「ヒ・ロ・ユ・キ・!」
 授業も終わり、下駄箱で靴を履き替えていると レミィに声をかけられた。いつもと違った、ちょっと鼻にかかった声でだ。
 「どうしたんだ、レミィ?」
 俺は応えると、もじもじしている。前にも見たことのある姿だが、初々しく感じる。
 「あのネ・・・ 明後日、暇かナ?」
 「明後日って・・・ 日曜日か。そうだな・・・ 」
 俺は、何か用事があるのか 考えてみた。掃除とかは・・・ マルチがやってくれるから することがない。いつもは・・・ ここんとこ、あの館に入り浸ってるじゃんか。外に出るでもなし・・・ 土曜の晩から ずっと裸で彼女たちと過ごしている。
 「どうなノ?」
 「いまんとこは、予定ないようなものかな。」
 「Really?」
 「予定ないはずだぜ。」
 「ホントに、ホント?」
 「ああ。」
 パァッと、雲の隙間から顔を覗かせた太陽のような笑顔を レミィは見せた。
 「大好きだヨ、ヒロユキ!」
 レミィは、自分の感情のままに 俺に抱きついてきた。
 「おいおい、公衆の面前で 恥ずかしいな。」
 「ワタシのこと、嫌いなノ?」
 「そうは、言ってないだろ。」
 「なら、いいじゃなイ。ワタシたち 恋人同士なんだよネ。」
 そう言ったレミィに、俺は どう答えたらいいのか 戸惑っていた。
 「ヒロユキ?」
 「ああ。ところで、日曜に何があるんだ?」
 「アレ? 言ってなかっタ? 弓道の試合があるんだヨ。だから・・・ ヒロユキに応援してほしくっテ。キャッ!」
 レミィは、真っ赤になって はにかんでいる。
 まわりでは、俺達を興味津々で見ている輩がいる。
 「わかった。わかった。で、スケジュールは、どうなってるんだ?」
 「ウン。午前中に予選があって・・・ 午後から決勝だヨ。」
 「そっか。午後からなら、なんとか行けそうだけどな。」
 「来てくれるノ?」
 「ああ。だけど、午後からだかんな。絶対に、予選通れよ。」
 「ウン。がんばるヨ。だから、絶対に来てネ。」
 「ああ、約束するぜ。」
 俺は、ここしばらくなかった感じに 満足だった。
 彼女ら・・・ 俺を愛してくれる彼女らと過ごす時間が、不満なのではないが 満足しているわけでもない。俺と彼女らは、お互いに足りないものを求めていると思える。彼女ら一人一人は、求めているものを得ているのだろうか。俺は、何を求めているのだろうか・・・ 。
 「それ聞いて、ワタシ安心したヨ。だって・・・ 最近、ヒロユキとすれ違ってばかりだったかラ。」
 レミィは、うっすらと涙を浮かべていた。
 まわりのギャラリーも、増える一方だ。たく、まいったぜ。
 「悪かった。俺が、悪かったから。」
 「ううん。ヒロユキは、悪くないヨ。ワタシも、忙しかったから しかたなかったんだヨ。こんなことでしか、話せないくらいにネ。だから、本当に嬉しかったんだヨ。」
 「レミィ・・・ 」
 「がんばるからネ。約束したからネ。」
 「ああ。」
 「じゃあ、ワタシ 部活行くから・・・ きっと来てネ、ヒロユキ!」
 レミィも、まわりのギャラリーを気にしたのか あわてて行こうとする。
 「ちょっと待て、レミィ!」
 俺は、あわててレミィの腕をつかんだ。
 「どうしたノ、ヒロユキ?」
 「会場がどこだか、聞いてないぜ。」
 「あっ! おっちょこちょいだネ、ワタシ。」
 「まあな。」
 「ンッとね・・・ たしか、東鳩記念公園競技場だヨ。」
 「あそこか。わかったぜ。」
 「ウン。がんばって、練習してくるヨ。」
 また、あわてて人垣をかき分けるように 行ってしまった。
 ギャラリーが、俺達を取り囲んでいたのだ。
 ただでさえ目立つレミィが、あんな表情するから 気になった輩が多かったんだろうけどな。場所を移すとかすればよかったな。
 レミィがいなくなって、集まっていたやつらが 散っていく。
 「さて・・・ 帰るか。」

 「お待たせしました。」
 俺は、スーパーの外で 琴音ちゃんを待っていた。
 「どうしたんや、藤田くん。」
 委員長も、待っていたのだ。二人で、夕食の買い物をしてきたのだった。
 「ん? なんともないぜ。さ、行こうか。」
 「あっ、はい。」
 さっさと歩き出した俺を、琴音ちゃんは慌てて追いかけてきた。
 「気いつけや、姫川さん。」
 委員長は、平然と俺の横を歩いている。
 今日は、二人して夕食を作ってくれるのだ。明日は、土曜日で学校は休み。
 こんなところを知り合いに見られるのは、恥ずかしいぜ。
 「今夜は、期待してや。」
 「いつも、期待してるのになぁ。」
 「ありがとうございます。」
 二人が買い物袋を持ち、俺が3人分の鞄を持つ。
 「少し、量が多くないか?」
 「そんなことは、あらへんよ。保存のきくもんもあるから、こんな量になってまったけど。それに、明日の朝御飯の分もあるし。」
 委員長は、嬉しそうな顔で 俺に言った。
 「悪ぃな。気ぃ使わせちまって。」
 「そんなことないです。好きで、私たちはやっているのですし。
 でも・・・ 本当は、一日中でも一緒にいてお世話したいです。まだ、保護者のいる身ですから 我慢してます。
 だから、与えられた時間を大切にしていきたい。藤田さんのことに気を使うのは、当然 私たちの為でもあるのですから。」
 そう言った琴音ちゃんの表情は、自身に溢れていた。
 俺が、琴音ちゃんに与えた物って そんなにも大きなものだったのかな? そんな表情が、できるほどのものだったのだろうか。。。
 「普段、マルチが世話をしてくれるって言っても 料理はまだまだなんとちゃうの?」
 「そうだなぁ、凝った物はないな。」
 マルチは、煮物とか 複雑な料理は まだ無理だもんな。
 「せやろ。」
 にっこりと微笑む、委員長。
 「いい顔するようになったな、委員長。」
 「えっ!? いややは、藤田くん。」
 真っ赤になって、委員長はうつむいてしまった。
 「ねぇ、藤田さん。その・・・ レミィさんって、藤田さんの何なんですか?」
 少しの間黙っていた琴音ちゃんは、俺を試すように 言葉を吐いた。
 「 ・・・ただのクラスメートじゃ、ダメかな?」
 「誤魔化さないでください。私、本気なんですから。」
 琴音ちゃんは、俺の返答に静かに怒っていた。
 「悪ぃ。」
 やっぱし、本当のことを話さないと 納得してくれないんだろうな。
 「廊下で、二人が抱き合っているのを見たって言う人が 何人もおったな。人の話やから、うちは気にせえへんかったんやけど あれ 本当なんとちゃうの?」
 二人は、俺に本当のことを求めて ジッと俺を見ている。
 「はぁ・・・ わかった。わかったよ。本当のことを話すから、勘弁してくれ。」
 俺の行いとは言え、女の子を悲しませてばっかりいるな。
 「そうだな・・・ 夕飯の後に、詳しく話す。だから、ちゃんと作ってくれな。」
 「わかりました。そういうことなら、ちゃんと作ります。」
 おいおい、話さなかったら ちゃんと作らなかったつもりだったんかよ 琴音ちゃん・・・ 。
 
 その後は、ほとんど話すこともなかった。
 二人は、俺が話してくれるのを待っていたんだと思うけど 面倒くさくないように 俺は夕食後にまとめたかったのだ。
 ・
 ・
 ・

 「ごちそうさま。美味かったよ、二人とも。ありがとな。」
 「お粗末様でした。」
 委員長は、出した物を跡形もなく片づけたことに 満足しているようだ。
 「本当、二人には感謝するぜ。一人暮らしの頃は・・・ 今もそうだけど、あかりがたまに来てくれるだけだったからな。味付けも、俺にあわせた物ばっかりだったし。それは、それでいいとして やっぱり違った味とかないと メリハリがないよな。」
 「そんなもんなんやろかなぁ?」
 そう言った委員長は、ゆっくりと湯飲みをあおった。
 琴音ちゃんはというと、黙ったまま カチャカチャと食器を片づけようとしている。
 「片づけなんて後でいいから、こっちへ来てくれ。」
 「わかりました。でも、乾いてしまったら取れにくいものもあるので 水に漬けておきますから、少し待っててくださいね。」
 「ああ、わかったぜ。」
 琴音ちゃんは、そう言って食器を片づけ始めた。
 マルチは、今 定期メンテナンスで研究所に戻っているので ここにはいないんだよな。だから、ちょっと静かだ。
 俺は、無意識に彼女たちを見つめていた。
 言いようのない不安がある。
 そう、彼女たちを失いたくない。贅沢な悩みだが、今は失いたくない。どうすれど・・・ この不安は、消せるのだろう。
 「どうしたのですか、ご主人様?」
 委員長が、悩んでいる俺に声をかけてきた。
 「ん・・・ ちょっとな。」
