことは 私たちでなんとかするから。浩之は、分け隔て無く愛してくれればいいよ。」
 「 ・・・俺が、なんとかするぜ。綾香たちに任せてばかりじゃ、俺は情け無い男でしかないからな。俺が、守ると言ったからには 任せてくれよ。」
 「頼もしいわね。」
 「ダメか?」
 「ううん・・・ 嬉しいわ、浩之。」
 綾香は、俺にギュッと抱きついた。その綾香の頭を撫でると、俺も綾香も落ち着けた。
 「なあ、もう 薬・・・ 飲むなよな。」
 「うん・・・ わかった。」
 カチャッ・・・
 汚れを落とした綾音が、シャワールームから出てきた。そして、俺たちがくっついているのを見ると パタパタと小走りにやって来た。
 「おかえり、綾音。」
 俺は、手を差し伸べた。すると、綾音は飛び込むように 抱きついてきた。
 「きゃっ!」
 反動に驚いた綾香が、声を上げた。
 「どうしたんだ、綾音?」
 「私の居場所が無いのかもと、心配になりました。」
 「そんなわけあるかよ。。。」
 美女二人に裸で抱きつかれている俺は、世界一の幸せ者だろうな。
 「綾音・・・ 。」
 綾香は、綾音の手に手を重ねた。
 「綾香ちゃん・・・ 。」
 俺は、二人の肩を抱いた。より一層、肌が密着し お互いの存在を感じる。
 そして、俺たちは ジッと抱き合ったまま時間を過ごしていった・・・・・・ 。


***
 枯れ葉が散り始めた頃、俺たちは決着を付けるべく 来栖川本家へ乗り込むことにした。四ヶ月あまりの逃亡生活に、決着を付けることにしたのだ。
 綾香は、あの時以来 薬を飲むのを止め 元の姿に戻って暮らしていた。服とかは、綾音と共用していたが ちょっと足りなく、綾音の振りをして セリオと買い物に出たりしていた。それでも、バレることも みつかることもなかった。その代わりと言っちゃなんだが、俺は外出することはなかった。俺自体、ここではヨソ者として目立つからだ。
 おかげで、本を読む時間が多くて ちっとは知識を蓄えられたって感じもするぜ。
 綾音は、結局 妊娠はしなかった。あの後、数日で生理が来たからだった。綾音は、残念がったけど 俺はホッとした。そして、性に対しての知識を 俺と綾香で教えた。インターネットや直接指導で、綾香と同等以上のHな女の子になってしまったような気もする。
 どこで仕入れてきたのか、お尻の穴でのSEXやSMを求めてきたりした。特に、お尻は 綾香より先に体験するんだって 聞かなかった。綾香も同席するということで、綾音のお尻の処女喪失となったわけだが 綾香が我慢できず そのまますぐ体験となっちまって、次の日 三人共ダウンしてたっけ。
 桐子さんへの告白は、心苦しいものがあった。
 二人のことを聞いても、俺を非難はしなかった。
 かえって、同情されたくらいだ。
 流石、二人の母親というだけのことはあって 綾香と綾音の性格をよく判っていた。
 だが、後で綾音に聞いたところによると 綾音は桐子さんに関係を話していた。”愛しているなら、どんなことがあっても離れないようにっ!”と 逆に励まされたそうだ。

