392 【 時間点+1 】 君は「【60】責任者の許可無く開封を禁ず」と記載された容器を開封した。すると乳白 色の種が膨れあがったかと思うと真っ二つに割れ、紅く濡れた舌のような蔓がうねりな がら飛び出してきた!! 避ける間も無く君の腕に蔓が張り付くと痛みがはしったがそれは一瞬だけで、むず痒 さだけが続いている。君は蔓を振りほどこうとしたがしっかりと張り付いてしまい離れない。 どうやら衣服の袖を破り皮膚に直接張り付いているようだ。仕方なく空いている手で蔓を 引き剥がそうとすると、突然ルルが叫んだ。 『触れてはだめ!!寄生体です!!』 触れようとした手を慌てて離し、対処を考えるために落ち着いてルルの話を聞くと、こ の植物の舌に見える部分が生物の皮膚に張り付いて、細かい針のような管で皮膚を破 り、体液を栄養分として吸収するのだという。本来は同じ植物に寄生するのだろうが、稀 に家畜や人間が寄生された場合、本体に強いショックを与えたり殺してしまうと、宿主に 与える痛みを緩和するために分泌している麻痺成分が急激に増加し、宿主の心臓や脳 の動きまでも停止させてしまうことがあるらしい。 君はこの植物に寄生されている間ずっと片方の腕(幸い利き腕ではなかった)を庇って 戦わなければならない。そのため戦闘中は「技巧力」を1点低下させること。 『ちょっと厄介なことになりましたね……』 そうルルは言うが、実は損ばかりではない。それはこの寄生植物が分泌する麻痺成分 によって痛みを感じにくくなるということだ。それにより現時点でのHPの上限値(魔法その 他の効果は無視する)を半分にした値(切り上げ)を上限値に加えることができる。つまり 現在のHP上限が13点であれば、7点を加えた20点が新たな上限となる。 『それでこの寄生植物を引き剥がすための方法なんですが……』 珍しい事にルルが口ごもったように感じた。 『確実なのは一度死ぬことです。正確には血液の流れを一定時間停止させることで寄生 植物への栄養供給が無くなれば、次の宿主を求めて自ら離れていくはずです。私の記憶 では結合部を切断した例もありますが、今回は喪失部位があまりに大きいので論外です。 いずれの手段をとるにせよ、瀕死状態のあなたを助けられるだけの術を心得た人間が少 なくとも1人はいなければ。死んでしまわれては私も困ります』 確かにそれらは最後の手段と言えるだろう。君にしても記憶を失ったままこの旅を終わ らせてしまうつもりはない。 『もう1つの手段は、逆に何らかの方法で寄生植物の生命活動を止めてしまうことです。 それもショックを与えない自然な方法でゆっくりと。……私の知識にある限り考えてはみ たのですが、植物も眠らせることのできる魔法や薬を用いるか、相当な低温によって凍 結させてしまう以外の手段は思い浮かびませんでした』 こうなれば何か良い手立てが見つかるまでは気味の悪い蔓を腕に生やしたままでいる しかないということだ。君はとりあえず布を裂いて腕と蔓とに巻きつけると、すでに空にな った保存容器に赤茶色の種を収め、他の種とともに背負い袋へとしまった。 厄介な拾い物をしてしまったが、今はとにかく先へ進むしかない。(389へ) |