390 【 時間点+3 】 船体から突き出している何本もの大型の櫂はまだ動き始めていない。君を乗せた小船 はそれを横目に見ながら船尾側に設けられた乗降用の梯子の下に着くと、甲板で待機し ていた海賊からロープが投げ落とされた。 「1人か……とにかくお頭が報告を待っている。急げ」 君と共に乗ってきた海賊は仲間に手を借りつつも慣れた様子で梯子と小船を繋ぐと甲 板へ登っていった。君は残された方が小船の固定作業を終え、視界から消えるのを待っ て海賊船に侵入した。年月を経た構造材が軋むのに緊張しながら忍び足で甲板を歩き、 船内への入り口を見つけると周囲に目を配りつつ中に入る。そこで魔法の効果は失われ てしまったが、充分に役目を果たしてくれたと言えるだろう。薄暗い通路で一息ついた君 は、船内にいるはずの娘を探してまた歩き出した。(424へ) |