135 討伐隊は誰一人として犠牲者を出さずに凱旋した。 そしてこの勝利の栄光のほとんどを、君1人が受けたと言っても過言では なかった。 獲物といってもたんなる熊や猪の類ではない。家屋よりも巨大な大蛇だった のだから、そのような怪物を見るのは生涯最初で最後だろう村人が、少々異常 な高揚感で沸き立ったのも不思議ではない。 大蛇の頭部は切断されて加工され、供養のためと森の守り神としての働きを 期待され、新たな祠に祭られるだろう。 であれば肉の方も推して知るべしである。 周辺一帯の村々にも大量の肉が振舞われ、硬く巨大な鱗は、軽く強靭な盾や その他の日用品として加工するために剥がされた。 この村の新たな民芸品が開発されるようになる日も遠くはないかもしれない。 これらの恩恵と、いわば祭りの場を迎えさせてくれた張本人とも言える人間が、 この地において勇者と称えられないわけがなかった。 わけのわからない盛り上がりに包まれた祭りは丸3日間続き、終了した。 君にしても、この村で落ち着いてしまう気はない。 いずれ再び、記憶を取り戻すための旅に出る日を想いながらも、今しばらくは この地で英気を養うのもいいだろう。 『 異端の繰手と嘆きの剣 』 序章 TRUE END |