121 【 時間点+1 】 「海賊船の妨害を!!」無意識にルルを突き出して構え、君は叫んだ。すると甲板で威 嚇の声をあげ、剣を振り回す海賊の表情までがはっきりとわかるほどに接近した海賊船 の速度がいきなり落ちた。間を置かず漁船との間隔が開いていき、海賊達が戸惑いの声 を荒げる。 見ればいつの間にか海賊船の周囲で海が渦を巻き、船の進行を妨げているようだった。 その渦を引き起こしたのが、君の使った魔法の効果なのだろうか。 もはや海上の同じ場所を回転するだけとなった海賊船を残し、漁船は漁場となる海域を 離脱した。ひとまず今回の危機を脱する事には成功したが、これに懲りてもう手出しをす るのを諦めてくれればいいのだが。 急激な疲労感を感じながらも、初めて目にした魔法の威力に驚きを隠せない君にルル は告げた。 『今回は場所が良かったのです。おそらく今のあなたにとっては最大の効果が発揮され たのではないでしょうか。制御が不慣れだったために魔力も限界まで引き出してしまった ようですが、次はもう少し上手く扱えるようになっているはずです』 君はそれに納得し、確かに容易く扱える力ではないと実感しつつ意識を失った。 (80へ) |