 彼女たちは、俺達以外 誰もいないところでは 俺を”ご主人様”と呼ぶ癖がついてしまったらしい。
 「どうやって、言い訳しようかと考えていたところだ。」
 「そんな・・・ 。」
 キッチンからやってきた琴音ちゃんは、不安の色を濃くした。
 「嘘だ。レミィのことを、思い出していたとこだ。」
 「非道いです、ご主人様。」
 琴音ちゃんが、震えながら俺に寄り添ってきた。
 「悪ぃ。また、泣かせちまったな。俺も、琴音達を失うことが怖いんだ。だから、つい虐めちまった。」
 「本当ですか?」
 「ああ。」
 琴音ちゃんは、少しホッとしたように 俺に身体を預けてきた。
 「宮内さんは、ご主人様にとって 特別な人なん?」
 委員長は、ゆっくりと本題をぶつけてきた。
 「特別と言えば、特別だな。でも、それは智子や琴音たちとなんら変わりのない 他の無関係な人よりは特別っていう意味もある。」
 「それって、どういう意味やの?」
 「俺の話しを聞いてから、判断してほしい。」
 「わかりました。な、琴音ちゃん。」
 「はい、智子さん。」
 「よしよし。」
 俺は、二人の頭をなでなでした。
 二人は、ジッとして はにかんでいる。
 「まず、レミィが俺に取って特別だというのは 俺の初恋相手ということがある。」
 「えっ!?」×2
 二人とも驚いた表情で、一瞬声を出した。そして、すぐに口をつぐんだ。俺の話を、一つも聞き逃さないという 覚悟なんだろう。
 「本当に、偶然だった。志保のやろうに連れていかれなければ たぶん・・・ ずっと忘れていた記憶だと思う。
 あいつが、志保が学校新聞の片隅を任されて ”志保の館”とか付けて そのイメージに当てはめるべく探し出したのが たまたまレミィの家だった。志保も、そんなこととは まったく知らなかったんだがな。
 それで、俺はその館の前で 幼い頃の想い出を甦らせた。
 迷子になった記憶。
 助けてくれた人の家で、一緒に遊んだ女の子のこと。
 それから、毎日その館へ遊びに行ってたこと。
 そして、女の子が家族とともに 急にいなくなったこと。
 そんな感傷に浸っているのを、志保は鋭敏に嗅ぎ取って 俺を追求して聞き出して 記事にした。
 その記事を読んだレミィが、志保に聞いて 俺の所へやってきた。」
 二人は、ジッと耳を傾けて 俺の言葉に集中しているようだ。
 今の俺は、偽りのないことを話し 彼女たちを納得させなければ、俺の不安も 彼女たちの不安も大きくなるだろう。
 「それから、俺は レミィの家を再び訪ねることになった。そこで、俺とレミィはお互いの記憶を重ね合わしていった。
 あの頃、どんなに楽しかったか・・・ 。どんな想いでいたのか・・・ 。離ればなれになって、どんなに寂しかったか・・・ 。
 いろいろな想いが甦って、お互いの初恋の相手と また巡り会ったことを喜んだ。
 だけど、またレミィがアメリカへ帰ってしまうことがわかった時 どうしようもなくなって身体がかってに行動していた。レミィも、同じだったんだろうな。あの頃、二人で想いを託して埋めた宝箱を レミィは探し出そうとしていた。
 レミィが失踪したと、レミィの家族に教えられて 躊躇なくその場所に向かったら レミィはいた。あの時のお互いの気持ちを確認したいんだって。その時、口で言ってもレミィに届かないと感じた俺は 一緒になって探した。 ・・・みつけた宝箱の中には、それぞれの想いを託したメモが 2つの小瓶に入れてあった。想いを確かめるために、俺がレミィの、レミィが俺の書いたメモを持った。レミィの書いたメモには、シンプルだけど はっきりと俺に対する気持ちが書かれていた。でも、俺は 自分の書いたことはうろ覚えで なんて書いたのか気になっていた。
 レミィが、神妙な面もちでメモを開こうとした時 一陣の突風がメモを持ち去った。風は、池の奥へと紙を運び去った。
 レミィは、追いかけて 池に飛び込んだ。
 俺は、慌ててレミィを止めた。その時、あんなにも取り乱したレミィを見て 俺はレミィが愛おしくてしょうがなくなった。
 ずぶ濡れになったレミィを、俺は ここへ連れてきた。
 そして、レミィは俺を求め 俺は応えた。」
 ここまで話して、やっと俺は気持ちが楽になった。
 彼女たちは、どうなんだろうか?
 「翌朝、レミィは帰っていった。吹っ切れたような笑顔を残して。
 そして、もう二度と会えないような気もした。
 登校しても、当たり前のように レミィの姿は無かった。
 落胆している俺の前に、レミィは午後になって ひょっこりと現れた。家族を説得して、自分だけ日本に残ったと 俺に告げた。その時、俺に抱きついてきたのを見た奴らがいて それを話していたんだろう。」
 レミィとの出来事は、ほぼこれで話し終えたことになる。後は、彼女たちがどのように判断するかだ。
 「これで、話は終わりだ。」
 俺の話を、最後まで口をつぐんで聞いていた 二人。
 「本当・・・ ですね?」
 「意味が、わからないな。嘘なんて、ついちゃいないぜ。それを疑うって言うんなら、勝手にすればいい。」
 俺は、琴音ちゃんの疑いに 自分の言葉に自身がある様を表すために 少し強い口調で答えた。
 「まってや、ご主人様。琴音ちゃんやって、本当は疑いたくないんや。でも、うちかてそうやけど 言葉だけやったら疑ってまう。信じたいんやけど、怖いんや。わかってぇな。」
 委員長は、涙目で 俺に懇願した。俺だって、言葉だけで信じてくれたら どれだけ楽かもしれない。やはり、言葉だけじゃ 限界なのか・・・
 「でも、私は信じます。たとえ、ご主人様が嘘を私たちにおっしゃっても 信じます。ご主人様を信じることが、私たち・・・ 私たちの・・・ ヒック。」
 とに、めんどくせえな。また、彼女たちを泣かせ血待った。
 なでなで・・・
 なでなで・・・
 「あっ・・・ 。」×2
 「ばかやろう。泣くんなら、最初から疑うな。だが、心配させちまったな すまん。」
 少しばかり矛盾を感じるが、謝っておいたほうがいいんだろうな。
 「ご主人様・・・ この不安を消してください。忘れてしまうくらい、苛めて感じさせてください。」
 「それでいいのか、智子?」
 「それくらいしか・・・ それくらいしかないんや。信じたい。ご主人様のこと信じたいのに、不安で潰されてしまいそうなんや。」
 委員長は、両腕で身体を抱え込むように耐えている。
 「バカなことを言うな! なんで、そんなに不安がるっ! 俺は、何も嘘をついちゃいない。そんなに、俺を信用できないというのか?」
 俺は、苛立ち始めていた。
 俺は、彼女たちが大切だ。だから、そんな自虐的になっているのが 許せなかった。
 「ひっ!」
 委員長は、びっくりして 俺から離れていった。
 琴音ちゃんも、それに合わせるかのように 離れていく。
 俺は、あわてて二人に腕を回し 引き寄せた。
 「きゃあっ!」×2
 「離れるな! 不安も、悲しみも、受け止めてやるから。だから、離れないでくれ。」
 俺は、二人をギュッと抱き寄せ 包み込んだ。
 「本当ですか?」
 琴音ちゃんは、そっと口を開いた。
 「本当だとも。何度でも、言ってやるよ。だから、迷わないでくれ。」
 「痛っ・・・ 痛いやんか、ご主人様。よかったから、もちっと優しくあつこうてや。」
 委員長は、苦しそうに身を捩っている。でも、嫌がってはいない。
 「あ・・・ ああ。」
 俺が、わずかに力を抜くと 二人は 俺に強く抱きついてきた。
 震える身体を押さえるように、ギュッと抱き締めてくる。
 「俺が、こんなんだからな。
 でも、俺は 何度でも言うように 誰も失いたくない。だから・・・ 精一杯愛していく。」
 「私は、信じます。ご主人様のその言葉を信じていきます。もう・・・ 疑いません。だから・・・ 。」
 琴音ちゃんは、さっきまでの強ばらせたような身体から力を抜いて いつもの姿に戻っていた。
 「うちも・・・ もう、逃げたりしない。応えてくれる人がいるから・・・ 逃げたりしない。ですから、うちも可愛がってぇな。」
 委員長も、元の姿に戻りつつあった。
 「ああ、夜はまだまだこれからなんだ。ゆっくり行こうぜ。今夜は、寝かさないぜ。」
 「もう、ご主人様ったら。」
 「いややわ・・・ でも、期待してます。」
 ・
 ・
 ・

 「惜しかったな、レミィ。」
 「ウン・・・ 」
 俺は、約束通りレミィの応援に来ていた。
 弓道なんて素人の俺でもわかるくらい、レミィはいい線をいっていた。だが、最後にミスってしまったようだ。元気がないのも、そのせいだろうか。
 「どうしたんだ?」
 「 ・・・ねぇ、ヒロユキ。」
 「ん?」
 「会場で、一緒にいたの 誰?