 「明日は、いつ頃出発するのですか?」
 「急ぐわけでもないので、十時過ぎと考えてます。」
 「寂しくなるわね。。。」
 桐子さんは、本当に寂しそうにしていた。ずっと賑やかに過ごしてきたのが、なくなるのだから 俺だってそうなるだろう。
 今回、亜やるは連れて行けない。その点で、寂しい想いを二人にさせてしまうことになる。
 「クリスマスまでには、戻ってきます。」
 それは、綾香のせめてもの希望だ。戻ってこれる保証はないのだ。
 「私のことはいいから、ちゃんと綾音を迎えに来てくださいね 浩之さん。」
 「はい。」
 俺は、はっきりと返事をした。それは、誓約のようなものと 俺は考えていた。
 「浩之、お待ちしております。」
 「おいおい、出発は明日なんだから 今から言うなよ。」
 「でも・・・ 。」
 「大丈夫だって。俺も、綾香も、綾音が大好きなんだから 必ず迎えに戻ってくる。」
 離れることが、不安なのだろう。事ある毎に”待ってます”と言うのは、その表れだな。
 「熱々なのはいいけど、私の居場所が無くて困るわ。。。」
 桐子さんは、ちょっと戯けて言った。
 「すみません。。。」
 「いいのよ・・・ 慣れたわ。
 さて、私はもう寝るわね。綾音、別れを惜しんで 浩之さんを夜更かしさせないようにね。
 では、おやすみなさい。」
 「おやすみなさい。」×3
 桐子さんは、セリオを従えて 自室へ戻っていった。ちゃんと、綾音に釘を刺して。
 「俺たちも、寝ようぜ。」
 俺が、スッと立ち上がると 綾音は慌てて 俺の袖を掴んできた。
 「一緒に寝ても・・・ いいですか?」
 「 ・・・ああ。但し、三人でな。」
 「そうだね。一緒に寝ましょ、綾音。」
 「はい。。。」
 綾音は、立ち上がると すかさず俺の腕に腕を絡めてきた。そして、綾香が反対の腕に。自然と、俺たちは固まって部屋へ向かうことになった。
 「綾音の甘えん坊!」
 「綾香ちゃんこそ。。。」
 「んじゃ、行こうぜ。」

***
 「それでは、行ってきます 桐子お母さん。」
 「がんばってね、綾香ちゃん、浩之さん。」
 桐子さんは、俺たちが来た時と同じように 屋敷の玄関の外まで出て 見送ってくれた。
 「お世話になりました。」
 「他人行儀はいいのよ。本当の息子のように思ってますからね。」
 「はいっ。」
 桐子さんは、最後まで俺たちを優しく見守ってくれた。俺は、そのことをずっと忘れないぜ。
 「セリオ、二人のこと頼んだからね。」
 「はい、綾香さま。」
 結局、すぐ戻ってくるつもりで あのセリオはそのままにしておくことにしたのだ。元に戻さなくても、差し障りがないのと 桐子さんが気に入ってしまったからだ。なんでも、もっと人間らしさを覚えさせるんだと はりきってるとのこと。
 「浩之・・・ 。」
 綾音は、桐子さんの後ろに隠れて 前に出て来ようとはしない。これも、ここへ来た時とそっくりだ。
 「困った娘ね・・・ セリオさん、あれを持ってきて。」
 「はい、奥様。」
 セリオは、屋敷の中へ戻ると すぐに小さなカバンを持って戻ってきた。それを、セリオから受け取ると 桐子さんは綾音に手渡した。
 「お母さん、これは?」
 「浩之さんと一緒にいってらっしゃい。」
 「でも・・・ 。」
 「浩之さん、綾音をよろしくお願いします。」
 「 ・・・わかりました。綾音、一緒に行こう!」
 「いいのですか?」
 綾音は、俺でなく 桐子さんに聞いた。母親を、まだ一人にはできないという想いからだろう。
 「私は、行きなさいと言いましたよ。後は、あなたが決めることです。」
 「ありがとうございます!」
 綾音は、駆けて 俺に飛び込んできた。
 「このまま、ここに居ては つぼみを開かせることはできません。今が、咲く時だと思っただけですよ。」
 桐子さんは、綾音の背中を押してくれた。
 クリスマスまでには、戻ってこれる保証は どこにもなかったことを 桐子さんは気づいていたのだろう。
 「浩之さん、何度もお願いするようで悪いと思いますけど 娘のことよろしくお願いしますね。」
 「はい、任せておいてください。」
 俺は、胸を張って応えた。
 「安心しました。それでは、いってらっしゃい。」
 桐子さんは、微笑んで手を振った。
 「行ってきます。」×3
 俺たちは、強い決意を持って応え 踵を返した。
 そして、俺たちは俺たちの花を咲かす一歩を歩み始めた。

                         END

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