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【 時間点+1 】
 西への通路はやはり両開きの扉で終わっており、人が一人が通れる程度に開いたまま
になっていた。そしてその先からは騒がしい音とともに、ここしばらくのイスターヴェ滞在で
嗅ぎ慣れた生臭い臭いが漂ってくる。
 扉の影に身を潜めてしばらく様子を伺っていると、それは海賊達が海から魚や貝や海老
を運び込んで何らかの作業をしているせいだとわかる。
 扉の向こうの広い部屋は、西側の壁の一角が洞穴に繋がり、海にまで達しているようで
潮風が吹き抜けてくる。そこから何人かの海賊達が荷を運び込むために行き来をしている
のが見えた。広い部屋の南北には開け放たれた扉があって、いったんまとめられた魚介
類はその奥で加工され、袋詰めの状態にされた後に再び洞穴から外へと運び出されてい
く。
 『どうやら彼らは運良く自分達で扱える古代遺産を発見したようですね。あの荷はきっと
お金に換わるのでしょう』
 これで海賊達が何の為にイスターヴェの漁師から収獲を奪っているのかは理解できた。
つまりは苦労せず金となる物を得ることが目的だったというわけだ。同じ海で生きている
者とはいえ、海賊が漁師並みの漁獲を上げることは出来ないのだろうから。
 ともあれ、ここに相当数の海賊がいることは確かだ。どうにかして撃退できれば少なくと
も今回のような目的で漁師が襲われることはなくなり、以前のように平和だが活気に満ち
た漁をおこなうことができるようになるだろう。
 君が遺跡に入った本来の目的は、あくまでも古代植物の種子を発見し、持ち帰ることだ
が、イスターヴェでの君の仕事における問題が解決するのならば、ここで余力を注ぎ込ん
でみても損は無いかもしれない。
 海賊達の人数を数えてみると、この場で働いている者は明らかに君より弱そうな海賊の
下っ端が10人に満たない。他の場所には彼らの頭となる者がいるだろうが、一度に全員
を相手にするのでさえなければ君とルルの力で撃退することは可能なはずだ。2人の間に
はそう思うに値する信頼関係がすでに築かれている。
  
  ・ どうにか海賊を倒す方法を考えるなら(186へ
  ・ まずは目的の種子を探そうと思うなら、通路を引き返して(231へ