 一緒にいたのが、あかりなら 私動揺しなかったヨ。でも、私の知らない娘と楽しそうにしているの見て 不安になったヨ。」
 「レミィ・・・ 。」
 寂しそうな後ろ姿を見せる、レミィ。俺に答えを求めているのは、わかっている。
 「そうだったのか。悪いことしたな、レミィ。」
 レミィは、ちょっとだけ無言のまま 首を振った。
 「嫌われたかな。俺は、レミィのこと好きなのに。」
 俺は、苦笑い気味に 戯けて見せた。
 「怖いんだヨ。私の知らないヒロユキを見るのが、とっても怖いんだヨ。だから、話して・・・ 知らないことヲ。」
 いつもの屈託のない笑顔をなくしている、レミィ。これもまた、俺の責任だ。
 「ワタシは、ヒロユキのこと大好きだヨ。だから、少しでもたくさんヒロユキのこと知りたいヨ。ダメ?」
 レミィは、俺の目をジッと見て 懇願してきた。真剣な瞳が、眩しい。
 「ったく、しょうがねぇな。後悔しても、知らねぇぞ。」
 「後悔するノ? ウ〜ン、ちょっと考えるネ。アハハ。」
 レミィは、安心したのか 俺の腕を取り ピッタリとくっついてきた。
「ちょっと浩之、何やってんのよ。」
 物陰で待っていた綾香が、痺れを切らせて出てきやがった。
 「いい雰囲気になったとこで、出てくんなよな。少しぐらい、辛抱してろよ。」
 「あ〜あ、私にだって あれくらい優しくしてほしいわね。」
 ちょっとばかり、綾香は不満そうだ。
 「俺が、優しくないとでも?」
 「ううん、ぶっきらぼうだけど 優しいわね。」
 綾香は、近づいてきて 空いている腕に腕を絡めてきた。
 「ヒロユキ・・・ その人、誰?」
 レミィは、俺の腕をギュッと抱き締め 綾香から隠れるようにして聞いてきた。
 「さっき、ヒロユキと一緒にいた人だよネ?」
 「ああ、そうだ。後で、紹介しようと思っていたんだが・・・ 。」
 「初めまして、宮内レミィさん。あなたのことは、浩之からいろいろと聞いてるわ。」
 「いろいろとって、意味ありげな言い方するんじゃねえよ。」
 「ヒロユキ・・・ 。」
 本当に、普段のレミィらしからぬ振る舞いに 俺は思わずドキッとしちまったぜ。
 「レミィ、噛みついたりしないから安心しろ。」
 「私は、犬じゃないわ!」
 「わかってるって。猫なんだろ。」
 「うん。」
 綾香は、目を細めて にっこりと微笑みかけてくれた。
 それとは反対に、レミィは不安の目を 俺に向けてきている。
 「ヒロユキ・・・ ワタシ、邪魔ナノ?」
 「そんなことないぜ。ったく、また綾香のペースなんだな。」
 「ごめんなさい、レミィさん。えっと、私は来栖川綾香よ。よろしくね。」
 「ウ・・・ ン。ヨロシク。」
 レミィは、脅える猫のようにしている。
 「そんなに構えなくっても、いいぜ。綾香は、レミィから俺を取ろうというんじゃないから。」
 「ホント?」
 「俺のこと、信じられないのか?」
 「そんなことナイ。ワタシ、ヒロユキのこと信じてル。」
 レミィは、無理に笑顔を作って 俺に微笑んでくれた。そんなレミィに、俺は心苦しいものを感じていたが またこれも・・・
 「浩之?」
 「ん? ああ、そうだったな。」
 俺は、当初の目的を進められずにいた。あのレミィが、こんなんになっちまうから 拍子抜けしていたんたな。きっと・・・ 。
 「ありがとな、レミィ。
 ところで、これから空いてるか?」
 「ウン。みんなが、ヒロユキに慰めてもらえっテ。ホントは、ヒロユキが原因なのにネ。」
 「そっか。気ぃきかせてくれてたのか。いい仲間持ってるな。」
 「ウン。みんな、いい娘ばっかりだヨ。」
 俺も、何度も遊びに行ったが 楽しい連中ばっかりだったな。
 「それじゃ、今度は 俺の仲間を紹介するぜ。」
 「ヒロユキの仲間? 志保や雅史のことじゃないノ?」
 「あいつらは、関係ないぜ。誰かは、会ってからのお楽しみだ。」
 「そうよ。きっと、レミィさんも あの関係を気に入るわ。」
 「えっと・・・ クルスガワさん。ワタシのことは、レミィでいいヨ。レミィさんって、なんかくすぐったいシ。」
 「あはは。じゃ、私のことも 綾香って呼び捨てにして。そういえば、浩之は最初から呼び捨てだったわね。」
 「おまえだって、そうだろが。」
 両手に華なのはいいけど、頻繁に左右に首を振らないといけないのは 辛いぜ。それに、左右から腕を抱えられちゃ 身動きができない。
 「はいはい。そうでしたね。じゃ、さっさと行きましょうね。」
 そう言って、綾香はグイッと 俺の腕を引っ張った。それにつられ、俺がレミィが歩き出す。
 「ドコに行くノ?」
 「そうだな・・・ パーティー会場ってとこか。」
 「OH! パーティー!? ホント? ねぇ、ヒロユキ ホントなの?」
 「ああ。でも、お茶会ってもんだ。」
 「お茶カイ?」
 「ティーパーティーよ。みんな待ってるはずだから、早く行きましょ。」
 綾香は、グイグイと俺を引っ張る。
 「本当に楽しそうだな、綾香は。」
 「浩之といるとね、私は その時その時が新鮮なの。ちょっとした変化が、楽しいのよ。」
 そう言った綾香は、にっこりと俺に微笑んだ。信頼しきって、安心している顔だ。
 「アヤカ、ヒロユキのことが 本当に好きなんだネ。」
 その顔を見たレミィが、漏らすように呟いた。レミィは、少し気落ちしたような感じもさせた。が、拒むことなく 俺達についてくる足取りを弛めなかった。きっと、少しでも真実を知りたいのだろう。
 そして、俺達は みんなの待つ”猫の館”へと少しだけ急いだ。
 ・
 ・
 ・

 「ここなノ?」
 レミィん家は、貿易商をやっていて けっこう裕福だから この程度の館じゃ驚かないか。俺みたいな庶民は、最初驚いたけどな。
 「そうさ。」
 「ここって、アヤカの家なノ? すごいネ。」
 「そっかな。詳しいことは、中で話してあげるわ。」
 俺と綾香は、周囲に気を配りながら 館の敷地へと入っていった。
 本来、館の正面から綾香が入っていくことは 危険なのだ。どこで、来栖川家の目が見ているのか わかったものではない。
 また、昔 先輩が抜け出せたことを考えれば それほど厳しいものではないのか?
