420 【 時間点+1 】 君が種子を探して全ての引き出しを開け続けているところにルルが訊いてきた。 『私に判別のつく植物も保存されているようですが、今は種子らしきものだけを持ち帰り ますか?』 部分的に残されていた「研究植物目録」で読むことのできた植物に限れば、希少性や 取り扱い方法等、ある程度の知識をルルは記憶しているという。だが地上にこれらを持っ て戻り、素性も定かではない君が公にはできないルルの記憶による価値を訴えたところ で、それが真実だと認められるだろうか。まだまだ身近な世界の常識をようやく知るよう になった程度の君には勿論、この世界においては目覚めたばかりのルルにもやはり判 断がつかない問題だった。アデルにしてもこれまでの研究による信憑性を得たのはごく 一部の種子に限ってのことで、立場という意味では君と大差はない。ならば今日までの 永い期間を越えて無事に役目を果たしてきたこの保存庫に、調査の手が入るもうしばら くの間くらい置いておいてもいいのかもしれない。 それでも今の段階で何か持ち帰りたいというなら所持品に「研究用植物」と記しておく こと。(378へ) |