5 【 時間点+1 】 「漁船にもっと速力を!!」無意識にルルを突き出して構え、君は願った。 すると、がくんという衝撃が君の乗る船だけでなく全ての漁船を揺らし、明らかにその速度 を増した。 周囲の海上に目をやれば、船尾より後ろの波だけは高く盛り上がっているのに、全体的な 漁船の喫水は格段に低くなり、舳先にぶつかっては飛沫を散らす波も凪のように小さくなっ ていた。これに驚いてほとんどの漕ぎ手が櫂を握る手を止めてしまったにも関わらず、速力 が落ちる気配は無い。 これが君の使った魔法の効果か、追い波の大きさと共に海上の浮力が増しているようだ。 漁船団と海賊船との距離は開いていき、やがて漁場となる海域を離脱する頃には海賊も 追撃を諦めた。 ひとまず今回の危機を脱する事には成功したが、次回はどうなるだろう。急激な疲労感を 覚えながらも初めて目にした魔法の威力に驚きを隠せない君に、ルルは告げる。 『今回は場が良かったですから。おそらく今のあなたにとっては最大の効果が発揮された のではないでしょうか。ただ制御が不慣れだったために魔力も限界まで引き出してしまった ようですが』 君はそれに納得し、確かに容易く扱える力ではないと実感しつつ意識を失った。(80へ) |