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 約束どおり船尾甲板の荷物の影で老人は君を待っていてくれた。そして君を目にする
と「1人なんじゃな」と確認するでもなく言いながら手早く小船の固定を解き、海に浮かべ
る。その間、海賊に発見されるのではないかと警戒し続けていたが、結局は問題なく海
賊船を離れることができた。それは明らかに相当な数の海賊が君によって減らされたせ
いもあったが、海賊としてはこれ以上の消耗を避けるためにあえて見逃した可能性もあ
りはしないだろうか。そんな事を考えていると老人が櫂を差し出しながら言った。
「申し訳ないがワシよりもあんたが漕いだ方が早い。それから向かうのは町の西にある
海岸じゃ。あんたはどっからやって来たのか知らんが、そこが一番早くて船を着けるのも
楽じゃろうからな」
 君は頷きながら櫂を受け取り、力強く船を漕ぎ出した。
『本当はもっと警戒した方がいいと思いますが……』
 ルルにしてみれば、追っ手がかかるのを避けるために魔法を使っておくべきだと考えて
いるのだろう。だがこの老人が魔法に対してどう思っているのかがわからなかった。時に
拒否反応を示したり、魔術師に憎しみを向けるような者もいないとは限らないのが、この
世界における魔法という存在だ。
 君はこの船が無事に海岸へ辿り着けるよう祈りながら船を漕ぎ続けた。(523へ