 だが、油断は禁物だ。一応、監視システムでセリオが見張っているから 大丈夫だとは思う。
 それにしても、レミィが 俺から離れない。今でも、俺の袖を持って離れないのだ。これじゃ、まるでお化け屋敷に入っていく気分だぜ。まあ、化け猫じゃなくて かわいい猫たちが待っているんだがな。
 俺たち三人が、玄関に入ると 奥からパタパタとマルチがやってきた。
 「おかえりなさい。あ、レミィさん よくいらっしゃいました。お待ちしてましたぁ。」
 マルチの正装、猫耳メイド。尻尾が、パタパタと動き その喜びようを表している。
 「あ、マルチ。マルチも、来ていたんだネ。でも、そのカッコウは どうしたノ?」
 「はい、私のここでの正装です。変なところが、ありますか?」
 「ウウン、かわいいネ。」
 「ありがとうございます。」
 そんなやり取りをしていても、レミィの表情は 晴れていないみたいだ。
 「ご主人様、そんなに思い詰めないでください。」
 綾香が、俺の耳元で 小声で言ってきた。
 「わかってるさ。でもな・・・ 」
 綾香の人差し指が、俺の唇を押さえる。
 「その先は、言わないで。私たち、涙を止めることができなくなってしまうから。あなたの前から、すべて消え去ってしまう。」
 俺の唇を押さえている綾香の指は、震えていた。
 俺は、愛しさのあまり 綾香を抱き締めてしまいたい衝動にかられた。だが、レミィの目の前でそれはできない。
 俺の唇から指を離すと、綾香は 黙ったまま館の奥へと歩み始めた。
 「アヤカ、どうしたノ?」
 「なんでもない。なんでもないんだ。」
 俺は、どうかしていたんだろうか。あやかに、何を言おうとしたのだろうか。
 アヤカの背中が、なにかを語っているようにも思える。
 「それより、疲れたろ。応接間で、くつろげるぜ。」
 「ウン。」
 館の奥へと歩きはじめた俺の後を、レミィはこれから起こることを まったく感じずについてくる。
 綾香とレミィ・・・ 二人のそれぞれの想いの揺れに、俺はこの上ない胸の苦しみをおぼえていた。いつも新しい猫を招き入れるたび、俺はそんな器じゃないと言っているのに 綾香はそんなことない 大丈夫だという。なにが大丈夫なのか、いつも そのたびに不安で苦しいのだ。
 だが、彼女らとて苦しいのだ。だから、そのことを口に出さず いつも飲み込む。そして、彼女らの不安を消してやることに努める。そうすれば、今度は 彼女らが俺を救ってくれる。
 今日も、また そうなるのだろうか。。。
 「他には、誰かきているの ヒロユキ?」
 「ん? どうなんだろ。来ていると思うけどな。」
 「そうなんダ。」
 ああ、また不安にさせちまったぜ。
 「わりぃ。レミィを驚かそうと思っていたから、名前は言えないだけなんだ。」
 「そうだったんダ。」
 そして、俺は いつものリビングへと レミィを通した。
 「誰も、いないネ。」
 「そうだな。きっと、他の部屋で遊んでいるかしてるんだろうぜ。」
 実際は、待機していると言うんだけどな。
 「ま、くつろいでくれよ。」
 「ウ・・・ ン・・・ 。」
 ゆっくりとソファーに腰を下ろす、レミィ。
 「とりあえず、紅茶を出してくれよ マルチ。」
 「はいです。もう、準備はできてますよ。はい、レミィさん。浩之さんも。」
 マルチは、あらかじめ用意しておいた順序で 紅茶を出す。もちろん、俺のは普通の紅茶を。レミィには、先輩スペシャルブレンドを。
 俺が紅茶を口に運ぶと、レミィはなんの疑いもなく 紅茶を口にする。
 透き通った赤茶色の液体が、レミィの口に入り 喉を通って確認する。
 ”後に戻れない”という考えが強くなった瞬間、俺のスイッチが切り替わったようにも感じる。
 「どうしたのかな、ヒロユキ。そんな、ジッと見られたら 恥ずかしいネ。」
 そう言ったレミィの表情は、落ち着いた中に ほんわりと赤く染めた頬で恥じらっていた。
 「紅茶を飲む姿が、色っぽいなと思ってさ。」
 「そうかな。でも、意外だヨ。ヒロユキが、そう言うこといえるんだってネ。」
 「今まで口にしなかっただけで、いつでもそう言うことは思っていたさ。」
 「そうなんダ。
 それにしても、このTeaおいしいネ。それに、いい香りがするヨ。どこのブランドなのカナ?」
 「ブランドか・・・ 。しいていえば、来栖川芹香ブランドかな。芹香先輩が、調合したスペシャルブレンドだからな。」
 「ヘェ〜、先輩ってすごいんだネ。もう一杯もらえるカナ?」
 「はい、どうぞ。」
 マルチは、空になったカップに 再び紅茶を注ぐ。
 「はわわっ、すみません。ちょっと、こぼしてしまいました。」
 あわててテーブルを拭く、マルチ。こういった細かいドジは、いつまでたっても直らないんだな。
 「そんなに、慌てて拭かなくてもいいネ マルチ。」
 「はい。でも、もう終わりました。」
 テーブルの上は、あっという間に元通りになってしまった。
 そして、カップに手を伸ばすレミィ。
 俺がいて、レミィがいて マルチがいる。さっきまでの、ギクシャクとしたのが嘘みたいな空間が ここにある。ただ、紅茶を楽しむだけの時間が。
 だが、もうすぐ 壊されるだろう。
 「ヒロユキ?」
 「どうした?」
 「ウン・・・ 私たちって、恋人だよネ?」
 「たぶんな。」
 「 ・・・ヒロユキが抱き締めてくれて、ワタシの事大好きだと言ってくれた後 私たちはステディな関係になったとワタシは思ったヨ。だけど、ヒロユキの側には いつも誰かいたネ。あかりじゃなくて、他の誰かガ。ワタシが手を振り上げても、ヒロユキを呼んでも 気づいてくれなかっタ。女の子と楽しそうにしているヒロユキを見て、ワタシの胸は苦しかったヨ。
 だから、大会に見に来てって誘ったノ。来てくれて、本当に嬉しかったヨ。でも・・・ 」
 そこまで言うと、レミィは 大粒の涙を零した。
 だけど、俺は冷静にそれを見ていた。
 手を差し伸べず、優しい言葉も投げかけず。
 「ワタシ・・・ ヒロユキの事、判らなくなったヨ。ワタシは、もっともっとヒロユキの事を知りたかったのに。教えてくれないし、側に来てくれなかったネ。だから、ワタシ ヒロユキの家に行ったノ。そしたら、ヒロユキと女の子が家に入っていくのが見えたネ。それでも、ヒロユキが好きだって言ってくれた事を信じていたのに・・・・・・ 」
 レミィに見られていたなんて、気づかなかったぜ。それにしても、レミィを無視していたわけじゃないが 間が悪いというかなんと言うか 結果的にそうなっていたんだな。
 「悪かったな、レミィ。これからは、隠し事はしないようにするぜ。今日からは、レミィもここの仲間に加わるんだからな。」
 「えっ? ・・・・・・・あっ・・・ ヒ・・・ ロ・・・ ユキ。身体が・・・ 変・・・・ だヨ。動か・・・ ない・・・・・・ ヨ。」
 そろそろ時間と思っていたが・・・ 紅茶(薬茶)の効果が出始めたようだ。
 先輩の話だと、意識はハッキリしているが 身体は動かなくなるらしい。五感にまったく影響を及ぼさず、副作用もないということだ。まったく、黒魔術とは 便利この上ないこともできるのだなと 関心させられる。
 でも、先輩は この薬を誰かに試したことがあるのだろうか?
 ま、いいか。
 レミィは、ソファーで動けないまま 目だけをこちらに向けている。恐怖で、脅える目で。
 「レミィは、そんな目もできるんだな。」
 俺は、レミィに近づくと 右手でレミィの頬を撫でた。
 「ヒロ・・・・・・ ユキ・・・・・・・ 。」
 ゆっくりでないと、話せないらしい レミィ。
 「怖がることはないぜ。今日からは、ここの仲間だって 言ったろ! 可愛がってやるからな。」
 俺は、そう言い放つと レミィの向かいのソファーに座り直した。
 ガチャッ!!!
 「ご主人様っ!!!」
 綾香たち全員が、いつもの格好をしてやってきた。
 「あ・・・ 」
 「紹介するぜ。彼女たちが、俺の猫だ。俺だけの可愛い猫たちだ。」
 俺は、普段と変わらない口調で レミィに話しかけた。
 「ウ・・・ ソ・・・ 。」
 レミィの青い瞳から、涙の粒がこぼれ落ちていく。その理由は、誰の時でも同じだ。
 また、胸が痛い。
 「毎回、私が説明するのもなんだしねぇ〜。誰か、変わってくんない?」
 綾香は、レミィにこの現状を説明する役を 他に回そうとした。琴音ちゃんと委員長の時、想いを語りかけたのは 綾香だったからな。
 「ほな、うちが。」
 そう言って、役を引き受けた委員長が スクッと立ってレミィの側へと近づいて行く。
 「今日は、どうしたんだ 綾香。」
 「はい、いつも私が話しても ご主人様はつまらないですよね。たまには、他の娘たちの想いを知るってのも いいと思いませんか?」
 「そうだな。」
 綾香の俺への想いは、痛いほど伝わってきている。だが、この情況に甘んじているのは 綾香の優しさに甘えているからではないだろうかとも思う。
 「レミィ・・・ うちらのこと、おかしいと思っているんやろな。思ってないはずないわな。裸でこんなもん付けて、一人の男に仕えているんやからな。
 そら、うちかて一人の女や。ご主人様を、自分一人のものにできたら どんなにええかと思うこともある。自分だけを見ていてほしいと、思うこともある。
