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 イスターヴェを発ってから季節は巡り、ある地方都市に滞在していた君は、治療薬を求
めに立ち寄った店で聞き覚えのある名前を耳にした。それを口にした店の主人と客との
会話を注意して聞いていると、どうやらアデルという人物が発見した古代遺跡で、これま
で存在しなかった効果を持つ薬品の原料となる素材が発見されたということだった。
 これは君の力が役に立ったということだろうか。少なくとも国境を跨いだ国にまで噂が
伝わるほどの成果をあげたとなれば、もう夫婦になっているだろう彼らも喜んでいるに違
いない。君も内心では喜びながらその会話に加わり、さらに詳しい話を聞いた。するとす
でに幾つかの貴重な薬品が試験的に一般販売され始めているらしい。それらはもちろん
あまりに高価なうえ、普通の庶民には無用のものが大半だという。だがアデルの目的は
婚約者の家族の病を治す薬の開発にあったはずで、それが叶わなければ実質的な成功
とは言えないだろう。ところが主人の情報によれば、アデルの言っていたような不治の病
に対する薬は現時点で公表されてはいないという。
 はたして君がアデルからの依頼を請けた時、彼の縁者となる人物の容態はどの程度の
ものだったのか。治療薬の開発が間に合わなかった可能性は当然ありうる。しかし君の
脳裏を占めたのは、薬の原料となる種子を自分が持って帰れなかったのではないかとい
う不安だった。そしてそれを今すぐに確かめる術はない。成功していることを祈る君の心
中とはうらはらに、その後しばらく気分は晴れないままだった。

【NORMAL END@】
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