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仕方なく君は住居跡に戻り、投げつけるのに適当な木材を拾ってきた。
すると、わずかな間ではあっただろうが、広間の中央でうねっていた蛇体が
移動していた。
 何らかの気配を悟ったせいだろうか、大蛇は円柱の一本に巻きつくように天井
近くまで移動し、舌をちらつかせながら下を睥睨していた。
 これでは物を投げて気を逸らすという手はあまり効果が無いかもしれない。
 いずれにしてもあの眼の見下ろす場所を通らねばならないのだから。


 どうやら君は、先ほどよりもいっそう窮地に陥ったようだ。
 天井の高さにいる大蛇への攻撃手段が無い以上、残るは可能な限り身を隠し
つつ正面扉へ近づいていくしかない。
 大蛇が姿を消すのを待つという手もあるにはあるが、すでに君の疲労は限界に
きているし、ここには飲めるような水も存在しない。


 もはや君の打つ手は1つしかない。
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