 でもな、ここに来て 初めてわかったこともある。それは、他のみんなにも優しかったから うちにも優しくしてくれたってことや。それで、寂しい思いもした。
 しかしやっ! それでも、うちはご主人様の側にいたかった。どんなことをしても、どんなことになっても 最後まで側におられたモンの勝ちやってことがわかったさかいな。」
 おおっ、委員長が力説してるぜ。
 「せやから、うちらは ご主人様のものになったんや。ご主人様は、誰にでもひいきなく愛してくれるさかいな。それで、うちらは 心が満たしてもらえる。
 けど、不安はあるんや。あんたみたいに、うちらの輪の外にいる女の子や。うちらが、ライバルやというのに一緒にいるのは お互いを監視し切磋琢磨することにある。せやから、輪の外にいる女の子は危険なんや。うちらが、必死になってる隙に 横からかっさわれてしまう可能性があるからな。
 ・・・ここまで話せば、わかるやろレミィ。あんさんを野放しにしておくんは、危険なんや。特に、聞くところによると ご主人様の初恋の相手やと言うことやないか。そんな要注意人物を、うちらがいつまでも放っておくこと できんわ。」
 「ソ・・・ ン・・・ ナ・・・ 。」
 「そこでやっ! よう聞き、レミィ。答えは、2つ。うちらのようになってご主人様に愛していただくか、全てを忘れ ご主人様の前から去るかや。好きな方を選びっ!」
 委員長だと、こうなるのか。スパッと言い切ったようにも、思える。猫たちの中では、いまんとこ一番新しいのに 割り切ってやがるのが不思議だ。まあ、俺が考える以上に 気持ちの整理ができているってことか。
 反対に、レミィは混乱したままか 涙が止まらないようだった。苦しそうに、嗚咽を吐いている。
 俺は、それを冷静に見ている。俺は、変わってしまったのだろうか。それとも、今の俺が本来の俺なのだろうか。
 「泣くのもええけど、決心せえや。ま、答えは聞かんでもわかってるけどな。」
 委員長は、一瞥して レミィから離れた。
 「なあ、芹香。薬の効力って、どれくらいだっけ?」
 「二杯飲みましたから・・・ 後5分くらいかと。」
 「そうか。」
 薬の効果が切れたら、レミィは答えを言えるのだろうか。
 「ご主人様、この後どうします?」
 「どうって?」
 「うちの時みたいには、しないんですか?」
 「さあな。」
 「ずるいですね、ご主人様。」
 俺の足元でくつろいでいた琴音ちゃんが、俺を見上げるように”ずるい”言った。
 「俺が、決めることじゃないってことさ。」
 俺は、琴音ちゃんの頭に手を置いて なでなでする。
 「あっ・・・ 。」
 俺の返事は、逃げの言葉でもあった。俺には、決められない。ただ、それだけだ。
 「お前たちの好きにすればいいさ。」
 「はい・・・ 。好きにさせていただきます。」
 琴音ちゃんは、なぜか 積極的に陵辱行為をしようとする。なにがあって、そういうことをするのだろう。今度、彼女の気持ちを確かめておかないといけないような そんな気がする。
 「そろそろですね。」
 そう言った綾香の頭も、なでなでする。
 そして、レミィを見ると 薬の効果が徐々に薄れていくのか 手足が少しずつ動いている。ゆっくりと、伸びていた手足を 気だるそうに縮めていく。
 俺たちが見守る中、数分かかって 完全に効力が切れて元に戻ったレミィ。
 何も言わない。答えを言い出せないでいる。
 俺たちも、何も言わない。
 「Y・・・ Youたちは・・・ 本当に・・・ Happyなのカナ?」
 先に、口を開いたのは レミィだった。遠慮しがちに、聞いてくる。
 「今わね。未来の事なんてわからないけど、未来に繋げていく為にも 今が幸せじゃないとダメだわ。だから、私たちは ご主人様の側にいるのよ。」
 綾香は、さらに密着してくる。それにあわしたかのように、先輩、琴音ちゃん、マルチ、委員長も 俺に密着してくる。
 傍目に見れば、女をはべらかせている”ただの馬鹿”に見えるだろう。実態は、一人の男に心酔している女の子たちが 身を預けているのだ。
 「ワタシは・・・ ヒロユキの側にいたいと思うネ。ワタシには、ヒロユキを忘れることなんてできないし 側にいないと想いは届かないネ。」
 「よくわかっているやないか、レミィ。それで、ええんよ。うちやって、それがわかったから こうしていられるし、可愛がってもらえてるんよ。」
 委員長は、なぜか レミィを積極的に誘う。
 「智子、どうして レミィに肩入れするんだ?」
 「うちとレミィ、似たようなところがあるような気がしてならないんや。
 ご主人様は、うちが友達を作らなかった理由を知ってますやろ。レミィは、ご主人様の為に アメリカに帰る家族と分かれて 日本に残った。そんなとこが、似ているんやと思う。
 だから、せめて今は幸せな気分に浸ってもらいたいんや。」
 「ライバルを増やすことになるんだぜ。」
 「いまさら何人増えようが、関係あらへんよ。うちは、誰にも負けへんっ!」
 今日の委員長、テンション高すぎるぜ。
 「ということだが、覚悟はいいか レミィ。」
 「ワタシの想いは、トモコと一緒ネ。ワタシだって、負けないデス。」
 レミィの気持ちは、決まったようだ。館に来た時のあの思い詰めたような表情は、微塵もなく 晴れ晴れとしているように見える。
 「だから、ワタシはヒロユキのものになるネ。」
 そう言いきった、レミィ。これで、また新しい猫の誕生ということだ。彼女は、どんな猫になってくれるか 楽しみでもある。
 「なら、これから俺のモノになる為の儀式を受けてもらう。」
 「ギシキ?」
 「ああ、契約みたいなもんだよ。ただ、それで泣いて拒むことは もうできないぜ。」
 「どんなに辛くても、がんばるヨ。」
 「いい返事だ。じゃ、綾香たち 頼んだぜ。」
 「はい、ご主人様。姉さん、智子、手伝ってね。琴音とマルチは、ご主人様の相手を。」
 綾香たちは、レミィを連れて 儀式の為の処置をするため 部屋を出ていった。
 残った俺は、レミィのあの明るさが辛かった。なんで、あんなにも辛くなるかもしれない事を 明るく言えたのだろう。
 「ご主人様、好きです。愛してます。」
 「琴音・・・ いきなり、どうしたんだ?」
 「変ですか? 私は・・・ 私たちは、ご主人様を愛してます。」
 琴音ちゃんは、俺の目を見て 話してくる。
 「俺は、琴音の・・・ それぞれの想いに答えてないんだ。だから、本当は 俺には資格がないんだ。」
 「わかってください! 私たちは、今は ただ肌を重ねてもらえるだけの存在であっても 側にいられるから幸せで 微笑んでいられるんです。側にいられれば、忘れられることはありませんから。忘れられてしまうことが、私たちにとって 死ぬほど辛いことなんです。」
 琴音ちゃんは、真剣な眼差しを俺に向けている。
 「ご主人様は、資格がないと言いましたけど 私はそうは思っていませんよ。私たちは、ご主人様に私たちの想いを受け止める資格があると 思っています。ご主人様は、それだけのことを私たちにしてくださった。それは、紛れもない事実です。だから・・・ お願いですから、資格がないなんて言わないでください。私の気持ちを否定されているみたいで、苦しいです。」
 琴音ちゃんは、左手で左胸を押さえて 苦しそうにする。
 いつも真剣に、俺のことを想ってくれるのに 俺はいつも自分の考えで琴音ちゃんを苦しめている。
 「ごめんな、琴音。みんなの気持ちが強いから、どうしても否定的になっちまう。」
 「わかっていただければ、いいのです。私の愛したご主人様でいてくだされば、私はどんなことがあろうと 側を離れませんよ。」
 さっきまでの苦しそうな表情を振り払い、琴音ちゃんらしい微笑みで 俺を包んでくれた。
 綾香にしろ、先輩にしろ、女の子って強いんだなと 思い知らされる。
 「人間って、すごいですね。私・・・ ロボットだから、メモリーを消去してしまえば 全てなかったことになってしまうんです。
 でも、反対に言えば 辛かった事を簡単に忘れられていいかもしれませんね。」
 俺たちの会話を聞いていたマルチは、そんなことを言った。
 「そんなことはないぜ。人間だって、”記憶喪失”というのがあって 自分でさえ誰かわからなくなってしまうことさえあるんだ。」
 「そうなんですか? なんだか、怖いですぅ〜。」
 「そうだな。心があるから、自分が誰であるかわかりたいんだよな。自分がわからないのに、周りの人が知っているっていうのは 怖いな。」
 「人間の方も、私たちのように 記憶を別に保存できたらいいのに。」
 「ははは、そうだな。マルチは、優しいな。」
 俺は、科学がどんどん進んでいけば 記憶のデータ化も夢じゃないだろうと思う。それが、いいことなのか 悪いことなのか わからない。
 「でも、私・・・ 今 とっても幸せですから。いつまでも、いつまでも忘れたくないです。この気持ち、ずっと保存されるといいな。」
 マルチは、マルチらしい微笑みで 俺を包んでくれた。
 俺は、こうして荒んだと思っている心を 直してもらっている。やっぱし、甘えているんだな。
