第四話モノクロ(カラー)


 「RINAとのコミュニケーションは、順調のようね。」
 玲奈さんは、満足げに俺を見つめている。
 「まあ、変なことをどこからか仕入れてくるのは 困りもんですけどね。それ以外だったら、俺も満足してるかもしれませんよ。」
 「変なこと?」
 「簡単に言えば、異性の喜ばし方ですね。」
 「それは、それは。」
 苦笑に満ちた笑顔で、俺を見ているよ。
 RINAのあの行動に、この人が絡んでいるなと感じた。とに、困ったもんだ。
 「ふふ、いいじゃない。RINAに、気に入られてるんだから。」
 「・・・・・・」
 いつも思う。玲奈さんは、俺に何を求めるのか? RINAは、俺に何を求めているのか?
 俺も、求めているのか? RINAが、どこまでプログラムを越えるのかを。楽しみでもあるけど、怖さも感じる。なぜだ・・・ ?
 「彼方くん。」
 「はい。」
 「そろそろ、私の実験にも 参加してほしいけどな。」
 「 ・・・断れないですよね。」
 「わかってるじゃない。はいっ、スーツ。素肌に密着させないといけないから、下着も脱ぐこと。」
 「はいはい。」
 「だいじょうぶよ。ダイビングに必要な数値を、計りたいだけだから。その数値次第で、今後のことも 検討しないといけないかもしれないし。」
 今後のことか・・・ 不安だらけだけど、信じるしかんいのだろう。玲奈さんとRINAを。
 「さて、私は下で待っているから 着替えたら来てね。」
 そう言うと、玲奈さんは 楽しそうにリビングから出ていった。
 あの人にとって、実験は生き甲斐だからな。
 俺は、受け取ったスーツを片手に 脱衣室へ向かった。意外に軽いスーツ。これで、いったいどうやって神経接続できるというのだろう? そこらへんの質問もしておくべきだな。
 まじまじとスーツを見ると、プラグリンク部がそこらかしこに付いている。これを一つ一つ繋げるのか・・・ 面倒くさそうだ。
 「まあ、自分で これを全部繋げるわけではないだろう。」
 俺は、裸になると スーツを装着した。
 「裏地は、何を使ってるんだろう? 不思議に肌触りだ。」
 普段着ている物と違う・・・ 感じとすれば、パイロットスーツや宇宙服の裏地に似ているかもしれない。
 カチッ カチッ
 ポイント、ポイントの金具を閉めるたび 体中を包んでいく不思議な感覚。スーツを着ているのに、何も着ていないような感じもする。スーツが、皮膚と一体化したとでもいうように感じだ。

 「玲奈さん。」
 「ふふ、男前よ。」
 「からかわないでくださいよ。それにしても、このスーツの素材は何ですか? 着ているというのに、裸でいるような感覚さえあるのですよ。」
 「精神感応素材。」
 玲奈さんは、さも当たり前のように応えた。
 「精神感応素材? 初めて聞きますよ。」
 初めて聞く素材。字の如くなのだろうけど・・・
 「でしょうね。今のところ、サイバーリンク以外に使い道ないし。」
 玲奈さんは、モニターを見ながら応えてくる。
 「彼方くん専用の、世界に一つしかないスーツ。そもそもこの素材は、南米アマゾンの遺跡で発見された碑文を RINAに解析させた結果 製造されたの。その碑文には、”オリハルコン”とも書いてあったみたいね。」
 「オリハルコン・・・ 」
 オリハルコンとは、一万年以上前 大西洋にあったとされる幻の大陸”アトランティス”で使われていたという 幻の金属。それが、俺を包んでいるというのか?
 「まさか? 玲奈さんも、冗談きついですよ。」
 「彼方くんがどう取ろうと、事実は事実なのよ。この金属あって、初めてRINAとサイバーダイブできるのよ。」
 「本当ですか?」
 「嘘言っても、始まらないしね。」
 「それにしても、よくオリハルコンなんて作れましたね。」
 「はは・・・ 頼もしい友達が多いからね。」
 怪しすぎる・・・ どんな友達なんだか。
 「はいはい、そろそろ実験を始めましょ。そこのポットに入ってちょうだい。」
 プシュッ
 玲奈さんが、スイッチを雄と その蒲鉾型をした機器の上部がスライドした。
 「ここに入るんですか?」
 ポットの中は、ゲル状の液体で満たされていた。
 「そうよ。ダイブしている最中は、サイバーランドの中で起こった刺激で 身体の方も動くから。だから、その衝撃を吸収するために これが入ってるのよ。
 まあ、後での洗浄がちょっと面倒なんだけどね。」
 「でしょうね。」
 俺は、ゲル状の液体の中に 身体を横たえる。身体が沈んで行く・・・ 不思議な感覚が伝わってくる。

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