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【 時間点+1 】
 海賊を拘束しておいた部屋に戻ると彼らの意識は戻っており、塞がれた口元で唸りなが
ら殺気に満ちた視線を君に向けていた。生かしておいたのはいいが、この後の処置に困
るのも確かだ。無抵抗の敵に止めを刺す趣味は無く、かといって仲間の下に戻らせて君
の事を知らせてしまうわけにもいかない。したがって、少なくとも君の探索中はこうして拘
束したままにしておくことしかできなかった。
 『何か情報を訊き出せないものでしょうか』
 ルルの言うように、海賊達が君よりもかなり以前から遺跡に侵入していたのなら、君の
知らない何かを知り得ているのかもしれない。あるいは仲間の戦力や侵入状況を訊き出
せば今後の遭遇で有利になるはずだ。 
 記憶を無くす以前はどうだったのかわからないが、今の君は話術に長けているというこ
ともないため、ルルの助言を受けつつ脅しにも似た交渉をおこなった。すると所詮下っ端
で海賊としての矜持にも欠けるような若い海賊は、知っている限りの情報を君に話すこと
を躊躇しなかった。
 それによってわかったことは、まずこの海域にやって来ている海賊『黄金の虎』が30数
人から成るもので、2隊に分かれた一方がこの古代遺跡で仕事をし、もう一方は近隣の
漁船を襲撃する役割を担っていたということだった。遺跡には元々財宝目当てでやって来
たらしいが、想定外に面倒な内部構造であったため、今は危険を避けて海側からの入り
口付近で発見した、魚介を長期保存用に加工する装置だけを利用しているという。
 彼ら『黄金の虎』の首領に関しては、長身で髭を生やしているという以外、名前すらわか
らないが、手下達との間に入って命令を下す兄貴分がおり、禿頭隻眼の巨漢スラダブと、
矮躯で双剣使いのビドロという2人は相当の手錬であるという。
 これだけでも、下っ端海賊から得られる情報としては充分なものかもしれない。改めて
海賊の手足を縛ったロープの確認をおこなうと、君は再び探索に戻った。(247へ