 「この瞬間を、一つ一つ忘れないように努力するぜ。」
 俺は、そう言うのが精一杯だった。
 日々のパーツを組み立てて、明日を築いていく。そのための、瞬間という小さなパーツでさえ 忘れないようにしよう。その中に、彼女たちの心を詰め込んで。
 そして、呼びに来るまで 側にいるということを楽しんだ。

 ガチャッ
 「ご主人様、準備ができました。」
 「ああ。」
 呼びに来た委員長に、ゆっくりと反応した。
 「今回の趣向は、ちょっと変わっていますから ご主人様のお気に召すか・・・ 。」
 「好きなようにしろと言ったのは俺だから、楽しみにしているぜ。」
 「はい。こちらへ、どうぞ。」
 委員長の招くまま、俺たちはリビングからでる。
 そして、突き当たりの一つ手前部屋へと 連れて行かれた。
 総タイル張りの、ヒンヤリとした部屋だった。
 壁からは、鎖がいくつも繋がれ 鎖の先には枷らしきものがある。とりわけ、目を引いたのは 部屋の中央に置かれた 木馬だった。
 メリーゴーランドで回っているような、なんとなく懐かしさを感じる木馬だ。
 「ここは?」
 「綾香さんの話しによると、メイドのお仕置き部屋やったとのことです。」
 「なるほどな。」
 そういう雰囲気が、ビンビンに感じられる造りだ。
 ガチャッ
 後から、処理を済ませたレミィが現れた。初めての浣腸だったのか、レミィは盛んにお尻を気にしている。
 「どうしたんだ、レミィ?」
 「あんなこと・・・ されるなんて思ってなかったネ。すっごく恥ずかしかったヨ、ヒロユキ。」
 「綾香!?」
 「ん、もう・・・ 注射は嫌だって騒ぐレミィに浣腸させるの 大変だったんですよ。姉さんなんか、納得させるために レミィの目の前で浣腸したんですから。」
 「
そうです。。。
 「そうなのか?」
 「ウン。ワタシ、注射嫌いなのネ。あんな大きなので刺されたら、死んじゃうって思ったネ。でも、セリカさんがお手本見せてくれて 安心したヨ。」
 「すまなかったな、芹香。」
 俺は、先輩をなでなでして 感謝した。
 「ああっ〜、姉さんだけぇ? 私だって、がんばったのにぃ。」
 「とに、焼き餅焼くなよ。」
 「そういう問題じゃないです。」
 綾香は、ちょっと不満気な表情をする。いつもの手で、本気じゃないのはわかっている。
 「お手本を見せたのは芹香なんだから、しょうがねぇだろ。
 それよりも、あの木馬はなんだ?」
 俺は、部屋の中央に置かれた木馬の意味を 訪ねてみた。何の変哲もない木馬。それが、気になる。
 「おもちゃですよ。大人のおもちゃですけどね。ふふふ・・・ 。」
 「やっぱし、そうなのか。」
 「はいっ! セリオに、宮大工と芸術家のデータをダウンロードさせて 造りました。まだ、できたばかりで 試乗もまだですけど ワクワクします。」
 一番最初に自分が試乗しないことがわかっている綾香は、ウキウキとしている。ま、様子を見て 自分も使ってみようということなんだろうな。
 「で、どんな動きをするんだ?」
 「見てのお楽しみです。
 では、レミィさん いっちゃってくださいっ!」
 「エエッ! ワタシ?」
 やっぱし、そうきたか。
 「私たちの仲間になる洗礼だと思って、あきらめるのね。それとも・・・ 」
 「わかってるヨ。ヒロユキの側にいられないって事ネ。」
 そう言うと、レミィは木馬に近づいていく。
 俺たちは、動かずに ジッと見つめる。
 全裸のレミィは、鐙に足を架けると 慣れた仕草で木馬に跨った。
 「この木馬、本物のホースみたいネ。ダディとハンティングに行った時のことを思い出すネ。」
 木馬の感触を楽しんでいる、レミィ。いまにも、草原を疾走するかのような錯覚さえ覚える。
 「でも、こんなところに穴があるのは 不自然だネ。」
 木馬に腰掛けると、ちょうど股の所に二つの穴が 開いていたのだ。
 「もっと楽しんでね。セリオ、スイッチON!」
 「はい。」
 カチッ
 「ヒャウッ! なに、コレ? 私の・・・ 中に、入ってくる・・・ ダメェッ! アウッ・・・ アアアッ!!!!!」
 身もだえしながら、木馬の上で逃げ場を失い 嫉視にこらえている。
 「ふふふっ、まだこんなもんじゃないわよ。」
 綾香は、レミィで遊んでいる。それを止めることは、俺にはできない。
 「太いネ! 私のカントが・・・ 壊れちゃう。止めて、アヤカ!」
 「ダメよ、ご主人様のモノは それぐらいはあるんだから。」
 「アウッ・・・ 苦しいヨ。ヒロユキの・・・ こんなに太くなかった。」
 レミィを抱いた時と、いまでは全然太さも長さも違っている。いくら、先輩の薬の影響だといっても 驚くほどちがう。もち、精力も。
 「いまは、それくらいあるのよ。直接型取りしたんだから、間違いないわよ。」
 「おいっ、これに使うために あの時型取ったのか?」
 「はい、そうですけど。」
 まあ、張り型を作るとは思っていたが こういうのになるとは思わなかったぜ。
 「ンアアッ・・・ アウッ・・・ ハアハア・・・ アウウウウッッッッ!」
 レミィの声だけが、部屋に響き 他のみんなはジッとレミィを見つめている。
 異常な光景だと思う。だが、俺は それを認め受け入れている。側にいる女性たちを、守っていく為に。
 「まだまだよ。」
 「エッ? そんな・・・ イヤッ、イヤアアアアァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
 レミィの絶叫。
 「裂けちゃったかしらねぇ〜〜〜・・・ くすくす。」
 アヤカは、妖しい眼差しで 笑っている。その表情は、多様に取れる。
 レミィの秘所と菊門を貫いている張り型が、交互に動き攻め立て始めたのか 身体の動きがさっきまでと違う。
 「イッ、痛いッ! 苦しいヨ・・・ アウウッ!」
 やはり、裂けたみたいで お尻を貫いている張り型を伝い 血が流れている。
 「ウアアッ・・・ もっ、もう止めてぇ〜・・・ ワタシ、壊れちゃう!」
 「そんなことじゃ、まだ壊れないわよ。」
 「エエッ? ンアアアアァァァァ〜〜〜・・・ 熱いっ・・・ 熱いのが入ってくるゥゥゥゥ〜〜〜!!!!!!!!!」
 飛び上がるように、レミィが仰け反る。金色の髪が、振り乱されて 綺麗だ。
 「綾香、なにをしたんだ?」
 「ふふっ、あれの先から疑似精液がでるんです。ビュクッビュクッて感じで、出続けますから。」
 「 ・・・なるほどな。」
 「けっこう、気持いいかもしれませんね。」
 体内に出される感覚か・・・ 俺には、わからないものだ。綾香は、その感覚が好きだと言っていたと思う。
 「アアッ・・・ アアアア・・・・ いっぱい・・・ いっぱい入ってくるヨ・・・ ンアアッ・・・ いいヨ。」
 張り型との間から漏れる疑似精液とレミィ地震のジュースに、張り型の動きもスムーズになり ヂュプヂュプと音を立てている。
 「もう、痛がってないな。」
 「疑似精液には、媚薬も混じっていますからね。」
 それだけで、痛みまで消せはしないだろう。きっと、先輩の作った物が 混じっているんだな。
 「いいっ、いいのぉっ! ワタシの身体、変だヨ・・・ ヒロユキ・・・ ヒロユキッ!」
 俺の名前を叫びながら、前後の穴を張り型に突かれ 隙間から液を溢れさせ 乱れるレミィ。
 「それにしても、すげーな。」
 射精というよりは、噴水のようにレミィの中で噴き出しているのか 次から次へと隙間から溢れ出ている。もう、レミィの跨っている辺りから下は ビショビショだった。
 「このリモコンで、他にもいろいろと操作できるんですよ。」
 綾香は、セリオが持っていたリモコンを受け取り 俺に見せた。
 「たとえばですね、これを押すと・・・ 」
 ピッ
 「ヒィヤァッ! もう、お腹一杯だヨ〜・・・ そんなに入れないでェ!!!!!」
 「疑似精液の出る量が、調整できます。最大にすると、内臓を直接洗っているように感じるでしょうね。」
 ピッ
 「イヤァァァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!!!!!!!!!」
 バシャバシャと音を立てながら、液を吐き出し レミィは絶叫して果てた。
 「あらら・・・ 間違って最大にしちゃった。」
 ピピッ
 綾香は、ペロッと舌を出して 木馬の全ての機能を止めた。
 「子宮を叩かれるって、どんな気持ちなのかな・・・ 。」
 「使ってみろよ。俺が、リモコンで操作してやっからよ 綾香。」
 「 ・・・また、今度お願いします。今日は、レミィの歓迎会だから。」
 綾香は、感じてしまったのか モジモジとしながら答えた。
 「そうだな。ま、そん時は 遠慮せずにやってやるぜ。」
 俺は、レミィを見て答え 木馬の上で気絶しているレミィに向かって 歩き始めた。
 レミィを攻めていたモノは、木馬の中に納まり 攻められていたヴァギナとアヌスから、止めどなく白濁液が溢れ出ているのが わかった。
 「まるで、輪姦された後みたいだぜ。」
 気絶しているレミィの姿は、陵辱され尽くされたかのようにも みえる。手足をピクピクとさせ、だらしなく木馬に崩れている。
 「さて、どうしたもんかな?」
 「後は、契約の儀式をすれば良いのでしないですか?」
