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【 時間点+1 】
 全く同じ扉が並ぶ中、1つを選んで君は開いてみた。
 その中はごく普通の宿屋の一室を、ひと回り狭くした程度の部屋になっていて、床と壁に
固定された小さな机と寝台が備え付けられていた。
 埃を除けながら机を調べてみると、目の前の壁に何かが貼られた名残があることに気づ
いた。軽く埃を吹き払って目を凝らせば、もはや読み取る事もできない程に劣化した他の
文章と比べ、見出しのような大きな文字で何かが書かれていることがわかった。だが君に
はそれを理解することができない。
 どうしたものかと考えていると、不意にルルが話し始めた。  
『古代文字ですね。「…期の重………対象」「ミルアード(MI…A……)」とあります。どうも希
少な植物か動物の生態について記されているようですね』
 これは壁から剥がそうとすれば塵と化してしまいそうだ。せいぜい記憶に留めておくこと
くらいしかできない。
 部屋には他に何も役立ちそうなものはなかった。君は部屋を出る。(146へ