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 イスターヴェを発ってから季節は巡り、ある地方都市に訪れていた君は、治療薬を求め
て立ち寄った店で聞き覚えのある名前を耳にした。それを口にした店の主人と客との会
話を注意して聞いていると、どうやらアデルという人物が発見した古代遺跡で、これまで
存在しなかった効果を持つ薬品の原料となる素材が発見されたということだった。
 これは君の力が役に立ったということだろうか。少なくとも国境を隔てた国にまで噂が伝
わるほどの成果をあげたとなれば、今頃は夫婦になっているだろう彼らも喜んでいるに違
いない。君も内心では喜びながらその会話に加わり、さらに詳しい話を聞いた。するとす
でに幾つかの貴重な薬品が試験的に一般販売され始めているらしい。それらはもちろん
あまりに高価なうえ、普通の庶民には無用のものが大半だという。だがアデルの目的は
婚約者の家族の病を治す薬の開発にあったはずで、それが叶わなければ実質的な成功
とは言えないだろう。そして主人の情報によれば、アデルが言っていたような不治の病に
対する薬も含まれているらしい。
 君がアデルからの依頼を請けた時、彼の縁者となる人物の容態はどの程度のものだっ
たのか。治療薬の開発が間に合わなかった可能性は当然ありうる。しかしすでに売買が
始まっているのならば、それ以前の段階できっと間に合っているはずだ。、目的の種子を
入手することで依頼を成功させたという自負とともに君はそう信じていた。いずれにせよ君
が危険を冒して入手した古代の種子が、文字通り新たな希望の種をもたらしたのは間違
いない。例えそれが公に知れ渡ることがなくとも。
『またあのような依頼はないでしょうか……』
 君にだけ伝わる物欲しそうな声音でルルが呟いた。
 確かに古代遺跡の探索は危険の大きさに比例して見返りも多く、探索の成功それ自体
が名誉と功績をもたらすものだった。とはいえ遺跡探索と海賊退治を同時におこなうこと
など滅多にできるものではない。ルルは伝説の時代に彼女を所有していた英雄達に君を
重ね合わせることで、君にとっての無茶を無茶だとは思わぬところがある。にも関わらず
イザとなれば君の能力を過信する様子もないのが不思議だ。
『このくらいの都市ならいい情報があるかもしれませんね。』
 楽しげなルルの声を聞きながら、君は賑やかな通りを都市の中心部に向かった。

【GOOD END@】
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