 「そうなんだが・・・ 琴音なら、どうする?」
 「そうですね・・・ 私たちの場合、全員ベットの上でしたから ここで行えば良いかもしれませんね。ワンパターンでは、面白味に欠けてしまいますから。くすくす。」
 楽しそうに笑う、琴音ちゃん。その笑顔を見ると、ここの仲間になってよかったと思うぜ。
 「んじゃ、そうすっか。なぁ、綾香。」
 「わかりました。セリオ、あれを持ってきて!」
 「ここにあります。」
 「は、早いわね。」
 「この部屋に保管してありましたから。」
 「 ・・・そう。」
 セリオが、手にしたケース。その中には、契約の証となる猫耳と尻尾のセット。レミィ専用に用意した、金色の長毛種タイプだ。
 「今回は、・・・ 智子ね。」
 「うち?」
 前回、仲間に加わったのは 委員長だ。だから、新しく仲間にしようとしている娘の気持ちも 他の娘より近い。
 「そうだぜ、智子。儀式には、智子の協力が必要だ。」
 「 ・・・そうやったね。うちの時は、琴音ちゃんやったし。」
 「ああ。」
 俺は、綾香に目で合図した。
 「私に与えられた役目を、ご主人様にお返しします。
 智子、これを。」
 綾香は、契約の証を智子に差し出した。それは、俺が綾香に言った’好きにさせてやる’ということの 終わりでもあった。
 差し出された物を、智子はジッと見て・・・ ゆっくりと手を差し伸べた。
 「おかしな気分や。ドキドキしたり、いろんな感情が混じり合って 複雑なんや。」
 「それは、きっと智子がされた時の事を思い出して レミィに自分の姿を写しているんだ。」
 「そうなんかな?」
 「全ては、表と裏の合わせ鏡なんだろ? だったら、虐められるのが好きな智子は 虐めるのも好きということになるぜ。」
 「うんっ。」
 はにかんで、そして微笑む智子。ここにいる綾香も先輩も琴音ちゃんもマルチも、同じ顔を俺に向けたことがある。どうしてなんだろう? どうして、みんな 俺に全てを委ねた顔をするんだ。
 「ご主人様、どうぞ。」
 智子は、手にした物を 俺に差し出した。俺は、迷わず猫耳に手を延ばし 受け取った。
 「いいのですか?」
 「俺が、尻尾を付けてやらなくちゃいけないってことはないぜ。これは、俺たちの共同作業なんだからな。それに、今回は・・・ レミィが気絶しているし お尻の穴が開いたままだから 智子も楽に入れることができるだろうぜ。」
 閉じることを忘れて、液体を流し続けるレミィのアヌス。抵抗の仕草や表情をしない今のレミィなら、誰でもやりやすいだろう。
 「はい。」
 委員長は、尻尾を持つと その手の中にある挿入部分をみた。挿入するのを、想像しているのか 目が潤んでいるようにみえる。
 「感じてきたか、智子。」
 「胸が、高鳴るん。あそこが、ジュンッてなってまう。」
 「それでいい。あがらうことはない。気持ちに素直でいればいい。」
 「はい、ご主人様。」
 また、ニッコリと微笑む委員長。その可愛らしさに、ドキッとする。教室の中での表情とギャップがある分、新鮮なんだ。
 「始めるか。」
 そういうと、俺は木馬の前方に移動した。
 セリオだけが、俺の方に移動し 他のみんなは 智子と後方に移動した。
 レミィの剥き出しの秘所やアヌスが、彼女たちの目に曝される。
 「わあっ、すっごぉ〜いっ!」
 レミィのあそこを見た琴音ちゃんは、大きな声を上げた。
 「中のお肉が、みえてます。」
 ポッカリと開いた穴越しに、内臓を見るマルチ。
 「ダラダラと、涎みたいに垂れ流して・・・ そんなに入れられたら、私 壊れちゃうかも。でも・・・ 感じちゃいそう。」
 琴音ちゃんの感情そのままに、尻尾はパタパタと動き 感情を高めていってるようだ。
 ゜あっ・・・ ああっ・・・ くうんっ。」
 ぶるぶると震えながら、床にペッタリと腰を落とす 琴音ちゃん。
 「イッちゃったのね、琴音。本当に仕方がない娘。そんなに、レミィの姿に感じちゃったんなら 後でご主人様にしてもらいなさいね。それとも、木馬がいいかしか? うふふっ。」
 「綾香さん・・・ 。」
 俺に何を期待してるんだ、二人とも。そんなにも、過激な行為に発展してほしいということなのか?
 「俺にも、できることとできないことがあるぜ。」
 「私は、ご主人様が愛してくださることでしたら どんなことでも受け入れますよ。ご主人様が、今すぐ この木馬に跨れと言われれば 跨ってご主人様の愛を受け入れます。」
 琴音ちゃんは、俺に愛されるなら どんなことでもできるということを 誇張するかのように言った。それは、ここにいる彼女たち全ての代弁でもあった。
 「はいはい・・・ レミィが終わってからな。」
 「はいっ、ご主人様!」
 明るく元気良く返事をした、琴音ちゃん。嬉しそうな笑顔に、俺はドキッとした。
 「私も・・・ お願いします。」
 「俺は、誰も分け隔てなく相手するけど・・・ 俺の体力も、少しは考えてくれよ 芹香。」
 「 ・・・はい。がんばって、ご主人様の為に 秘薬を作ります。」
 「 ・・・・・・ああ、期待してるぜ。」
 結局、休ましてもらえないんだな。
 そんな俺たちのやり取りの間、委員長はレミィに挿入するタイミングを待っていた。
 「わりぃ、智子。いつでもいいぜ。」
 「はい。」
 委員長は、ゴクリッと喉を鳴らし 手に持ったレミィ専用尻尾を その納まるべき場所に向かって 近づけた。狙いを外さないといわんばかりの、委員長の真剣な眼差し。
 クニュッと、白濁液を吐き出す為に開いているアヌスをかき分け 内側へとへこませた器具。液体による摩擦の低下は、窪んだ肉を簡単に戻し 挿入部にまとわりつくように絡んだ。
 「う・・・ ん・・・ 」
 直腸内に侵入してくる異物に、気絶しているレミィは 無意識のうちに呻いた。
 俺は、そのレミィの顔を覗き込むと まだ気づいたわけではないことを 確認した。
 ズッズッとした感じで、挿入していく委員長。慎重に・・・ ゆっくりと体内へと沈めていく。
 「ウウ・・・ ン・・・ 」
 そろそろ、目覚めてもおかしくないと感じる。
 「ご主人様、もうちょいで全部入ります。」
 「ああ、わかった。」
 挿入部分(神経接続プラグ)が、全て埋まると 起動する尻尾の感覚に はたしてレミィはどのような反応を見せてくれるのだろう。
 ズルッ
 ヴゥゥ〜ン・・・・・・
 一瞬、独特の起動音がする。
 「×○☆!? ヒィイイッ!!」
 何が起こったかのかわからないまま、レミィは飛び起きた。
 ズルッ!
 「キャアッ!」
 身体を起こしたレミィだが、身体を支えていた手が滑り 木馬の上に突っ伏したかっこうになった。
 「やあ、レミィ お目覚めかな。」
 「ヒロユキ・・・ 変だヨ・・・ お尻が変だヨ。」
 「そうなのか?」
 「ウン・・・ お腹が、ちょっと苦しい感じがするヨ。それに・・・ 何か動くし。」
 「ふぅ〜ん。」
 「ヒロ・・・ ユキ?」
 「レミィ。」
 「はい?」
 「そろそろ、自分の置かれた状況を 思い出してくれないかな。」
 「ジョウキョウ・・・ ワタシは、ヒロユキのものになるんだったネ。」
 レミィは、微笑んで 俺をみつめた。
 「そうだぜ。」
 俺は、ポンッとレミィの頭に手を乗せ 撫でた。それを、気持ちよさそうな顔をして受けるレミィ。
 「レミィ、ご主人様と呼ばんかいっ!」
 「ヒィヤアアアアァァァァァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!!!!!!!!!!」
 一転、大きく身体を仰け反らし 叫ぶレミィ。
 委員長は、嫉妬からか まだ接続されたばかりの金色の尻尾を きつく握りしめていた。
 「ト・・・ トモコ・・・ 許して。ゴメンナサイ・・・ ゴメンナサイ。」
 「うちに、謝ってもしかたないやろが。ご主人様に謝るんや!」
 委員長の厳しい注意が、飛ぶ。それは、躾とも言うが。
 「言う・・・ 言うから・・・ 放してヨ、トモコ。じゃないと・・・ アタシ・・・ アタシ・・・ 」
 委員長の手から逃れるように、レミィは必死に腰を振った。ピチピチと暴れる尻尾。そして、ビクビクと身体を震わせて また絶頂を迎えた。
 また、木馬の上に突っ伏してしまうレミィを見て 委員長はバツの悪そうな顔をしていた。
 怖ず怖ずと目線をあげ、俺の様子をうかがっている。
 「ま、しかたないさ。」
 俺は、委員長の気持ちをわかったうえで そう言い放った。
 「と言うことよ、智子。」
 綾香が、フォローに入った。そして、委員長は握っていた手を離すと レミィの尻尾は ゆっくりと手から零れた。
 レミィの尻から垂れた尻尾は、呼吸に併せるかのように ゆっくりとパタッパタッと動いていた。
 「ふむ・・・ ま、いいか。」
 俺は、猫耳カチューシャを そっと頭に着けた。金色の髪を、器具の先が掻き分け 違和感ないほどにぴったりと装着される。
 「んんっ・・・ ヒロユキ?」
 「猫になった気分は、どうだい?」
 「 ・・・わからないヨ。」
 「とりあえず、そこから降りろよ。」
 「う・・・ ん。」
 レミィは、汗と白濁液で 滑るように木馬から降りようとした。
