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【 時間点+1 】
 「海賊船の破壊を!!」
 君は無意識にルルを突き出して構え、海賊船に対する力の放出を心に念じながら叫ん
だ。すると船尾に立つ君の下に見える海面が突然沸騰したように激しく泡立ったかと思う
と爆発し、矢のように飛び出した何本もの水流が渦を巻きうねり合いながら、接近してい
る2隻の海賊船へと放たれた!!
 海賊船に激突した水流は、老朽化した小型船の船腹を貫いて後部へと抜け、大型船の
帆を破り櫂を砕く。それは海賊達の戦力を損耗させると共に、魔法という不可思議で強力
な力によって、士気の低い海賊の手下から戦意を喪失させるのに充分な結果だった。
 残る小型船は沈没しつつある船へと仲間の救出に向かい、今回の危機は去った。ある
いはこれに懲りてもう手出しはしなくなるかもしれない。
 急激な疲労感を感じながらも初めて目にした魔法の威力に驚きを隠せない君に、ルル
は告げた。
 『今回は場が良かったのです。おそらく今のあなたにとっては最大の効果が発揮された
のではないでしょうか。ただ制御が不慣れだったために魔力が限界まで引き出されてしま
ったようですが』
 君はそれに納得し、確かに容易く扱える力ではないと実感しつつ意識を失った。
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