552 


 君は遺跡で入手した羽根の髪飾りをテーブルの上に置いた。ルルによれば装飾品とし
ても魔導器としても優れた品物のはずだが、目に留めるや船長の表情が変わった。
「これを誰から手に入れた?」
 君には一瞬その問いの意味がわからなかった。
「それは俺が与えたものだ。奴が死んだのでもなければお前の手に渡るわけはない」
 それだけ言った船長の右手が不意に震え、激しい破裂音が君の鼓膜を打ち震わせた
刹那、君の額には黒々とした穴が穿たれていた。そういえばこの髪飾りは遺跡で倒した
海賊から奪ってきた物ではなかっただろうか。君はここに到って致命的な失敗を犯して
しまったのだ。途切れることのなかった船の軋みと波の音が消え、感覚の全てが失われ
ていくのを止められぬまま、いつしか君の意識は永遠に途絶えた。

【THE END】