 「うおっと・・・ 危ねえなぁ。」
 力が、まったく入らないのか 木馬から落ちるようにみえたから 俺は慌ててレミィの身体を支えた。柔らかく、しなやかなレミィの肉体に 俺の手が埋まる。
 「柔らかいな。」
 綾香たちとは、違う肌の肌理と質感。
 俺は、そのままレミィを床へと横たえた。
 「 ・・・ヒロユキ・・・ アタシ・・・ ンンッ。アタシ・・・ 身体が熱いヨ・・・ ヒロユキ。どうしちゃたのかな?」
 レミィは、弱々しく身を捩りながらも 俺に 潤ませた青い瞳を向けてくる。
 「わかっているはずだ。」
 「 ・・・ウン。アタシ・・・ ヒロユキがほしい。」
 俺の腕の中で、レミィは恥じらうことなく 真っ直ぐに微笑んだ。
 「ああ。だが、抱くのはここでだ。」
 「エッ?」
 「嫌か?」
 「 ・・・ウン。でも、ダメなんだよネ。」
 「これは、契約の完了を意味することでもあるからな。みんなに、その承認となってもらう意味もある。」
 綾香たちも、視線を下げる為に 床に腰を降ろして俺たちを見ていた。彼女らの瞳は、俺とレミィの行為を逃さぬかのように ジッと俺たちをみつめていた。
 「恥ずかしいヨ。」
 「じきに、そう思わなくなるさ。」
 そう思わなくなるのは、慣れか はたまた他の猫たちへの対抗心からなのか。
 俺は、抱えていたレミィの頭を床に降ろすと 正常位のポジションをとった。
 レミィの尻尾が、パタパタと踊る。
 綾香たちは、俺たちの後方に位置するから 俺とレミィの接合部が丸見えになるはずだ。みんなからの熱い視線を感じながら、狙いを定める。
 「いくぜ、レミィ。」
 「ウン・・・ 来て、ヒロ・・・ ご主人様っ!」
 レミィは、精一杯の笑顔で応えてきた。その笑顔は・・・ そう、あの時・・・ 幼い時にレミィの家で・・・ 庭の木に登っていた時に、先に登っていたレミィが俺を見下ろした時に見た あの笑顔だ。
 「 ・・・ああ。」
 M字に開いた脚に腕を絡め、挿入位置を確認すると 腰を前へと突き出した。
 ニュプッ
 「アウッ!」
 熱くぬかるんだ蜜壺は、まったくの抵抗をみせず 深々とモノを受け入れてしまった。



 久しぶりのレミィの感覚に、いつも以上に俺は興奮している。ギンギンになっている俺のモノは、めい一杯に腫れあがっている。
 ニュププッ
 「 ・・・ン・・・ アアッ・・・ いっぱい・・・ いっぱいだヨ。」
 俺のモノの先端が、レミィの子宮口を圧迫し 押し広げんばかりだ。
 「これで、全ての契約が終わったぜ。」
 「ホント?」
 「レミィは、俺の物だ。俺だけの猫だぜ。」
 「 ・・・嬉しいヨ、グスッ。」
 レミィは、クシャッと笑顔を潰して 泣き出してしまった。それと同時に、広げていた脚を俺に絡めてきた。一段と密着度が増し、レミィの想いが伝わってくるようだ。
 「レミィさん、おめでとうございます。」
 「レミィ、おめでと。これで、うちたちの仲間やね。」
 「抜け駆けは、許さないからね。」
 「嬉しそうです。」
 「おめでとうございます、レミィさん。私も、とってもうれしいです。」
 繋がっている俺たちに、各々声を掛けてくる。
 「みんなが、祝ってくれてるのに このままじゃわりぃよな。」
 ズズゥ〜〜〜ッ
 俺のモノに絡みついた膣壁ごと、外へと引っ張り出るかと思えるくらいに ゆっくりとモノを抜き出す。
 「ンアア〜〜・・・・・・ 抜いちゃ、イヤだヨ・・・ 離れないで。」
 ブルブルと震え、抜かれる快感に耐えながらも腰を前に突き出し モノを追いかけてくる。
 ズブッ!
 「ウアアンッ! クウゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜ッ。」
 レミィの行為を見て、俺は腰を突き出す。それによって、先程よりも深く射し込むことになった。
 ゴリッ
 モノの頭は、子宮口を無理矢理こじ開け 子宮への侵入を果たした。
 「ウアアアアァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・ 」
 俺も、初めての感覚に 驚くしかなかった。なにより、レミィの絶叫が 俺を驚かせた。
 身体を弓なりにし、ビクンッビクンッと痙攣するレミィ。その手は、床を掻きむしるかのように 強く爪を立てている。
 「 ・・・これは・・・ もしかして、奥まで入れすぎたのか?」
 俺は、そのままで身体を硬直させてしまった。
 「オク・・・ まで・・・ オクまで・・・ お腹が・・・ お腹がぁ〜・・・ 」
 レミィの声が、譫言のように聞こえる。それでも、俺は 引くことができなかった。動くことも、できなかったのだ。
 「ご主人様?」
 恐る恐るといった感じで、綾香が俺を突っついた。
 「? ・・・ああ。」
 俺の下で、苦しそうに悶えるレミィ。床を掻きむしる指が、痛々しい。
 噴き出した汗が、次々と水滴を作り 流れていく。
 俺は、レミィの脚に絡めていた腕を解いた。そして、上半身を折り曲げると レミィの身体を抱き締めた。
 「アアアア・・・ アア・・・ ご・・・ 主人・・・ サマ?」
 「レミィ・・・ 。」
 苦しさに床に立てていた指を、強ばっていた腕を、レミィは俺の身体に回してきた。
 「ンンン・・・ 」
 レミィが、身体を動かすたび内壁がうねり 俺のモノを擦る。ウネウネと動く。少しずつだが、射精感が高まってくる。
 俺は、抱き締めていたレミィの身体を 抱えるように引き上げた。
 「ほらっ、がんばってくれよ。」
 俺は、そのままのかっこうで180度 なんとか回った。
 「エッ!? エッ!?」
 「こうしないと、みんなから見えないからな。」
 最後まで見せないと、それは契約の完了とは言えない。
 「 ・・・恥ずかしいヨ。」
 「そんなこと言ってないで、レミィも動けよ。じゃないと、終わらないぜ。」
 そう言うと、俺は 腰を揺すり始めた。
 「アウウッ・・・ ヒィ・・・ ヒグゥッ・・・ お腹の中をズンズンされてるけど・・・ 苦しいけど・・・ 気持ちいいヨ。」
 俺に合わせて、腰を動かし始めたレミィ。目の前で、豊満な胸が上下に踊る。
 「ヒアアッ・・・ イイッ! ・・・ご主人サマの・・・ イイ〜〜〜 」
 束ねた金色の髪が、バッサバッサと鳥の羽のように踊る。
 「うおおっ・・・ もうすぐだ・・・ もうすぐ、イクぜ。、」
 「ウンッ・・・ ウンッ・・・ アタシも・・・ ンアアッ・・・ アタシもイクッ・・・ イクの・・・ 。」
 レミィが、木馬の上にいる時からずっと起ちっぱないだった俺のモノは やっと解放される時を迎えようとしていた。限界まで達した射精感が、堰を切った。
 「イクぞ、レミィ! しっかりと、受け止めろよ!!!」
 「エッ!? 中で出すノ? 中なノ? ウワァァァ・・・ ダメッ・・・ ダメェ・・・ アタシ・・・ アアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・・ 」
 ビュクンッ ビュクンッ ビュクンッ
 放たれた精は、直接レミィの子宮壁を叩き 卵管へと流れ込んでいく。
 「アツッ・・・ ご主人サマの・・・ アツい。」
 レミィも、尻尾をピンッと立て 絶頂を迎え 流れ込んでくるものを感じていた。
 「ご主人サマ・・・ 愛してるヨ。」

 「オッハヨ、ヒロユキ。」
 「 ・・・たく、元気だな レミィは。」
 「ウン。 ・・・アラ?」
 「おっと、気をつけろよ。足が、ふらついてるぜ。」
 「ヘヘッ、まだちょっとネ。」
 昨日の今日だっていうのに、いつもの調子で振る舞うんだから そうなるんだろうが。
 「おはよう、レミィ。どうかしたの?」
 ふらついたレミィを、明かりが心配して寄ってきた。昨日、あんだけのことをしたんだから たった一晩で回復するわけないだろうに。それに、今のレミィは 家族は帰国してしまって 一人暮らししているから 家に帰ってもやることがあって 休む時間も少なかったのかもしれないな。
 「ありがと、アカリ。ちょっと、足が絡まっただけネ。でも、そのおかげでヒロユキに優しくされたのはラッキーだったネ。」
 「 ・・・ 」
 あかりは、レミィの嬉しそうな顔を見て 黙って俯いてしまった。いつもの、言いたいことを言えずに内に秘めてしまう あかりの癖のような態度だ。
 「アカリ・・・ 本当の事は、ハッキリ言わなくちゃダメネ。」
 「レミィ?」
 「アタシは、アカリの気持ち 知ってるヨ。でもネ・・・ アタシ、ヒロユキの事 好きだから・・・ 誰にも、負けたくないヨ。」
 そう言ったレミィは、俺の方を見る。
 「ネ、みんな。」
 いつの間にか、俺の後ろには 芹香先輩、委員長、琴音ちゃんが控えていた。
 「アタシは、もっともっとヒロユキを好きになるノ。誰にも、負けないぐらいにネ!」
 それは、あかりに言ったのだろうか? それとも、後ろのみんなに言ったのだろうか? それとも、自分に言い聞かせるために言ったのだろうか?
 なんにしても、レミィの積極性に気を付けないといけないだろうな。
  

End

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